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…駄目だ、

苦しい。

泣きそう。



…いや、今のシリアスの話。
気持ちを同じ度合いに落とすとキツくて仕方ない。
※思わず冷蔵庫の前で自分抱きしめてしゃがみこんじゃったYO。
↑母上に普通に尻軽く蹴られたがねっ!(笑)


最後は救いを作りたいんだが、救いたくない気もする。
双方の立場上、些細なことでこんなことはしょっちゅう起きるよ。
その度に救いを与える方が残酷じゃない。

…こういうのが、一番大変だ…

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言わない悼み、言えない闇。

それでも、すべて打ち明けなくとも離れないと信じていた。
何も、根拠などないのに。


呆然として言葉を次げなかった。
それでも小十郎は意に介さず「雑務が残っているので、」と退出しようとして。

「…とにかく、雑務は他の奴をつける、今は養生しろ」

だから命令としてその行動を止めることしか出来なかった。
座敷に一人、思うのは失った記憶ばかり。
ひとり、またひとりと消えていく。
そして皆、同じように。

(俺に…切り捨てろ、という)

父親は死んだ。
幼くして実の母親に存在を疎んじられた自分に、
何ら変わりなく愛情と知識と教養と、総てを与えた人。
死に際まで揺るがないその姿は脳裏に焼きついている。

『政宗っ、私とともに義継を撃てっ!』

それが、最後の言葉。
弟も、死んだ。
優しく、兄思いの賢い少年だった。

『兄上、私のことを恨んでください、だから母上は』

最後まで母親を守り、自分のこの手の刀で殺めた。
そして、母親。
今も生きている、と数ヶ月前に風の噂で聞いた。
尤も、生きていようがいまいが、母親のその愛情は幼い頃既に失っていた。
この忌々しい右目と共に。

眼帯の紐を緩めて解く。
眼帯は指をすり抜けて床に落ちた。

何よりも誰よりも真っ先に失ったその人が、
一片の後悔もなく自分を切り捨てた人なのに、一番愛おしかった。
毒に冒され朦朧とする意識。
母親の顔すらはっきりと見えない。
こんな傍に、手で触れられるほど近くに居るというのに。
小十郎は出ていて居ない。
部屋には二人、それ以外は人払いをした(その事実を成実なら知っているが)。
それはほんの少しの間の邂逅。
けれど気が遠くなるほど長い時間。

『あなたが私に殺されかけたのだと、そう言えば済むものを』

身体の内側から冒す、毒。
母親はその時弟の死を知り(弟の思いを酌んだのかどうかは定かではない)、
自らの死を願っていたのかもしれない。

『私が何を言おうと、、一国の主と狂った女の戯言が、対等など無理なこと』

母親は腰に差した刀に触れた。
そして自分を見上げて一度たりとも自分には向けなかった優しい、本当に優しい笑みを浮かべて。


『ここで、斬り捨てればよい…愛しい我が子と同じように』


最後まで、彼女は。

『政宗様っ!』

そこへ小十郎が血相を変えて飛び込んできて、その腕の中に倒れた。
斬り捨てることの出来なかった母親は、その後屋敷から姿を消した。
誰にも、何も告げぬまま。
あの邂逅の会話を知るのは、自分と母親の二人だけだ。
死んだ父親と弟のことを悼みはしなかった(表向きには)。
そして消えた母親のことを恨みもしなかった。
けれど、あの時のことを思い出すのは嫌で、苦しくて、心の奥底に蓋を閉めて落とした。
泣き言や弱音を吐くことも脆い姿を晒すことも出来ぬ立場に居ることは理解していたし、
それに代わる、いやそれ以上の愛情を与えてくれる存在が常に傍にあったから。

「…お前は知らないだろ…その言葉が、どれ程の、」

誰も知らない深い病み。
内側から蝕んでいく、自分自身の身を滅ぼすほどの癒えない闇。

「…っ、」

いつも傍で包み込んでくれていた優しい温もりが、遠い。
力なく膝をつき自分の身体を抱きしめる。
小さく丸まって、額が冷たい床に触れて。

それは今にも凍えそうなほど。






※昨日の続きらしきもの。俄か知識で史実を絡ませるもんじゃない。反省。

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言わない痛み、癒えない病み。

一番嫌いなものは“俺の為”という優しい嘘。


「…小十郎、これは、何だ」

この声は震えていなかっただろうか。
触れた手の震えは、きっと隠すことは出来なかっただろうから。
小十郎はそれに気付いたからこそ、ほんの一瞬痛みの滲む苦い表情をしたのだ。
けれど口は閉ざしたまま。
「…何だ、って聞いてんだ」
小十郎はそれでも口を開こうとはしなかった。
半刻前、廊下を連れ立って歩いていた時不意に小十郎が寄りかかってきた。
驚いて鼓動が跳ねる半面、少し喜んでいる自分がいたのは事実。
だが真実はそうではない。
足元がふらつくほどの怪我を小十郎は負っていた。
的確な応急処置はしていたものの、度々開く傷口。
血が滴ることのないように厳重にきつく巻かれた包帯。
血が滲んで取り替えた包帯は知らぬところで処分されていた。
何一つ、何人たりとも怪我を悟らせぬ小十郎の行動は実に巧みで正確だった。
だからこそ感知できなかったのだが、それでも自分の中にいつもよりもはるかに大きな苛立ちが募って。
一番身近に居るはずの自分が、何故察することができなかった?
変化を感じ取ることが出来なかった?
反芻するつもりはなくても、頭を胸の内を占めるのはそのことばかりで。
今が戦の只中でないことがせめてもの救いだ。

(きっと小十郎は、怪我を案ずる俺を赦さない)

現に小十郎はこうして口を閉ざしているのだから。
「…それ、浅い傷じゃねぇだろ」
多少は安静にしていたとしても、自分に違和感を感じさせない程度には平時と同様に動いている。
これだけの傷を負って、熱を押しとどめて尚気付かせまいとする。
「…何で何もいわねぇんだ、言い訳くらいすりゃあいいだろ」
小十郎はただ黙るだけ。
その態度に募るのは苛立ちだけで。
小十郎の前に膝を折る。
そして小十郎を真っ直ぐに見ながら。

「―――俺の為、か?」

すると漸く小十郎は重い口を開いた。

「目先のことで動揺なさいますな、これは小十郎の過失によるもの、政宗様が心を揺らすほどのことではありませぬ」

自分の性格を一番理解していながら、小十郎は残酷な言葉を止めない。
けれど、答えたという事実が先刻の問いの肯定に他ならない。

(それが、)

一番、嫌いだ。

「…俺にも言えないことがある、だからお前が言わないことを責める資格はねぇ」
内に巣喰う病みは傍に居た小十郎ですらその底を知らない。
癒えないのは、口にできないから。
「だが、戦ってるのはお前も同じだ、少しくらい…対等で居させろ」
襟元を掴む手をゆっくりと小十郎が解いて。
「―――何か、勘違いをなさってはおりませんか」
嫌な予感がする。
右目が痛みを思い出したように軋む。
「…やめろ、」
言うな、それを。
知っている、目を伏せてきたこと。
でもそれは、嫌になる程理解っているから。
だから。


「一国の主と一兵士と、それの何処が対等で居られましょう」


その言葉は、今まで聞いたどんな言葉よりも深い底の闇を引きずり出す。


「―――お前、が…それを、言うのか…?」


小十郎。







※前にもこんな展開の話を書いたことがあった気がする。お互いに自分には無頓着で、相手の負傷には過敏。

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あぁ、ほら

夏が、終わる。

ゆっくりと木刀を下ろし、胃が空になるほど息を吐き出す。
そして深く息を吸って目を開ける。
手にした木刀で空を一閃。

「…休憩されてはいかがですか」

小十郎の声に張り詰めた空気を解いて、流れる汗を拭った。
小十郎は縁から庭に下り、手拭いを差し出してくる。
それを受け取る代わりに木刀を預けた。
背中から差す夕日の橙色に、
時間を忘れて木刀を振っていたのだと気が付いた。

「…小十郎?」

何も言わずに傍に立つ小十郎を見上げると、
その穏やかな瞳はずっと遠くに向けられていた。

「日が、短くなってきましたね」

小十郎の視線を追うと、そこには既に沈みかけている夕日があった。

「…そうだな、」

肌を撫でる風は冷たいものに変わり始めた。
気付かぬ間に夏が過ぎ、冬が来る。
奥州の冬は長い。
それは奥州から外に出て初めて知ったことだ。

「すぐに、また冬だ」

寒いのはあまり得意ではない(暑いのも苦手だが)、
でも冬は嫌いではない。
またいつものように季節が繰り返すだけ。
けれど夏の終わりに訪れる少し物悲しい感情は、
いくつになっても消えない。
宵に変わるほんの少しの間。
言葉を閉ざしてその景色を見ていたら、
不意に慣れた温もりが手を包み込んで。
見なくてもそれが何だか分かる。

「…ふっ、」

思わず笑みが零れたのは、
触れた指先から同じものを感じとったからだ。
沈む夕日一つに、妙に切なくなって。
普段なら人目につくような場所でこんなことをしない小十郎が、
小さく咳払いをした。

「…大丈夫だ、お前が、居る」

しっかりと手を握り返す。
この景色を見ているのは、一人ではないのだ。

傍に、小十郎がいる。

宵闇よ、一時でいい、この姿を隠してはくれまいか。

そう祈るように心の中で呟きながら、小十郎に寄りかかった。





※この後、「…くしっ、」と主のくしゃみで我に返った右目はそそくさと主を湯に入れたらしい。…過保護である。

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望むものは何だ、


その心の渇きを癒すものは何だ。

男は問う。
酷く愉しげに表情を歪ませて。
けれど知っている、男は愉しいわけではないのだ。
男にとってどんな答えも、
如何なる覚悟もとるに足らない些事なのだから。
何が答えでも構わないのだ。
それに自らの命が関わっていたとしても。

「かつて私にも些事に捉われていたことがある」

男は昔を思うような口振りで言った(その実、何も思っていない)。
抜き身の刀を軽く遊ばせながら悠然と歩く。
その姿はまるで場にそぐわない程で。

「私がこの手で殺めた最初のもの、あれはそれは奇麗な女だった」

男はそう言って少しだけ表情を曇らせた。
それは見た目には解らない程微かなものだったが。

「だが、時を経るにつれてそれは醜くなっていった」

その醜い女の顔に触れ、
初めて愛しいという気持ちになったものだ。
感触を思い出しているのか、軽く手を握り締めた。

「形あるものはいずれ朽ちる、だが形なきものも忘れられ消えていく」

それは卿の忠義もまた同じ。
丁寧な物言いが酷く神経を逆撫でする。
男は、毒と悪意で紡いだ言葉を吐き出している。
この世のすべての存在そのものを嘆くように、憐れむように。

「…だから、てめぇの傍には何もない」

いや、男の中にすら何もありはしないのだろう。

「だから、何だと言うんだね」

空であることを否定はしない。
だが男はそれを悪いとは思わない。

「“絆”、“縁”、…人とを繋ぐ言葉は多々あるが、その結果が今の状況を招いていることは明白だ」

それが足枷となり、絡み付いては緩やかに死へ手招く。

「只の忠義にしては、随分と厚いものだね」

男はまた愉しそうに喉を鳴らして笑う。
そして片手で遊ばせていた刀の切っ先で小十郎の喉を撫でる。

「卿は実に興味深い男だ、ここで殺すには惜しい」

「―――生憎と、此処で朽ちるつもりはねぇ」

物怖じしない視線。

「…ほぅ?」

「此処は、」

「テメェの墓場だ、松永久秀」

地獄に堕ちな!
小十郎の言葉を次ぐ声。
ビリビリと痛い空気が男の肌を撫でて、
何が起きたのか男は理解した。

「…そうか、」

卿はこの男を待っていたのか。
そう呟く男の表情は負ける予感を滲ませたものでも、
驚きや焦りを含んだものでもなかった。

「成る程、やはり…卿は人質として十分に有効であったということか」

自分の思ったことが間違っていなかったことに対する感嘆だけがそこにはあって。
竜の太刀を躱して男は小十郎と距離をとる。
小十郎は竜から渡された刀を抜き、竜の隣で刀を構えた。
男はそれを見て尚、目を細めて口元を歪ませる。

「地獄の業火の色はどれほどまでに、私の心を慰めてくれるだろうか」

そう呟いて男は刀を下ろした。


「屍は残さない…そう、決めているのだよ」


先に気が付いたのは小十郎だった。
咄嗟に竜を庇い男と距離をとる。
その後ろで劈くような爆発音がした。
男の影は文字通り跡形もなく。

…最も。

男にとってはそれすらもどうでもいい些事なのかもしれない。





※実に回りくどい物言いをしているせいか、男には確かなようで曖昧な印象がある。格好よく書きたいけど書くのは難しい、篝さんの偉大さを思い知った。

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
42
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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