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最悪な逃げ道。

凍結してから早一ヶ月。
こうなることは予想の範疇だったものの、切り捨てられない自分の甘さに呆れています。
それでも更新を信じて訪問してくださっている方のことを、僕なりに考えました。

禁じ手行使。

『BORDER LINE』を上げます。

プロトタイプをご存知の方は、ほぼ同内容になりますので申し訳。
ただ、個人的に一部加筆修正の余地がある部分に関しては変更していこうかと思います。
また、各話が長いので何回かに分けてあげていくことにあるかと思いますので、こちらもご容赦。




――――――…闇に逝きつく時、それはゆっくりと目を醒ます。




目覚めた“色”は、触れて、混ざり合って、そしてまた、……闇(モノクロ)へと還る。

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観覧車

あの長い曲が終わる時、私はまた、地に足を着ける。

朝、眠気眼で乗り込むバス。ラッシュ一歩手前のくせに、バスはいつも混んでいる。所詮、皆考えることは同じなのだ。
吊革に掴まりながらぼんやりと景色を見流す。覚醒しない頭は、どんな景色を捉えても墨絵のようにぼやけている。それは規則的な揺れと共に再び私を緩やかな眠りの中へと誘う。それに抗う心地よさに呑まれている内に、バスは次の停車場所へ向かっていく。
いくつかの交差点を抜け緩やかなカーブの先に、それはある。実際にあるのはもっと遠く。ビルの間からそれが見えた頃、ようやく目が覚めてくる。
曇りの日には霞んでしまう骨格も、晴れの日には日差しに反射するほど。その眩しさに目を細めて、今日も私の一日は始まる。

……………

お気に入りのヘッドフォン。固い座席に身体を沈めて、マフラーに顔を埋める。
そうして最後に、目を閉じる。

さぁ、懐かしい時間の始まり始まり。

……………

デスクについて、メールのチェック。意味不明な英語の羅列を削除していると、その中に見知った差出人の名前。懐かしげに目を細めて、今日は早退決定だと思った。
最後の連絡から何ヶ月経つだろうか。久方ぶりの連絡。

『頑張ってます』

内容はこれだけ。昔から筆無精でこういうのが苦手だったが、未だに直る気配がない。まぁ、らしいと言えばらしいが(笑)だから私も。

『元気です』

とだけ返信した。それでもきっとこれを見たら、いつものあの柔らかい笑みをするのだろう。そう思うと何だか憎めないのだ。

早退したその足で、私はある場所に向かっていた。日が落ちると益々冷たさを増した空気に、マフラーを巻き直す。会社よりも寒いのは、海が近いからだろうか。それとも人が疎らだからだろうか。
チケットを買い、まだ人の少ない列に並ぶ。この分なら早く乗れそうだ。チケットを渡すと受け取った係員の男の人が了解した顔で笑う。彼はこのバイトを永くやっていて、気がついたらすっかり顔馴染みになってしまっていた。彼は夏の澄み渡った空みたいに爽やかに笑う。私はその笑顔が好きだ。
吹き込む風。歯車の軋むような擦れるような音。そして私は、観覧車に乗り込んだ。

……………

お気に入りのヘッドフォンをかける。固い座席に身体を沈めて、マフラーに顔を埋める。
そうして最後に、目を閉じる。

さぁ、懐かしい時間の始まり始まり。

ノイズの混じったピアノ曲。拙い音と緩やかなテンポ。かみ殺したような笑い声が微かに聴こえる。
――――筆無精な彼は、ピアノもやはり下手だった。よく彼の練習室に潜り込んでは、その不器用さに笑う。普段温厚すぎる彼もさすがに不機嫌な表情をして、私はまた笑う。本来なら7分程度の曲だったのだが、私が楽譜に悪戯をして彼はかれこれ14分37秒も気づかずに弾いていた。
それが偶然にも観覧車一周の時間と同じで。だから、観覧車に乗る時はいつもこれを聴いている。連絡もマメに寄越さない彼への当てつけに。
懐かしさとほんの少しの寂しさを感じながら。

……………

笑顔で迎えてくれた彼が、空いてるのでもう一周いいですよ、と言ってくれたが、私はそれを辞退した。

「…もう一周なんて回ったら、きっと私は立てなくなってしまう」

あまりに心地良くて。でもそれではいけない。


あの長い思い出が終わる時、私はまた、地に足を付ける。

明日と言う日を、踏みしめるために。





end.

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雨の音 言の葉

伝えられなかったあの日の想い。
もしいつもの場所に君が居たなら、


雨は好きじゃない。
普段張っているアンテナが鈍くなるから。
何気ないことに過敏になって気疲れする。大気中に満ちた湿気は面白いほど自然に染み着いて。やけに重たく感じる服も、纏わりつく空気も苦手だ。何もかもが霞んでいく感じ…自分が酷く頼りない場所に居るようで。

学校からの帰途、不意に道路の真ん中に倒れている何かを見つけて歩調を緩める。
やはり、雨の日はロクなことがない。

「――――大丈夫ですか?」

「―――…大丈夫、」
態度とは裏腹に意外としっかりとした返答に、環音(ワオ)は少しだけ安堵した。道路に横たわって居たのは、一人の女の子。すっかり日が隠れた闇の支配下で、彼女の顔は見えない。ただ、肩に掛かる綺麗な黒髪が流れるようだった。
「…何、してるんですか?」
「…雨、冷たくて気持ちよくて、」
戸惑う環音に、ゆっくりと彼女は答えた。それは雨と同じように環音の中に染み込んできた。
「風邪引くと思いますけど」
彼女の返答はなかった。何故だか放っておくことも出来ずに、仕方なく彼女の傍らにしゃがみ込んだ。失礼だと思いながら顔を近づけると、ようやくその顔を確かめることができた。端正な顔立ち。目を閉じている所為か、やけに長く感じる睫に水滴が当たっては微かに震える。
正直、綺麗だと、思った。
「―――――退けて、」
「…え?」
目を閉じたまま、彼女はまたゆっくりと繰り返す。
「…傘、退けて」
環音は距離を置くか傘を閉じるか思案して、結局傘を閉じた。
「…冷たい、」
静かに雨は降り注ぎ、また少し身体が重くなった気がした。
「―――えぇ、冷たい」
彼女の声に笑ったような気配を感じた。
「…いつも、こんなことしてるの?」
「…雨が降るのが解るの。そうするとね、何故だか雨を浴びたくなってこうしてる」
彼女は自分の言葉一つ一つを確かめるように言った。
「何も倒れることないんじゃない?」
「コンクリートなのにね、聞こえる気がするの。地面を滑っていく、雨の音が」
「…雨、好きなんだ?」
彼女は漸く目を開けた。
「―――――さぁ、そうだったかしら。…それより、貴方こそ、いいの?」
「…何が?」
初めて目があって、らしくもなく動揺したのは事実だ。
「雨でずぶ濡れ、」
「あぁ…確かに」
環音の答えに、彼女は初めてはっきりと解るように笑った。
「貴方って、変な人」
「君も変わってるよね」
「…よく言われる、」
「僕も、」
彼女が笑い、環音も笑う。最初の雰囲気よりも子供っぽい印象。それでも彼女の笑い声は鈴を転がしたように綺麗だった。それから二人はたわいもない話をした。降り続く雨を気にもとめずに。

「また、逢えるといいね…雨の日に」

別れ際、環音に彼女は一言そう言った。


すっきりしないくすんだ空。雨が降りそうな予感がする。天気予報によれば、降水確率45%…微妙な数字だ。
「行ってきます」
「いってらっしゃい」
母も少し跳ねのきついくせっ毛を気にしながら環音を見送る。どうやら母なりに雨の気配を感じ取っているらしい。
「…あ、雨降りそうだから傘持って行く?」
「あー…」
環音は天気予報を思い出しながら逡巡する。
「雨、嫌いでしょう?」
そして出した結論。
「…いいや、きっと降らないから」
最近は傘を持たずに出ることが増えた。それに比例してずぶ濡れになることも増えていたが。相変わらず雨の日はアンテナが鈍って、身体が重たくなる。長年の間に培われた苦手はそうそう変われない。…でも、少しだけ悪くないなと思うことがあるのも事実だ。

『また、逢えるといいね…雨の日に』

「――――そうだね、また、会いに行くよ」
雨の日は、少しだけ寄り道。きっとまたどこかに倒れている彼女を探しに。






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#10 「夜明けの雨」

「―――…また、雨だ」

気付いた脩二は諦めたような表情で、布団を頭から被る。再びゆるやかな眠りに堕ちていく…

「おはようございます!」

…ことは出来なかった。脩二は気怠そうにベッドを出ると、リビングへ足を伸ばした。
「あ、おはようございます、脩二さん」
リビングには、楽しそうに笑う篤尋と、種が居た。

あの後、脩二は種に自由を与えた。
「好きなように生きれば?」
突き放したとも言える態度だったが、種は特に気にしなかった。
「…ありがとう、ございます。また頑張ってみます」
そう健気に笑って去ろうとしたのを止めたのは。
「無鉄砲なやつだな、」
馨至だった。馨至自身が女子供に甘いのは自覚しているし、二人もそれをよく知っている。篤尋はその行為に笑い、脩二は呆れた。
「状況が落ち着くまで、俺らんとこに居りゃあ、いいだろ」
馨至の言葉に種は足を止め振り返る。驚愕した表情。篤尋と脩二は違う何かを察した。
「…馨至さんっ、」
種の声に振り返る二人。その間をすり抜ける種。
「……喰えねぇ女だな、」
長い黒髪。閉ざされた目。馨至はその姿を思い出しす。そして小さく呟いて苦笑するとそのまま倒れた。

結局、種が馨至から離れずそのままの流れで今に至る。つい何時間か前には泣きそうな程落ち込んでいたはずだが。
「おはよう、脩二」
雨による不調を察しているのか、軽く頭を叩いてソファに促した。脩二はそれに従ってソファに体を沈める。篤尋が淹れた珈琲を代わりに種が持ってきた。
「あー…脩二さん、」
「……何か?」
「…ありがとう」
種はしっかりと脩二を見て言った。脩二は珈琲を一口飲んだ。
「うん、昨日聞いた」
ちゃんと脩二が答えると種は少し安心したように笑った。
「私、馨至さんの様子見てきますね」
サクサク立ち上がるとリビングを出て行った。
それを見送った脩二は、向かいに座った篤尋を見上げる。何も言わないが、篤尋には何が言いたいのかすぐに察しがついた。
「助かってるよ、馨至を気にかけてくれるから」
だから、応えた。
脩二は"ふぅん"と言ってまた珈琲を飲んだ。
「…今くらいはね、」
篤尋の呟きを測りかねて脩二は眉間にシワを寄せた。
「さて、腕出してご覧?」
にっこりと篤尋は笑って手を出した。途端にばつの悪い表情になる脩二。馨至に気を取られて脩二は安堵していたが、奏との交戦でやらかした怪我をしっかり篤尋は覚えていた。そのまま放っておいたことで状況は更に悪い。
「大したことないんですけど」
「でも何もしてないんだろう?」
篤尋は諭すように言う。いつもより優しいのは雨の所為か?シトシトと降り注ぐ雨に、脩二は珍しく感謝した。
「アイツ、相変わらずでやんの」
「まぁ、負けず嫌いだからね…奏は」
篤尋は笑って、薬箱を持ってくる。
「年下相手に大人気ないっつーの」
そう言いながら、脩二はどこか楽しそうだ。
「…最近、GUNSも偵察がてら"下"に来てるらしい」
篤尋はまた手を伸ばして催促。脩二は渋々腕を出した。
「増えんだろうな、」
下に対する見せしめ。罪のない人間たち。
「色々と動きにくいのは確かだね」
篤尋は言いながら器用に手当てを済ませていく。
「…脩二、」
篤尋の声に顔を上げる。
「お昼、何にしようか」
"本当は馨至にも聞きたかったんだけど"と付け加えて、薬箱にしまう。
「…アイツの好きなん作れば?」
脩二が指したのは戻って来た種。篤尋は笑って立ち上がる。そして種を見て一言。

「種さん、お昼のリクエストは?」

雨は、止んでいた。

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#09 「本当の主役」

「突っ立ってないで仕事しろよ」
呆然と見ている執行人に視線を遣ることなく奏は言った。
「はっ、はいっ…」
執行人が我に返り、種へと歩み寄る。
「やっ…」
篤尋と馨至に緊張が走る。
「―――早く来やがれ、」
馨至が毒吐いたのと同時。奏が種と一本の直線上に並んだ時、奏は「それ」に気づいた。奏は咄嗟に近くの執行人を捕まえて盾にした。執行人は驚愕に目を見開いて絶命。血潮が種の爪先数センチ先まで舞った。種はきつく目を閉じた。
「次から次へと、」
奏が苛立った声を上げる。だが意識していなかったのは完全に自分の過失。それを知ってるが故の苛立ち。
「おっせぇんだよ、来んのが」
馨至の言葉を脩二は無視した。奏はすぐに狙いを脩二に切り替える。脩二と奏の銃が交錯する。実力はほぼ互角。それでも脩二の方が上手(ウワテ)に感じるのは篤尋が贔屓目だからだろうか。その隙をついて馨至が種との距離を詰める。上で見ていた真皓が僅かに動く。
「…止めとき、温梓は気づいとる」
夾夏は冷静に真皓を止めた。

チリン…

鈴を転がしたような高い音色が聴こえた。
温梓はその音の先に向けて銃を放った。咄嗟に馨至が飛び退く。
「…アンタ、視えるんだな」

チリン…

「その音、綺麗な音どすなァ」
ゆっくりと紡がれた声は柔らかく心地良い声だった。
「…音?」
「それ、何といいますのん?」
馨至は銃を指しているのだと気づいた。
「…涼風だ、」
答えるなりすぐに種に近づいた馨至は銃で鎖を断ち切りその手を引いた。
「行かすかっ」
「どこ見てんだよ、ゼロイチ」
脩二は撃たずに銃身で奏を殴った。かわしきれずまともに食らうが立て直しは早い。
「百万回死ネ」
奏の連弾。奏の愛銃「quick shot」本来の姿に、脩二は掠りながら再び距離を置く。その間に馨至は種を連れて中央から降りた。アスカが交戦に紛れて二人にナイフを放つが、篤尋の銃が進路をずらす。足を止めることなく「天上」の観覧席の途切れたところへ走る二人。
「あ、あのっ…」
「喋んな、舌噛むぞ」
「でもこのままじゃ落ち…」
「下に行くんなら一番手っ取り早いな」
馨至は事も無げに答えた。
「うそっ!?」
馨至は腕を回してしっかりと種を引き寄せる。
「終わったぞ」
馨至は叫んで、そのまま「天上」の縁を蹴った。

チリン…

「…えぇ名前どすなァ」

温梓がゆっくりと銃を構えた。種が何かを感じて振り返る。見えたのは銃口とそこから立ち上る白煙。だがすぐにそれも見えなくなった。
「…僕らは、これで」
アスカの太刀を銃身で受け止め、優雅に一言。ナイフを弾いて、牽制の一撃。アスカは足を止めた。
「脩二、」
視界に脩二を捉えてから篤尋も二人を追うように縁を蹴った。
「…またね、ゼロイチ」
脩二は感情の薄い表情で篤尋を追う。奏はすぐに脩二の背中に向けて銃を放つ。脩二はそれを銃身で逸らし、奏の視界から消えた。

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
42
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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