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#01 「物煩い」

緋色の花が散る。

足元一面に、花弁が散る。

その上に散った命。

それはたった一人の兄だった。


早く目を覚ます時は、いつも雨が降っている。
静かな雨音を確かめて、今度は頭からすっぽりと布団を被る。
そして再び眠りに堕ちる。

雨の日は、何だか好きになれない。

脩二がここで生活を始めて、どれくらい経つだろう。その中で、時折不意にこの夢をみる。兄が死んだあの日の夢。その度に脩二は自分の目的を再認識する。
自分が何故此処にいるのか。
何のためにやってきたのか。
そう、自分は。

コンコン

控え目なノックの音。それは眠りに堕ちようとする意識を、緩やかに掬い上げる。
「…篤尋?」
こういう気遣いをするのは篤尋くらいだ。…なんて口に出せば馨至にどやされそうだが。
「ごめん、起こした?」
「…今、何時?」
「まだ夜明け前だよ、」
"もっとも雨で分かりづらいけど"
そう続けて篤尋が笑った気配がした。
「何?」
「水、置きに来ただけ」
雨のことで脩二を気にかけてくれたのだろう。たまにその気遣いを不思議に思うことがあるが、脩二は違うことを口にした。
「…そうじゃなくて、篤、何かあった?」
脩二は沈んだ体を起こした。
「―――…別に、何も」
篤尋はいつものように穏やかに笑って、部屋を出ていった。


それから四時間後。リビングにやってきた脩二は、ソファに座る見慣れた背中に気付いた。
「冴えない面だな、大丈夫か?」
馨至の言葉に脩二は軽く応えて反対のソファに座った。
そこへ、少女の背中を押しながら篤尋が入って来た。そしてお誕生日席を勧めて座らせると、すぐにお茶を入れ始めた。少女は部屋の中を何度も見回して、うつ向いたり指を組んでみたりとなかなか落ち着かない。そこへ篤尋が戻り、それぞれの前にお茶を置いた。そして自分は少女の左隣(馨至の横)に座った。
「…さて、では話を伺いましょうか」
少女は篤尋を見、戸惑いながら口を開いた。
「…助けて欲しいのよ、友達を」
それから少女はことの事情をぽつりぽつりと喋りだした。

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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