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それは緩やかな微睡みから、

優しく掬い上げられるような感覚。




※蒼紅要素あり。でも佐幸。何だかあまりな感じで居た堪れないので折りたたみ↓↓

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ゆっくりと自然に目を覚ます。
ぼんやりと次第に像を結んでいくそれは、見慣れた忍ではない。
それは刀を交えていたはずの、蒼。
片膝を立て曇天を睨み上げるように見ているその横顔は。

(…政宗殿…?)

ではないような気さえして。
少なくとも自分の知る蒼ではなく。
感じる殺気のように鋭い空気。
無理やりそれを抑え込んで尚それは刃物のように滲み出ていた。

「……っ…」

自分が身体を起こしたことにすら蒼は気付いていないのかもしれない。
一瞬、噛み殺した呻きと共に苦痛に歪む表情。

「政宗殿っ…」

気掛かりで伸ばした手は蒼に触れるか触れないかのところで強引に絡め取られて、
途端にねじ伏せられるような感覚。
鈍痛に一瞬目をつぶる。
再び目を開けると、自分を見下ろす、蒼。
その眼はまさに血に飢えた竜のごとく。

「…まさ、む、ね…どの…?」

喉が乾いたようにかすれて。
纏う蒼い静電気のようなそれに目を奪われた。
警鐘が鳴る、これは危険だと。

「…返り討ちの最中にぶっ倒れるとはいい度胸じゃねぇか…」

普段よりトーンの落ちた声。
稽古とは名ばかりの手合わせの最中妙な連中に絡まれ、
血気盛んな二人が逃げるはずもなく。

「…まさか、某を、助けて…」

「HA!俺が善意でテメェを助けた、と?」

よく見れば、傷は蒼の方が多い気がする。
頑丈さを度外視してもだ。

「冗談だろ、…テメェは竜が喰い殺す」

落とされる言葉は冷たく鋭く。
手を拘束する腕は、まるでびくともしない。

「…な、にを…」

沸き起こる震えはなんの所為か。悟
らせぬよう抑え込んで。
悟らせぬ体重がかかったかと思った瞬間。

「…ぁ…!」

喉元に走る痛み。
それは声にならない。
顔を上げた蒼と目が合う。
口元を濡らす緋色。
それを舐める赤い舌。

「…竜に喉元喰われた感想はどうだ?」

ぞわり、と感じたことのない恐怖。

(……佐助っ、)

口にしたい名を意地が邪魔して。

「…っ、」

手も喉元も痛みが苛む。
だが一番痛むのは。
ぎり、と奥歯を噛んだ。
蒼の空気に触れているすべてが麻痺していく。

(…このまま、で、は…)

すると急に蒼が猫のように跳び退いた。
屈んでいながらも手には抜き身の刀。

「好き勝手はそこまでにしてもらうよ、竜の旦那」

ふわりと背中に手を回して抱き締めてくれる温度。
強張った身体が少しずつ解けていく。

「悪いけど、俺以外が泣かすのは許さない」

抱き締める腕に力が籠もって。
泣いてないと言い返したかったが舌はまだ思い通りには動かずに。

「…さ、すけ…」

「旦那も、何で俺様呼ばないの!」

視線を蒼に向けたままで言われ、言葉の代わりにしがみついた。

「…あーあ、竜の旦那はスイッチ切れてないってわけ」

忍が呟き、嘆息する。

「こりゃ、右目の旦那に知らせとかないと…」

旦那、と声をかけられて顔を上げると同時。
軽がると身体を抱き上げられた。

「アンタに手荒な真似はできないんでね」

勢いよく斬り込んでくる蒼を交わして忍は音もたてず戦線離脱。

「…さすけ、」

「ちょっと旦那黙ってて」

手近な枝の上で立ち止まる。

「まったく…竜と手合せもいいけど、探す方の身にもな、」

落ち着いたら震えがぶり返す。
それを感じ取った忍は言葉を止める。

「…はいはい、泣かない泣かない」

「泣いてない!」

ムキになって見上げれば、すっと無防備な喉元の傷口に労るような口付けが落ちて。

「…っ!」

痛みに顔を顰めたら見返す視線とぶつかって。


「…今度はちゃんと俺呼んで」


真剣な声。
滴り落ちた汗に、忍が如何に焦っていたのかが垣間見えて。
それに気付いた気恥ずかしさに、またしがみついて頷く。
そんな様子に苦笑する気配。
また、しっかりと抱きしめてくれる腕。

それが、涙が出るほど、嬉しかった。





※スイッチが切れない竜を、忍の知らせを受けた右目が保護しにいくのはそれからすぐのこと。
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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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