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ニッケルキリ番「8018」のお題

またまた、鈴雅さんより、キリリクです(笑)
順番無視ってのは置いといて…





…泣くなよ、雲雀…」

誰よりも優しいその人は。

「泣いてるのは君だろ?」

誰よりも泣き虫で。
誰よりも泣くことを知らない人。


『ただ切に幸せを願う人』


部屋に戻るとソファを占領する「それ」に、小さくため息をついた。ぐったりとでかい身体をソファに沈めている。身じろぎ一つしないが、寝息は聞こえない。眠ってはいないのだろう。
「…何やってるの、」
ソファに近づいて素っ気なく問うと、山本は閉じていた瞼をゆっくりと上げた。
「…ぁ、おかえり」
起き上がろうとしたが、力が出ないのか少し上体を起こしてまたすぐにソファに沈んだ。
「徹夜した…」
雲雀はネクタイを緩めて引き抜いて、ジャケットを脱いだ。
「昨日の仕事は夜じゃなかっただろ」
「報告書終わらなくて、寝てねーの」
その言葉に雲雀はシャツを脱ぎかけたところで手を止めて山本に視線を向ける。
「ムラムラするからヤメテ~」
雲雀を見る山本にシャツを投げつけた。
「報告書くらいで徹夜なんて馬鹿じゃないの」
呆れ顔で言うと、キッチンに入り冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。
「雲雀みたいに得意じゃねーんだよ、俺は」
「あぁ、キミ馬鹿だもんね」
拗ねたような声に雲雀は容赦なく返事を返す。すると返ってきたのは沈黙。雲雀は一瞬手を止めたが、すぐにミネラルウォーターをグラスに注いだ。部屋は注ぎ入れる水音が聞こえるくらいに静かで。

「自分が何をしたのかも分かってる」

ぽつりと。

「―――書くことも、書かなきゃいけないことも分かってる、」

それはまるで。

「反芻する度に、たくさん殺した顔も死んでいった顔も思い出す」

独り言のように。

「苦しいって、死にたくないって顔を、思い出す」

雲雀はグラスのミネラルウォーターを一口嚥下した。

「…当然だろ、僕らがしているのは綺麗なことじゃない」
それが嫌だと言うなら、此処を離れるほかない。此処に居る、それはその代償なのだから。雲雀は山本がそれを理解できないほど馬鹿だとは思っていない。
「…でも、俺の居ないところでみんなが傷つくのは嫌なんだ」
くしゃりと山本が頭を掻く。
「…って、矛盾してんだけど」
「まぁ、甘チャンなキミらしいけどね」
山本の苦笑に、雲雀はキッチンを出て山本に近付く。
「ツナもこんな気持ちだったのかな」
雲雀は俯いて答えなかった。
「…泣くなよ、雲雀…」
「泣いてるのはキミだろ?」
雲雀はやはり呆れた表情で山本を見、小さくため息をつく。
「僕らは人間の上に立ってるんだよ(幹部と言うだけで何千何万の上に)、それに今のこの場所は敵の死の上に立ってることにもなる」
雲雀の言葉を聞きながら、ソファに倒れたまま山本は腕で顔を隠す。

(…甘い、のは優しいからで)

その傍らに雲雀は膝をついた。その気配を感じ取って、山本が少しだけ腕を退ける。その眦に雲雀はキスを落とした。

「君は、泣くことを覚えた方がいい」

ぽつりと呟く雲雀を呆然と山本は見上げる。

「もう、張り詰める理由はないでしょ?」

雲雀の言葉に、山本の脳裏を様々なことが過ぎった。色んなことを思い出しているのだと雲雀は思った。今まで深く立ち入ったことはなかったが、母親が死んでいることは知っているし、堪えてきたことはたくさんあったのだろう。一つに執着することのない性格もそれに起因しているのかもしれない。周りに気を使ったり我慢したり。それに慣れすぎているように思えて。

「…少なくとも僕の前では」

雲雀の言葉はいつでも容赦なく率直だ。山本はその言葉に、触れた指先に安堵する。気を抜いたら泣き笑いになった。
それを見て雲雀は山本の額に優しいキスをした。

「雲雀、お風呂入ろ」

雲雀は仕方ない、とでも言うように溜め息を吐いた。
それから二人は一緒にお風呂に入った。雲雀は風呂が狭いとだけ文句を言い、それ以外は黙認した。落ち込んでいるのを刺激したら厄介だとよく理解っていたからだが。雲雀は山本を抱きしめたまま眠った。人の温もりが優しいことを、雲雀は山本に教えてもらったから。だから、そうするべきだと思った。

「…キミは、それでいいよ」

些細なことで心を痛めて、落ち込んで。そしてその度に泣けばいい。死して泣くことのできなかった誰かの為に。

「…それで」

抱きしめる腕に少しだけ力を込めて、雲雀はゆっくりと目を伏せた。

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ニッケルキリ番「8059」のお題

鈴雅さんより、キリリクです。
順番無視ですが…
●ボーン系のキリ番にはめっぽう強い彼女…




「あっはははっ…」
半泣きになりながら山本が笑う。
「お前、他人事だと思って…」
不機嫌になる声に、
「はーい、動くなよー」
軽くキスで宥めて。

息をするように当たり前な、

この優しい時間が、

このままずっと続くように。


『呼吸』


「随分伸びたのな」
山本はソファで本を読んでいる獄寺の髪に触れる。跳ねたりしているが、癖がつきやすいだけで髪質は柔らかい。
「ここしばらくは時間とれなかったもんな」
まるで猫でも撫でているような感覚に、山本の表情はほころんだ。
その手を退かすわけでもなく、雑誌に目を落とす獄寺の耳にかける髪が少し邪魔なような仕種。
「…少し切ってやろうか?」
「あー…そうだな、」
山本の言葉に獄寺は頷いて雑誌を閉じた。
いつからか山本に髪を切ってもらうようになった。いくら冗談とは言え、髪を梳いてやろうかと時雨金時を出した時はグーで殴ってやったが。基本的に遺伝もあるのか山本は手先が器用だ。要領もいいからある程度は平均並にこなしてしまう。だが、任せる理由はそれだけではなく。

(…すげぇ気持ちいいんだよな、)

山本に髪を触られるのが心地良くて安心してしまう。そんな獄寺に山本も優しく笑うから反則だ。
「獄寺の髪って、柔くて綺麗だよな」
軽快に鋏を扱いながら、山本が笑う。
「なんだよ、今更……あ"、」
呆れたような声で言ったかと思うと、急に獄寺が顔をしかめる。
「あ"、」という言葉に反応した山本は、一旦手を止めて獄寺の表情を覗き込む。
「何?どうした?」
「ヤなこと思い出した…」
しかめっ面のまま、山本に手を動かせと催促する。山本はまた鋏を動かし始めた。軽快な音が心地よい中で、嫌なものを吐き出すように獄寺が口を開く。
「この間の潜入の時な、」
ついこの間のこと。
いつもなら多くても二人なのだが、ボンゴレ幹部総出で一つの任務を行った。つい最近台頭してきた巨大なカジノ。裏取引も堂々と行われているその場所に獄寺たちは潜入した。
「あぁ、結構楽しかったな」
山本はカジノのディーラーとしてターゲットが好きなカードゲームの相手を、獄寺は遠巻きにターゲットを尾行していた。あの馬鹿正直だった山本が、あれほどまでに鮮やかに且つスマートにイカサマをしているのに獄寺は正直驚いたのだが。
「お前とヤツが楽しく遊んでる間に声掛けられたんだよ」
そのセリフに、山本は一瞬手を止めまた作業に戻る。
「ふーん…」
素っ気無い返答に獄寺は楽しそうに笑う。
「妬くなよ、」
「別に?だってそいつはこんな事出来ないんだろ?」
そう言って耳を甘噛みした。
「やっ…めろ、バカっ」
「それで?」
山本がそう促すと、獄寺は話を続ける。
「その相手がヤツが引き連れてたボディガードで、」
あの時、正体がばれたのかと本気で焦ったのだ。

「普通にナンパされた」

「ぶっ…」
それを聞いて山本は吹いた。
「あの時、獄寺髪結ってなかったもんな」
大抵は邪魔だからとあげているのだが、綱吉から下ろした方がいいよと何とかの一声。結局獄寺は髪を下ろして行ったのだ。
「しかも俺が男だって言ったら、解ってて声掛けてきやがってんだ」
まぁ、そうだろうな。山本は内心思った。当の獄寺は話している内に怒りが戻ってきたらしい。そんな様子に、山本は手を止めて笑った。
「あっはははっ…」
半泣きになりながら山本が笑う。
「お前、他人事だと思って…」
不機嫌になる声に、
「はーい、動くなよー…くくっ…」
笑いを抑えた山本は振り返る獄寺に触れるだけのキスをして、前を向かせる。
「マジ、お前死ね」
容赦ない言葉に、ただ山本は穏やかに笑うだけ。
「なぁ、コレ終わったら買い物行かねー?」
獄寺は壁の時計を見る。夕飯の買出しにはまだ早い時間だ。
「何しに、」
「ピアス、探しに行こう」
「は?」
また動こうとするのをやんわりと止めて。
「獄寺に似合いそうなのをさ」
あまりに楽しそうに口にするから。獄寺は口を開いたものの、言葉を口にはしなかった。
軽快な鋏の音。
時折混じる鼻歌。
「…音痴だな、お前」
獄寺が笑う。つられて山本も笑う。
「よし、じゃ髪洗って来い!」
掛けた布を取って、山本は獄寺の背中を押す。
「命令すんな、」
獄寺は山本を軽く叩いて、バスルームへ歩いて行った。
「あ、それとも俺が洗ってやろうかー?」
「余計なお世話だっ」
声を張って投げた山本の言葉は一刀両断。山本はまた肩を震わせて笑った。鋏をしまって、散らばった銀糸を片付ける。そうしてドライヤーを取り出して、熱風の熱さを確かめる。あんまり暑いとまた不機嫌な表情で文句を言うから。

呼吸をするように必要不可欠な、この優しい時間が、ずっと続きますように。
山本は、獄寺を待つ間に心の中で祈った。


獄寺は唐突に買い物へ誘った山本の真意をはかりかねていた。というのも、山本自身本当に何も考えていないかもしれないからだ。ご機嫌とりが必要なほど、獄寺は機嫌が悪いわけでもない。だが、
「…まぁ、悪くはねぇよな」
獄寺自身のんびりとした時間を過ごすのは悪くないと思っている。男二人の奇妙な買い物。ふと目に留まった店のガラスに映る自分。髪が随分さっぱりした。隠れていた耳も見える。

(…あ…)

だから、山本は買い物に誘ったのではなかろうか。気に入って付けているピアスに触れる。
「イイモノ見つかった?」
後ろに立つ山本をガラス越しに見てから振り返る。すると、山本はじっとガラスを見ていて。真剣な横顔に一瞬見惚れたのは秘密だ。
「やま、」
「武、だろ?」
「なっ、」
悪戯に山本は笑って獄寺の手を引くとその店に入った。
「―――…すか?」
獄寺から離れたところで山本は店員と話をしている。内容は聞こえないが、店員が申し訳なさそうにしている。
「なぁ、」
声をかけると山本は嬉しそうに笑った。
「イイモノ見つけたよ」
獄寺の知らぬまま山本は会計を済ませてまた獄寺の手を引くと、そのまま店を出た。
さっきの店の小さな手提げを片手に、ご機嫌な山本。広い公園を横切って、お気に入りのオープンカフェへ。
「…変な感じだな、」
獄寺の呟きに山本が振り返る。
「デートしてるみてーだ」
その言葉に山本は一瞬キョトンとしてから苦笑。
「あー…一応、デートしてるつもりなんだけど」
「…あ、そ」
獄寺は山本から視線を逸らして逃げた。その仕草に山本はまた優しく笑った。
カフェラテとエスプレッソを頼んでひと息。夕暮れにはまだ早いが涼しさを帯びた風。穏やかな午後。
「あ、これ」
山本が手提げから出した小さな箱。
「結婚申し込むみたいに開けた方がいい?」
山本が笑い、獄寺は「バーカ」と言いながらその箱を受け取る。入っていたのはシンプルなデザインのピアス。
「それさ、光りの加減で青と碧になんの」
"俺たちの色だろ?"なんて恥ずかしげもなく言われて、逆に反応に困る。
「本トはお揃いにしようと思ったんだけど、」
ウィンドウ越しに見たそれは、現品限りでたった一つだけ。
「でも、どうしてもこれつけて欲しかったからさ」
運ばれてきたカフェラテとエスプレッソ。エスプレッソを口にする山本に、獄寺は呆れたような眼差しを向ける。
「本トお前って…」
「ん?」
「…卑怯者、」
目を丸くする山本を無視して片方のピアスを取ると、そのまま山本の耳に付けた。今つけているピアスには申し訳ないが。
「獄寺?」
「隼人、だろ」
そしてもう一つを自分の耳につけようとする。
「待って、」
山本は獄寺の手からピアスを取ると、それを耳につけた。見上げると山本が優しい目で笑う。名残惜しそうに獄寺の髪を軽く指で梳いて。
「…うん、やっぱ似合う」
獄寺はにやりと笑った。

「…お前が言うんなら、間違いないんだろうな」

山本は「そのセリフは反則だ」と額を押さえ、その様子に笑う。
「なぁ、これって指輪はめ合ったみたいじゃねぇ?」
あっ、と気づいたように山本が言い、
「調子に乗んな、バーカ」
それをはねのけるように獄寺はカフェラテを口にした。珍しく甘いのが飲みたくて頼んだカフェラテ。

「…甘…」

きっとブラックを頼んでもそう感じたに違いない。カフェラテの選択は失敗した。
視線を上げるとそこには山本が居て。
まとわりつくような硝煙も、消えない赤と鉄の匂いもなくて。

ただ穏やかな風と、

心地よい空気と、

二人が居るこの時間が、

ずっと続きますように。


獄寺は、そっと目を伏せて祈った。

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ニッケルキリ番「5927」のお題。

鈴雅さんより、またキリリク(笑)
○ボーンの59+27です。こちらも興味があればどうぞ。


「そっか、そうだよね…生まれてなきゃ、獄寺くんともこうして話せなかったんだから」

愛しい貴方の生まれたこの日に、心からの感謝を。


『君という花』


修行は必要。
自分はあの人の右腕になるのだから。
何があってもあの人を守る。
そしてあの人が悲しまないように、自分も守ってみせる。
それが、一番自分に必要な思い。

でも、今日は。

獄寺は走っていた。

でも、今日だけは。

修行の後で体力が随分落ちている。疲れもある。

でも、今日だけは許してほしい。

傍に、行くことを。

「何だツナ、戻らねーのか」
リボーンの言葉に、ツナは苦笑して頷いた。
「もう少しだけ、ここにいるよ。だから俺のことは気にせず…」
「じゃ、帰るぞバジル」
「ってソッコーかよ!」
リボーンはツナを気にするバジルを連れて、早々に引き上げていった。それをツナは見送って、大きく深呼吸をした。

(みんな今頃何してるんだろうなぁ…)

ツナは首に下げたリングを眺める。
平和な日常。このリングがなければ、誰一人追い詰められることも命がけになることもなかった。でも、誰一人それを嘆くこともツナを責めることもなく。必死で、守ろうとしている。

「…俺だって、」

(本当は怖いけど、逃げたいけど…でも一人じゃないから)

「よしっ、」
ツナは立ち上がり、両手で頬を叩いた。
「…負けるもんか」
ツナが呟いた時、後ろから物音がした。
「うわぁあっ、だっ、誰!?」
音のした方向に目を凝らすと見知った顔がのぞいた。
「ご、獄寺くん!?」
獄寺は苦笑して頭を掻いた。
「驚かせてすみません、十代目」
ツナは安堵の息を吐いて笑った。
「今日の修行は終わったの?」
「はい。あ、もしや修行のお邪魔だったとか…」
「ううん、俺も終わって戻ろうかと思ってたとこ」
「それなら良かった…」
獄寺が安心して穏やかに笑う。ツナはその表情にらしくもなくドキッとした。
「十代目?」
覗き込む獄寺にツナは慌てて首を振った。
「ううん、何でもない」
すると獄寺はそわそわしだした。不思議そうにツナが見ていると、やがて意を決したように口を開いた。
「十代目、今から少しの間…俺に時間をください」
「…何?急に改まって」
「どうしても、今日貴方に伝えたくて」
ツナは黙って獄寺の言葉を待つ。すると獄寺はダイナマイトを取り出して宙に放った。
「ちょ、獄寺くん!?」
ダイナマイトが爆発する、目を瞑ったツナの耳に聞こえたのは。

「十代目、お誕生日おめでとうございますっ」

その声に目を開けると、にっこりと嬉しそうに笑う獄寺。そして。
「…花、火?」
夜空に花が咲いていた。確かに投げたのはダイナマイトだったはず。
「…何で?」
「ジャンニーニが来たときに改造されたやつっス!たまには使えるもん残して行きやがりますね、アイツも」
獄寺はやっぱり嬉しそうで。
「どうしても十代目のお誕生日祝いたくて、」
自分ですら忘れていた。
「そしたら、足が勝手に走り出してました」
ツナは呆然と獄寺を見上げる。
「十代目、俺はすげー嬉しいんスよ」
貴方が生まれてきてくれたことが。
貴方の傍で笑っていられることが。
獄寺はツナの手を握った。
「だから、俺は負けません」
貴方を悲しませることはしたくないから。

「俺を、信じてください」

獄寺の言葉に、ツナはその手を握り返した。
「獄寺くん…ありがと」
掴んだ手は緊張していて、どれだけ勇気を振り絞っているのか気づいてしまった。だから。

(俺も、それに応えたい)

「俺も信じてるから、」

ツナは真っ直ぐに獄寺を見、笑った。











オマケ
「アイツら本ト進まねーな」
「や、やはり覗き見は…」
「さっさと告白しちまえばいいのに」
「リボーン殿っ(慌)」

しっかりデバガメしてる二人(笑)

キリリク消化です。
因みに、14日が彼の誕生日だったので、それも合わせての小話でした。

遅れ馳せながら、ハピバ!つなよし!!

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ニッケルキリ番「5918」のお題。

鈴雅さんより、キリリク。
○ボーンの59+18です。興味があればどうぞ。


「昔の君って、こんなに脆く見えてたんだね」

その言葉に、息が詰まった。


『その先に見えたモノは』


獄寺が見た10年後の世界は、自分の無力を思い知るのには十分だった。
「必ず、守ります」
ボンゴレ本部の壊滅。
散り散りになったファミリーと守護者たち。
そして。
「絶対に、貴方を死なせたりしない」
失った代償。
「俺が、必ずっ」
「…獄寺くん、」
獄寺はキツくキツく手を握りしめる。未来を変えたいのならば、自分がやるしかない。

「―――…君には無理だよ」

獄寺の言葉を真っ向から否定する凛とした声。
「…っ、雲雀」
「君、自分の実力省みたことあるの?」
見上げた雲雀の目は酷く落ち着いていて、無性に腹が立った。
「確かに俺は弱い、だから修行して、腕磨いて、」
「それで、何が出来たの?」
「…っ、」
雲雀は淡々と言葉を返す。
「ひ、雲雀さん、」
見かねてツナが口を挟むも、片手と一瞥に制されてしまう。
「君のダイナマイトは、子供の遊びだ」
理解っている。まるで歯が立たなかった。自分すら守れないくせに、誰が守れるというのか。獄寺は歯を食いしばる。
「…相手になってあげるよ、自分の無力を思い知るのが一番いい」
雲雀は余裕の笑みを浮かべ、
「…やってやらぁ、」
獄寺は、応えた。

……………

雲雀のトンファーを喰らうのはもう何度目か。かわしたはずがかわしきれない。しかも雲雀の一撃は本気じゃないし、くらっても倒れないところを狙っている。
「…手加減、しやがって」
「咬み殺して欲しいの?」
雲雀は楽しそうにクルクルとトンファーを回した。
「ダイナマイトを出せなきゃ、君はただの無機物と同じ」
"子供だって叩き込める"
雲雀の言葉が一々癇に障る。
「…負け、ねぇ…」
雲雀が呆れたように溜め息をつく。
「そういうところは変わらないね、…アイツに見習わせてやりたいよ」
「何、言って…」
「これで終わりだ」
トンファーの一振り。鈍い衝撃と胃の中が逆流する不快感。喉が熱く。
「獄寺くんっ!」
ツナの声と走り寄ってくる足音。
「…まだ、…」
呟いて獄寺は意識を落とした。

……………

揺らぐ視界。耳をくすぐる話し声。
「…ぁ…」
喉がチリチリと痛んだ。
「起きたの、」
傍らに座る雲雀は手にした本を閉じた。その何気ない態度に負けた自分を思い出して悔しさがこみ上げてくる。獄寺はそれをぐっと堪えた…
「…ねぇ、沢田とデキてるの?」
…が、一瞬で四散した。
「ばっ、てめっ、」
獄寺の反応に雲雀は笑う。
「やたらと沢田が心配してたからね」
楽しそうに笑う雲雀に腹立って、獄寺も言う。
「俺はテメーと山本のこと、知ってんだからなっ」
(←山本のノロケ被害により)すると雲雀は途端に不機嫌な表情になり、トンファーを出した。

「―――…それ、10年前の僕に言ったら咬み殺すから」

どうやら初耳らしい。獄寺はその様子ににやりと笑った。雲雀は表情を変えぬままトンファーをしまった。
「それで、何か見えたわけ?」
"変化ないなら今度は咬み殺すよ"と付け加える。獄寺は手当ての済んだ手を眺める。
「…俺は、」
10年前には見えてなかったことがあった。
「守る、だなんて」
何だかんだ言っても、まだ自分のことで精一杯で。ツナは守ってもらうことを望んでいたわけではないのに。誰かも自分も守れる力を持ってもいないのに。
「昔の君は、こんなに脆く見えていたんだね」
雲雀の言葉に、息が詰まった。
「沢田に対して過保護な所は相変わらず咬み殺したいところだけど、今の君は別に嫌いじゃないよ」
"じゃあ、昔の俺は何だったんだよ"と獄寺が内心毒つくと、それを見透かしたように。
「昔の君は眼中になかっただけだ」
「余計腹立つじゃねーかっ!!」
獄寺は反射的に噛みついた。だがすぐに引いて、戸惑った表情で続ける。
「――けど、俺も別にお前がそんなに嫌な奴だって思ってねぇよ」
すると雲雀は悠然と笑って、獄寺の顎に手を添える。
「…今よりも威勢が良くて可愛いね、」
「Σうわぁぁっ!!」
獄寺の反応に雲雀は満足し、席を立つ。
「沢田を呼んできてあげるよ」
にやりと悪戯な笑みに獄寺は少し恐怖を覚えた。




オマケ
「…つか、お前こんな華奢だったっけ?」
「…
煩い、咬み殺すよ?」


あまりの小ささ(雲雀:15)に獄寺(24)は感動していた(爆)
こんな感じでキリリク消化していきます(笑)

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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