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no lose

一際目立つ燃えるような赤髪。それを千切るように短く切ったあの日、あの瞬間から失うものは何も無くなった。


『no lose』


テーブルに足を載せ、頭の後ろで指をくんで目を閉じる。雨音が柔らかく鼓膜をくすぐる。限りなく無音に近い、心地よい空間。そこへ軽いノックの音がする。

「―――…退屈そうだね」

人目を引く赤髪。通る声。無意識でありながら隙のない仕種と態度。唯一気兼ねなく酒の飲める相手の訪問をキングは歓迎した。
「いや?そうでも、」
「じゃあ、あたしの勘違いか…」
女は後ろ手にドアを閉め、キングのもとへ歩いてきた。
「お嬢様の呼び出しだって聞いてたから、不快になって戻ってるかと思った」
女は少し意地悪く笑い、鋭い一言にキングは苦笑した。
「別に、そこまでガキじゃねぇさ、俺だって」
「じゃあ、コレは不要だったか?」
取り出した瓶に、キングははっと表情を変える。

「…気が利くねぇ、」

にやりと笑みを浮かべてキングは応えると、直ぐにグラスを取りに行く。その間に女は腰掛け、瓶の封を切った。
「…で、土産話はねーの?フリクリ」
キングはフリクリが追加要請でトランプとやりあったのを知っている。しかも報告が正しいなら――恐らく正しいのだろうが――幹部のJとQが参戦したと言う話だ。もしかしたら一戦交えたのかもしれない。
「残念だが、お前の望むような話はないよ…ただ、」
「ただ?」
「…それなりの腕を持ってるのは確かだね」
フリクリは目の前のグラスに酒を注いで、複雑な表情をした。
「やっぱり何かあったんじゃねぇか」
「あったのはあたしじゃない、レイヴンだ」
話題としては珍しい名前に、キングはグラスを取って続きを促す。

「――…奴の鉱石の右腕が奪われた」

キングは一瞬言葉に詰まった。あの負けず嫌いでプライドの高いレイヴンが、よりによって鉱石の一部を持って行かれるとは。
「で、所有権は?」
「まだ此方にある…腕は欠けたままだ」
鉱石は六つのパーツで区分される。頭・右腕・左腕・右脚・左脚、そして心。それぞれに要の石がある。これを奪われ所有権が鉱石の主から移ると、欠けた箇所のパーツは戻るが奪った者の意思で動く。また強さは所有者の意志の強さが反映する。これを厄介と言わずしてなんと言おう。
「…面倒だな、色んな意味で」
こんな屈辱を与えられのだ、レイヴンが荒れていてもおかしくはない。
「それが、外見は殊の外冷静だ」
その場にレイヴンを落ち着けるリンが居たから、と言うのもあるのだろうが。そう加えて、フリクリは酒を飲む。
「腸煮えくり返ってんだろうけどな」
キングの言葉にフリクリは苦笑した。
「奴にはいい経験かもしれないよ、」
身内では確実に強者に入るレイヴンだ。それが慢心に繋がらないとも限らない。今回にしても、少なからずレイヴンに隙があったのは事実なのだ。フリクリはグラスを揺すりながら目を細める。

「失いたくないものがある奴は強くなる」

キングはフリクリを見遣り、また酒を流し込む。
「…それは経験則、か?」
キングの言葉にフリクリは一瞬手を止めた。溶けた氷が小さな音を立てる。
「…少なくとも、俺にはそう見えたぜ?」

一際目立つ燃えるような赤髪。それを千切るように短く切ったあの日、あの瞬間から失うものは何も無くなった…ように、見えた。
「まぁ、お前が弱いとは思わねぇが」
キングは瓶に手を伸ばして、空になったグラスに再び酒を注ぐ。
「―――なら、あたしもまだ…捨てきれてないんだろうね」
フリクリは呟いて、酒を飲み干した。キングはフリクリのグラスにも酒を注いで瓶を置く。

「ん、」

そしてグラスを持ち上げて促す。フリクリは笑ってそのグラスに自分のグラスを合わせた。

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登場人物紹介くらい、作った方が…

いいの、かな?いきなり名前出てきてもわからないよなぁ…; でも、登場人物紹介作って、一つの作品と見なしたら、カテゴリ作ったほうがいいのかなぁ?とかなんとか大袈裟になりそうだ…。
ってか、早くボーダーの続き上げろって話だよなぁ…(苦笑)
  • 水城夕楼
  • 2007/06/03(Sun)12:32:56
  • 編集

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
33
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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