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家庭菜園を始めました。

慣れない手つきで世話をする。
新品のデジカメなんて構えて。





※現代版蒼主従話。蒼→高校生、右目→社会人。なので右目は普通に蒼を年下扱い。その⑥。ネタ提供は永月さんのト/モ/コ/レ。続きは折りたたみ↓↓

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言いたい痛み、言えない痛み。

気付いたことがあった。
だから言わなければならないことが出来て。


その足で座敷を出る。傷は変わらず痛むが、隠しながら動いていた時より遥かに楽だ。
自分勝手に心が痛んでも。
本当は此処へ来ることを自分に禁じるつもりだった。
せめてこの傷に、主が胸を痛めなくなるまでは。

(手を差し伸べることは容易い、けれどそれが戦場で命の危険に晒す甘さへと姿を変えたら…)

きっと自分は自分を一生許さない。
それを怖れて、引いた手を離して。

(どんな言葉でも受けよう、)

責められるべき非を自分は持っているのだから。

「―――小十郎、何でここに居る」

座敷の襖の前で立ち尽くしていると、素っ気ない声がした。
「養生してろって言ったはずだ」
「…雑務は他へ任せております、ただひとつ、」
言うべきことがあった。
言わなければならないことが。
「…何だ、」
ややあって言葉を許される。
深く息を吸い込んで吐き出す息に言葉を乗せる。
「…政宗様に申し上げたことを取り消すつもりはありません、後悔してもおりません」
それは変わることのない事実だ。
「ただ、小十郎にも、政宗様に申し上げていないことを抱えております」
分かっているだろうことを真面目に言う自分を主は笑うだろうか、それとも呆れるだろうか。


「ですから、「小十郎、入ってこい…足が冷えて、うまく動かねぇんだ」


言葉を遮る声は苦笑を滲ませた声音で。
「…失礼致します、」
襖を開けると冷たい床に一人座ったままの主が居て。
その傍に寄れば、
「…何だ、その面は」
俺に言ったこと、取り消すつもりも後悔してもいないんだろう?と笑われた。

「これは、俺の…俺だけの痛みだ、それをお前が負う必要はないし、負って欲しくねぇ」

傍に居ても、すべて共有することがいいわけではない。
それは時に互いの行動を阻んで、身動きがとれなくなる。
「…それと、お前の言うことは一々正しい」
腹はたつけどな、と素直に言われた。
「大将ってのは大局を見極められなきゃいけねぇ」
でなければ、自分を含む兵たちはあっという間に全滅するだろう。

「けどな、大局が見極められたって一人を思えない大将になりたくねぇんだ」

(その、思いは)

ずっと昔から知っていたではないか。
主が何を思い戦っているのかは。
「―――はい、存じ上げております」
「お前はこれからも俺に同じことを言い続けるだろうし、俺はそれに腹を立てるのは変わらねぇ」
同じことを言わせない努力をしてください、という言葉が喉まで出かかったが飲み込んだ。

「だが俺は、俺の思うことを曲げるつもりはねぇ」

立つから手を貸してくれ、と伸ばされた手。
支えた身体は酷く冷えていた。
「ま、とりあえず…」
主の身体を暖めること。
そう思った時飛び込んできた一言は。
「余計なこと喋りやがった成実をしめとかねぇとな」
あまりにも予想外な一言に、込み上げてきた笑いを止めることが出来なかった。
「…ご存知、だったんですか」
それを。
「そうか、やっぱり成実の仕業か」
苦い顔で舌打ちする主に、謀られたのだと気付いたが既に遅い。

その後、屋敷内に成実の声が響いたのに目をつぶった。






※一応解決。根本的な解決はしていないけど、何度も同じことを繰り返すけど、それでも曲げずに生きていくだけ。

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癒えない傷み、知らない闇。

自分の言葉を後悔してはいない。
間違っているとも思わない。
けれど、起こした波紋に気付かぬまま、すべて理解っていると思い込んでいた。


「あぁ、やっぱり、」

座敷に顔を出したのは成実だった。
「梵から休めって言われたんじゃなかったっけ?」
成実の言葉に苦笑する。
気遣いは有り難いし、仲間を信頼していないわけでもない。
だが何かをしていないと落ち着かない。
傷ついた声を表情を思い出すから。

(そう思っていることが、甘いということに他ならないのだろうが)

文机の傍らに成実は膝をつく。
「けど、珍しいよなぁ…梵があんな落ち込んでるの」
どんな喧嘩したの?小十郎サン、と文書を手にするのを止めずに成実は問う。
「…大したことじゃない」
そう、当たり前のことを口にした、だけ。
すると「小十郎サンの"大したことじゃない"はあてにならないからなぁ」と言われた。
視線を鋭くするも、こういうところは主てよく似ている成実だ。
文書を盾に躱された。
「それで全部だ、」
なにやら考え込む成実は生返事で立ち上がる。
「成実?」
「あぁ…そうか、これはアレだな」
すっきりしや様子で成実が手を打つ。

「人払いした、あの時と同じ」

人払いをしたことなど何度もあるが、成実のいうそれがある出来事を示唆しているのだと分かった。
「成実、それは、」
主が実の母親と二人きりになった、たった一度の邂逅。
「あの時、梵と義姫様がどんな話をしたのかは知らない、」
そもそも言葉を交わしたのかすらも。
自分はその時戦が迫っていたことのもあり斥候とのやり取りに気を取られていた。
だから、知っているのは主がこの腕に倒れたという事実のみ。
それ以外は知らされていない。
「けど、壮絶だったのは確かだろうな」
「…お前は、何を知っているんだ?」
そう問いた途端、自分を見下ろす成実の目が少しだけ鋭くなったような気がした。

「…知らないわけだよ、俺が梵に言われて口止めしたんだから」

今もそれは有効なのかな、と成実は呟く。
目の前のこの男は自分の知らないことを知っている。
あの時のことを。
そう思うとじっと座っていることが出来なくなる。
立ち上がる勢いを感じ取った成実は両手を突き出して落ち着くように促された。

「…あの時、梵、毒飲んでた、」

予想だにしない、言葉。
「真実は闇の中だけど…多分、義姫様の仕業」
「なんと…」
「義姫様が違うといったところで、梵がそうだと言えば、そう」
その時既に、そういう仕組みになっている。

「いくら母親だって言っても、発言の重さは一緒にはならない」

はっとした。

『一国の主と一兵士と、それの何処が対等で居られましょう』

それを口にしたのは、誰だ?
口許を手で押さえて再び浮かした腰を落ち着ける。
それを見て成実はようやく手を下ろした。
「…多分梵は、その時のことを死んでも自分から口にはしないだろうけど」
じゃあ文書はちゃんと預かったから、それとこのことは内緒で。
そう言い成実は座敷を出て行った。
言わない闇。
癒えないのは口にできないから。
気付いていてもいなくても、放っておいた傷みは、内側から苛んでやがてそのものが朽ちていく。
それを抱えたまま。

「…どれだけの時間を、」

共に過ごしてきただろうか。
人の心を明確に知る術はない。
けれど、ずっと傍に居ると、そう誓って見守ってきた他でもない自分が。



(どうして…気付けなんだ)




※後悔先に立たず。次が、多分、最後。

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言わない悼み、言えない闇。

それでも、すべて打ち明けなくとも離れないと信じていた。
何も、根拠などないのに。


呆然として言葉を次げなかった。
それでも小十郎は意に介さず「雑務が残っているので、」と退出しようとして。

「…とにかく、雑務は他の奴をつける、今は養生しろ」

だから命令としてその行動を止めることしか出来なかった。
座敷に一人、思うのは失った記憶ばかり。
ひとり、またひとりと消えていく。
そして皆、同じように。

(俺に…切り捨てろ、という)

父親は死んだ。
幼くして実の母親に存在を疎んじられた自分に、
何ら変わりなく愛情と知識と教養と、総てを与えた人。
死に際まで揺るがないその姿は脳裏に焼きついている。

『政宗っ、私とともに義継を撃てっ!』

それが、最後の言葉。
弟も、死んだ。
優しく、兄思いの賢い少年だった。

『兄上、私のことを恨んでください、だから母上は』

最後まで母親を守り、自分のこの手の刀で殺めた。
そして、母親。
今も生きている、と数ヶ月前に風の噂で聞いた。
尤も、生きていようがいまいが、母親のその愛情は幼い頃既に失っていた。
この忌々しい右目と共に。

眼帯の紐を緩めて解く。
眼帯は指をすり抜けて床に落ちた。

何よりも誰よりも真っ先に失ったその人が、
一片の後悔もなく自分を切り捨てた人なのに、一番愛おしかった。
毒に冒され朦朧とする意識。
母親の顔すらはっきりと見えない。
こんな傍に、手で触れられるほど近くに居るというのに。
小十郎は出ていて居ない。
部屋には二人、それ以外は人払いをした(その事実を成実なら知っているが)。
それはほんの少しの間の邂逅。
けれど気が遠くなるほど長い時間。

『あなたが私に殺されかけたのだと、そう言えば済むものを』

身体の内側から冒す、毒。
母親はその時弟の死を知り(弟の思いを酌んだのかどうかは定かではない)、
自らの死を願っていたのかもしれない。

『私が何を言おうと、、一国の主と狂った女の戯言が、対等など無理なこと』

母親は腰に差した刀に触れた。
そして自分を見上げて一度たりとも自分には向けなかった優しい、本当に優しい笑みを浮かべて。


『ここで、斬り捨てればよい…愛しい我が子と同じように』


最後まで、彼女は。

『政宗様っ!』

そこへ小十郎が血相を変えて飛び込んできて、その腕の中に倒れた。
斬り捨てることの出来なかった母親は、その後屋敷から姿を消した。
誰にも、何も告げぬまま。
あの邂逅の会話を知るのは、自分と母親の二人だけだ。
死んだ父親と弟のことを悼みはしなかった(表向きには)。
そして消えた母親のことを恨みもしなかった。
けれど、あの時のことを思い出すのは嫌で、苦しくて、心の奥底に蓋を閉めて落とした。
泣き言や弱音を吐くことも脆い姿を晒すことも出来ぬ立場に居ることは理解していたし、
それに代わる、いやそれ以上の愛情を与えてくれる存在が常に傍にあったから。

「…お前は知らないだろ…その言葉が、どれ程の、」

誰も知らない深い病み。
内側から蝕んでいく、自分自身の身を滅ぼすほどの癒えない闇。

「…っ、」

いつも傍で包み込んでくれていた優しい温もりが、遠い。
力なく膝をつき自分の身体を抱きしめる。
小さく丸まって、額が冷たい床に触れて。

それは今にも凍えそうなほど。






※昨日の続きらしきもの。俄か知識で史実を絡ませるもんじゃない。反省。

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言わない痛み、癒えない病み。

一番嫌いなものは“俺の為”という優しい嘘。


「…小十郎、これは、何だ」

この声は震えていなかっただろうか。
触れた手の震えは、きっと隠すことは出来なかっただろうから。
小十郎はそれに気付いたからこそ、ほんの一瞬痛みの滲む苦い表情をしたのだ。
けれど口は閉ざしたまま。
「…何だ、って聞いてんだ」
小十郎はそれでも口を開こうとはしなかった。
半刻前、廊下を連れ立って歩いていた時不意に小十郎が寄りかかってきた。
驚いて鼓動が跳ねる半面、少し喜んでいる自分がいたのは事実。
だが真実はそうではない。
足元がふらつくほどの怪我を小十郎は負っていた。
的確な応急処置はしていたものの、度々開く傷口。
血が滴ることのないように厳重にきつく巻かれた包帯。
血が滲んで取り替えた包帯は知らぬところで処分されていた。
何一つ、何人たりとも怪我を悟らせぬ小十郎の行動は実に巧みで正確だった。
だからこそ感知できなかったのだが、それでも自分の中にいつもよりもはるかに大きな苛立ちが募って。
一番身近に居るはずの自分が、何故察することができなかった?
変化を感じ取ることが出来なかった?
反芻するつもりはなくても、頭を胸の内を占めるのはそのことばかりで。
今が戦の只中でないことがせめてもの救いだ。

(きっと小十郎は、怪我を案ずる俺を赦さない)

現に小十郎はこうして口を閉ざしているのだから。
「…それ、浅い傷じゃねぇだろ」
多少は安静にしていたとしても、自分に違和感を感じさせない程度には平時と同様に動いている。
これだけの傷を負って、熱を押しとどめて尚気付かせまいとする。
「…何で何もいわねぇんだ、言い訳くらいすりゃあいいだろ」
小十郎はただ黙るだけ。
その態度に募るのは苛立ちだけで。
小十郎の前に膝を折る。
そして小十郎を真っ直ぐに見ながら。

「―――俺の為、か?」

すると漸く小十郎は重い口を開いた。

「目先のことで動揺なさいますな、これは小十郎の過失によるもの、政宗様が心を揺らすほどのことではありませぬ」

自分の性格を一番理解していながら、小十郎は残酷な言葉を止めない。
けれど、答えたという事実が先刻の問いの肯定に他ならない。

(それが、)

一番、嫌いだ。

「…俺にも言えないことがある、だからお前が言わないことを責める資格はねぇ」
内に巣喰う病みは傍に居た小十郎ですらその底を知らない。
癒えないのは、口にできないから。
「だが、戦ってるのはお前も同じだ、少しくらい…対等で居させろ」
襟元を掴む手をゆっくりと小十郎が解いて。
「―――何か、勘違いをなさってはおりませんか」
嫌な予感がする。
右目が痛みを思い出したように軋む。
「…やめろ、」
言うな、それを。
知っている、目を伏せてきたこと。
でもそれは、嫌になる程理解っているから。
だから。


「一国の主と一兵士と、それの何処が対等で居られましょう」


その言葉は、今まで聞いたどんな言葉よりも深い底の闇を引きずり出す。


「―――お前、が…それを、言うのか…?」


小十郎。







※前にもこんな展開の話を書いたことがあった気がする。お互いに自分には無頓着で、相手の負傷には過敏。

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
41
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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