monocube
monoには秘めたイロがある。
見えないだけでそこに在る。
数え切れないそれは、やがて絡まり色彩(イロ)になる。
さぁ、箱をあけてごらん。
箱庭(ナカ)は昏(クラ)く底なしの闇色(モノクロ)。
深い闇に融けたらいいのに。
日々の戯言寄せ集め。
当サイトは作者の気まぐれにより、自由気ままに書きなぐった不親切極まりない戯言の箱庭です。
#05 「行動開始」
裏口裏道は悉く全滅。空いているとすれば正面突破くらい。だが、正面突破では「天上」まで時間がかかりすぎる。
「彼女が誰にも見つからずに、此処に来れたと思うかい?」
篤尋の発言は馨至の質問の答えではなかった。
「"上"に住めるなら相当の者だ、しかも彼女はかなりの世間知らずだしね」
「じゃあ、黙認で此処に来たってのか?」
馨至の言葉に篤尋は肩をすくめる。
「そこまでは。ただ、少なからずGUNSに流れてる可能性はある」
「狗が侵入を予想済みってわけか」
『GUNS』…この都市の頂点・指揮者直下の私兵。取り締まりと刑の執行、指揮者の意に沿わない事をしなければ大概のことは許される存在。厄介にも「上」で最も腕の立つメンバー故に軽視はできない。
「けどまぁ、これは大した問題じゃないよ」
「GUNS相手に随分余裕の発言だな」
篤尋は手を振って苦笑する。
「そうじゃなくて、侵入路の話。とりあえず、一番近い出入口とあとは正面からで大丈夫だと思う」
「侵入・退却不可なんじゃないのかよ」
馨至は置かれた蜜柑を指で弾く。
「執行直前なら問題ないよ」
刑の執行時は皆出入口を離れ天上に集まる。刑の執行を最優先にするためだ。その時なら気兼ねなく堂々と侵入できる、と言うのが篤尋の考えだ。
「脩二には時間稼ぎしてもらわないとね」
そう言葉を切って、篤尋は珈琲を飲んだ。そしてぼんやりと地図を眺める。
「―――…珍しく物思いだな」
馨至も珈琲を飲みながら言う。
「予想はしてたけど、いざ行くとなると憂欝にはなるよ」
今までは、処刑ではない方法での死を望む依頼ばかりだった。「上」に行くのも一人で十分。なるべくならと「上」を避けていたのは事実だ。だが、今回は公開処刑の場から少女を生きて救い出さねばならない。GUNS五人を考慮するなら三人でも足りないくらいだ。
「上」…そこはとても美しい世界だった。でもそれは不純物を排除した、漂白の白。あの日、篤尋と馨至は「上」を離れ「下(カレラ)」に下った。GUNSと刑事という席を放棄して。「上」と「下」が不干渉を暗黙の了解としていることを知っていたから。
「さて、…夕飯は何にしようか」
「魚」
馨至が即答する。
「実に幅広い回答で感謝するよ」
「秋刀魚、」
後ろから声がして、二人はその声の主を見た。
「…ってウサギが」
「白兎です、…って、何でこういう時やたらと耳聡いんですかっ!」
白兎の訴えを無視して、脩二は荷物を置くとソファーに倒れた。
「って言うか、基本的に篤尋さんの作るものって何でも美味しいですっ」
白兎の勢いに篤尋は笑って、
「じゃあ、夕飯四人分かな」
と席を立った。
「脩二のリクエストは?」
「蜜柑」
答えると、馨至が脩二に蜜柑を投げた。見てもいないのにそれを受け取って、両手で転がす。
「食いもんで遊ぶな」
馨至が咎めると脩二は身体を起こして地図の上に蜜柑を置いた。
「俺、正面?」
脩二は地図を覗く。
「そう、奏の相手」
「ゼロイチ、ねェ」
ナンバー01の所有者である「綾南奏」。GUNSリーダーの彼を脩二はゼロイチと呼ぶ。
「馨至、巽の対応は?」
「対象には今日中に繋げる」
「それでなんだけど、俺にやらせてくれないかな」
意思の確認役。その繋ぎによって結末が変わる、重要なプロセス。それは本来なら篤尋の仕事だ。
「…いいよ、」
篤尋は脩二に応じる。
その時誰もが、少なからずいつもと違う何かが起こりそうな予感を感じていた。
「彼女が誰にも見つからずに、此処に来れたと思うかい?」
篤尋の発言は馨至の質問の答えではなかった。
「"上"に住めるなら相当の者だ、しかも彼女はかなりの世間知らずだしね」
「じゃあ、黙認で此処に来たってのか?」
馨至の言葉に篤尋は肩をすくめる。
「そこまでは。ただ、少なからずGUNSに流れてる可能性はある」
「狗が侵入を予想済みってわけか」
『GUNS』…この都市の頂点・指揮者直下の私兵。取り締まりと刑の執行、指揮者の意に沿わない事をしなければ大概のことは許される存在。厄介にも「上」で最も腕の立つメンバー故に軽視はできない。
「けどまぁ、これは大した問題じゃないよ」
「GUNS相手に随分余裕の発言だな」
篤尋は手を振って苦笑する。
「そうじゃなくて、侵入路の話。とりあえず、一番近い出入口とあとは正面からで大丈夫だと思う」
「侵入・退却不可なんじゃないのかよ」
馨至は置かれた蜜柑を指で弾く。
「執行直前なら問題ないよ」
刑の執行時は皆出入口を離れ天上に集まる。刑の執行を最優先にするためだ。その時なら気兼ねなく堂々と侵入できる、と言うのが篤尋の考えだ。
「脩二には時間稼ぎしてもらわないとね」
そう言葉を切って、篤尋は珈琲を飲んだ。そしてぼんやりと地図を眺める。
「―――…珍しく物思いだな」
馨至も珈琲を飲みながら言う。
「予想はしてたけど、いざ行くとなると憂欝にはなるよ」
今までは、処刑ではない方法での死を望む依頼ばかりだった。「上」に行くのも一人で十分。なるべくならと「上」を避けていたのは事実だ。だが、今回は公開処刑の場から少女を生きて救い出さねばならない。GUNS五人を考慮するなら三人でも足りないくらいだ。
「上」…そこはとても美しい世界だった。でもそれは不純物を排除した、漂白の白。あの日、篤尋と馨至は「上」を離れ「下(カレラ)」に下った。GUNSと刑事という席を放棄して。「上」と「下」が不干渉を暗黙の了解としていることを知っていたから。
「さて、…夕飯は何にしようか」
「魚」
馨至が即答する。
「実に幅広い回答で感謝するよ」
「秋刀魚、」
後ろから声がして、二人はその声の主を見た。
「…ってウサギが」
「白兎です、…って、何でこういう時やたらと耳聡いんですかっ!」
白兎の訴えを無視して、脩二は荷物を置くとソファーに倒れた。
「って言うか、基本的に篤尋さんの作るものって何でも美味しいですっ」
白兎の勢いに篤尋は笑って、
「じゃあ、夕飯四人分かな」
と席を立った。
「脩二のリクエストは?」
「蜜柑」
答えると、馨至が脩二に蜜柑を投げた。見てもいないのにそれを受け取って、両手で転がす。
「食いもんで遊ぶな」
馨至が咎めると脩二は身体を起こして地図の上に蜜柑を置いた。
「俺、正面?」
脩二は地図を覗く。
「そう、奏の相手」
「ゼロイチ、ねェ」
ナンバー01の所有者である「綾南奏」。GUNSリーダーの彼を脩二はゼロイチと呼ぶ。
「馨至、巽の対応は?」
「対象には今日中に繋げる」
「それでなんだけど、俺にやらせてくれないかな」
意思の確認役。その繋ぎによって結末が変わる、重要なプロセス。それは本来なら篤尋の仕事だ。
「…いいよ、」
篤尋は脩二に応じる。
その時誰もが、少なからずいつもと違う何かが起こりそうな予感を感じていた。
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#04 「作戦会議」
男はパソコンのキィボードを叩く手を止めた。すぐ脇の携帯が鳴り、手に取る。この携帯にかけてくる人間は限られている。表示された名前に、男は応じた。
「"…今いいか?"」
自分に気遣う相手のお人好しに笑って、男…巽は答えた。
「アンタからの用なら、よくなくたっていいって答えるさ」
巽の台詞に相手…馨至は笑った。
「"頼みがある、連絡を取りたい奴がいるんだ"」
「へぇ、犯罪絡み?」
「"鋭いな。呉崎種、明日の日没に天上で処刑予定だ"」
聞くなり巽の指はキィボードの上を流れるように動きだす。
「"明日の朝までに情報が欲しい"」
巽は携帯を肩で押さえながら答える。その視線は目の前のディスプレイに注がれたまま。
「引き受けた。…今夜中に送るよ」
「"…できるか?"」
「誰に向かって言ってんのさ、」
巽の偉そうな態度はいつものこと。だが今までもしっかりと役目はこなしてくれている。それに馨至は信頼できると認めている。
「"野暮だったな、…頼りにしてる"」
それ聞くと、巽は携帯を切った。
少女を送った帰途、篤尋はあえて避けていた道を選んだ。「天上」の見えるこの場所は、嫌でも自分のしていたことを、してしまったことを思い出すから。
『…此処は、綺麗すぎる』
篤尋はガキっぽいと自覚しつつも、「天上」を避けるように俯いて走り抜けた。そして自宅が見えると歩調を緩め息を整える。格好悪い姿は見せたくないのが、篤尋の本音だ。そんな自分に苦笑しながら家に入った。
「ようやくお戻りか、手間取ったな」
リビングに入るなり、馨至の率直な一言。
「ダダこねられちゃってね」
「帰りたくな~い、とか?色男は面倒だな」
馨至は笑いながら篤尋にお茶ではなく珈琲をリクエストした。分が悪いと悟った篤尋は話の矛先を変える。
「脩二は?」
「3Dを探しに行った、ウサギ連れてな」
馨至の言葉に篤尋は笑う。
「さすがだ、手回しが早い」
白兎の直感は篤尋もよく知っている。
「じゃあ、そっちは心配ないね」
篤尋が珈琲を入れている間に、馨至はテーブルに地図を広げる。
「繋ぐのも巽に任せた、後は」
篤尋が珈琲を置いた。
「僕の役目って話か」
篤尋は地図の侵入・退却不可箇所に珈琲を置き、更に足りない分を蜜柑で塞ぐ。
「何で蜜柑…?」
「脩二が食べたいって言ってたから」
にっこりと笑って篤尋は答えた。
「―――…で、篤尋さん」
馨至は地図から視線をあげて、篤尋を見た。
「どこから侵入(ハイ)るんだ?」
「"…今いいか?"」
自分に気遣う相手のお人好しに笑って、男…巽は答えた。
「アンタからの用なら、よくなくたっていいって答えるさ」
巽の台詞に相手…馨至は笑った。
「"頼みがある、連絡を取りたい奴がいるんだ"」
「へぇ、犯罪絡み?」
「"鋭いな。呉崎種、明日の日没に天上で処刑予定だ"」
聞くなり巽の指はキィボードの上を流れるように動きだす。
「"明日の朝までに情報が欲しい"」
巽は携帯を肩で押さえながら答える。その視線は目の前のディスプレイに注がれたまま。
「引き受けた。…今夜中に送るよ」
「"…できるか?"」
「誰に向かって言ってんのさ、」
巽の偉そうな態度はいつものこと。だが今までもしっかりと役目はこなしてくれている。それに馨至は信頼できると認めている。
「"野暮だったな、…頼りにしてる"」
それ聞くと、巽は携帯を切った。
少女を送った帰途、篤尋はあえて避けていた道を選んだ。「天上」の見えるこの場所は、嫌でも自分のしていたことを、してしまったことを思い出すから。
『…此処は、綺麗すぎる』
篤尋はガキっぽいと自覚しつつも、「天上」を避けるように俯いて走り抜けた。そして自宅が見えると歩調を緩め息を整える。格好悪い姿は見せたくないのが、篤尋の本音だ。そんな自分に苦笑しながら家に入った。
「ようやくお戻りか、手間取ったな」
リビングに入るなり、馨至の率直な一言。
「ダダこねられちゃってね」
「帰りたくな~い、とか?色男は面倒だな」
馨至は笑いながら篤尋にお茶ではなく珈琲をリクエストした。分が悪いと悟った篤尋は話の矛先を変える。
「脩二は?」
「3Dを探しに行った、ウサギ連れてな」
馨至の言葉に篤尋は笑う。
「さすがだ、手回しが早い」
白兎の直感は篤尋もよく知っている。
「じゃあ、そっちは心配ないね」
篤尋が珈琲を入れている間に、馨至はテーブルに地図を広げる。
「繋ぐのも巽に任せた、後は」
篤尋が珈琲を置いた。
「僕の役目って話か」
篤尋は地図の侵入・退却不可箇所に珈琲を置き、更に足りない分を蜜柑で塞ぐ。
「何で蜜柑…?」
「脩二が食べたいって言ってたから」
にっこりと笑って篤尋は答えた。
「―――…で、篤尋さん」
馨至は地図から視線をあげて、篤尋を見た。
「どこから侵入(ハイ)るんだ?」
雨シリーズでした。
月島と灰猫。そして灰猫と男。慈雪様の処からいただいたお題の一つ『血』で「雨が止むまで」。そして、続きでお題の一つ『孤独』で「雨が止んだら」。さて、作中の男は死んだのか否か。続きはお好きなように想像してください(笑)
雨が止んだら
雨が止んでも、コンクリートからは雨の匂いがした。
染み込んでくるような寒さに灰猫は首を竦める。猫背を更に曲げながら、しゅくしゅくと音を立てる土の上を歩いていた。
「――――死んでんの?」
土の上に横たわる男一人。身なりは酷く、雨すらあまり凌げていなかったのだろう。湿った身体。所々土に塗れている。灰猫はその男に見覚えがあった。傍らにしゃがみ込むと、声が返ってきた。
「…雨嫌いの灰猫か、」
「いつにも増して酷いなりだな」
灰猫の台詞に男は笑った。
「いつにも増して酷い面だな」
男の言葉に灰猫はすぐ反応できなかった。
「とっくに絶望は経験済みかと思っとったが」
男は灰猫を見てもいない。灰猫もそんな感情を表に出したつもりはない。
「…あれは、酷い毒だ」
短くて永い時間をかけて、身体(ソト)も心(ナカ)も蝕まれていく。残るものなど、何もなくて。
「―――灰猫よ、お前さんはこの世で一番残酷な毒を識っとるか?」
男は一旦言葉を切る。
灰猫は応えなかった。
「――――…孤独だよ、」
そう言って男は黙った。
「…生きてる?」
男は答えなかった。
end.
染み込んでくるような寒さに灰猫は首を竦める。猫背を更に曲げながら、しゅくしゅくと音を立てる土の上を歩いていた。
「――――死んでんの?」
土の上に横たわる男一人。身なりは酷く、雨すらあまり凌げていなかったのだろう。湿った身体。所々土に塗れている。灰猫はその男に見覚えがあった。傍らにしゃがみ込むと、声が返ってきた。
「…雨嫌いの灰猫か、」
「いつにも増して酷いなりだな」
灰猫の台詞に男は笑った。
「いつにも増して酷い面だな」
男の言葉に灰猫はすぐ反応できなかった。
「とっくに絶望は経験済みかと思っとったが」
男は灰猫を見てもいない。灰猫もそんな感情を表に出したつもりはない。
「…あれは、酷い毒だ」
短くて永い時間をかけて、身体(ソト)も心(ナカ)も蝕まれていく。残るものなど、何もなくて。
「―――灰猫よ、お前さんはこの世で一番残酷な毒を識っとるか?」
男は一旦言葉を切る。
灰猫は応えなかった。
「――――…孤独だよ、」
そう言って男は黙った。
「…生きてる?」
男は答えなかった。
end.
雨が止むまで ( 後編)
それは今まで聞いたこともない、毒。
まるで去る気配がないのを特に咎められたりはしなかった。そうしてしばらく居座るうちに、分かってくることがある。年令の割に細いこと。特に働いている気配がないこと。だからどうと言うこともないのだが。
「――…品定めされてるみたいだ」
何故かその声に自虐的なものを感じ取った。灰猫は声をかけようとして止めた。
だから、それに気付いたのは本当に無意識。
「…なぁ、アンタ包帯なんてしてたか?」
灰猫の声に、月島は手を止め振り返る。そしてあの控えめな笑みで、
「…してたよ」
と答えた。そしてまた手を動かし始める。
「じゃあ何したんだよ、それ」
灰猫は確かと言えない違和感に、何とかして形を持たせたかった。少しでも確かなものにできたら。
「…言わない、」
その表情こそ見えなかったが、灰猫はまた笑っているのだろうと思った。
「言ったらきっと、…泣いちゃうから」
ダレガ?
ナニニ?
そう言われた灰猫は、それ以上深く詮索する事無く口を閉ざした。雨はまだ降り続いていた。
不自然に続く雨は今だに止む様子を見せない。天気予報も何だかぼやけて見える。心理的に雨が嫌いな灰猫は、猫だからかとくだらない理由付けをする。灰猫の少し離れたところに倒れている月島。自分よりも月島の方が雨がダメなのだろうか。
「…何、」
月島はゆっくりと目を開ける。灰猫は何も言わない。すると月島は珍しく少し意地悪な表情をした。
「そんなに包帯が気になる?」
灰猫は距離を詰めた。そして不機嫌な表情。
「―――俺からじゃないからな、」
灰猫は力なく上げられた腕を掴んだ。
その時の衝撃を何と言おう。
それは確かに腕だが、もはや腕などではない。熟れ過ぎたトマトを掴んだかのような感覚。掴んだ跡の残る腕。灰猫は反射的に手を引いた。
「腐っていくんだ、血の毒で」
血縁はみんなそれで死んだ、と月島は静かに言う。あと五年、三十になる前に自分もどこかで死ぬ。
「だから、誰かに居てほしかったのかもしれない…最期に、」
月島は頭を押さえて眉間に皺を寄せる。
「…ねぇ、君の本当の名前は?」
「――――雨嫌いの灰猫だよ、」
月島は力なく笑った。
「じゃあ、灰猫…雨が止んだら、居なくなって」
その声にも咎めるような響きはなかった。
「…あぁ、雨が止むまで居てやるよ」
end.
まるで去る気配がないのを特に咎められたりはしなかった。そうしてしばらく居座るうちに、分かってくることがある。年令の割に細いこと。特に働いている気配がないこと。だからどうと言うこともないのだが。
「――…品定めされてるみたいだ」
何故かその声に自虐的なものを感じ取った。灰猫は声をかけようとして止めた。
だから、それに気付いたのは本当に無意識。
「…なぁ、アンタ包帯なんてしてたか?」
灰猫の声に、月島は手を止め振り返る。そしてあの控えめな笑みで、
「…してたよ」
と答えた。そしてまた手を動かし始める。
「じゃあ何したんだよ、それ」
灰猫は確かと言えない違和感に、何とかして形を持たせたかった。少しでも確かなものにできたら。
「…言わない、」
その表情こそ見えなかったが、灰猫はまた笑っているのだろうと思った。
「言ったらきっと、…泣いちゃうから」
ダレガ?
ナニニ?
そう言われた灰猫は、それ以上深く詮索する事無く口を閉ざした。雨はまだ降り続いていた。
不自然に続く雨は今だに止む様子を見せない。天気予報も何だかぼやけて見える。心理的に雨が嫌いな灰猫は、猫だからかとくだらない理由付けをする。灰猫の少し離れたところに倒れている月島。自分よりも月島の方が雨がダメなのだろうか。
「…何、」
月島はゆっくりと目を開ける。灰猫は何も言わない。すると月島は珍しく少し意地悪な表情をした。
「そんなに包帯が気になる?」
灰猫は距離を詰めた。そして不機嫌な表情。
「―――俺からじゃないからな、」
灰猫は力なく上げられた腕を掴んだ。
その時の衝撃を何と言おう。
それは確かに腕だが、もはや腕などではない。熟れ過ぎたトマトを掴んだかのような感覚。掴んだ跡の残る腕。灰猫は反射的に手を引いた。
「腐っていくんだ、血の毒で」
血縁はみんなそれで死んだ、と月島は静かに言う。あと五年、三十になる前に自分もどこかで死ぬ。
「だから、誰かに居てほしかったのかもしれない…最期に、」
月島は頭を押さえて眉間に皺を寄せる。
「…ねぇ、君の本当の名前は?」
「――――雨嫌いの灰猫だよ、」
月島は力なく笑った。
「じゃあ、灰猫…雨が止んだら、居なくなって」
その声にも咎めるような響きはなかった。
「…あぁ、雨が止むまで居てやるよ」
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瑞季ゆたか
年齢:
42
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

