monocube
monoには秘めたイロがある。
見えないだけでそこに在る。
数え切れないそれは、やがて絡まり色彩(イロ)になる。
さぁ、箱をあけてごらん。
箱庭(ナカ)は昏(クラ)く底なしの闇色(モノクロ)。
深い闇に融けたらいいのに。
日々の戯言寄せ集め。
当サイトは作者の気まぐれにより、自由気ままに書きなぐった不親切極まりない戯言の箱庭です。
no name
その日は、夕方から雨が降り出したのだと記憶している。
『no name』
「…この分では、宵まで止みそうにありませんね」
少女は窓硝子に手を添えて呟く。
「それなら尚更、貴女が引き留めてくれて良かった。雨はあまり好きじゃないんでね」
少女はその声に振り返って声の主を見る。キングを呼び出したのは少女の方だった。お茶のお誘いという名目でありながら、その裏に何かがあることはキングにも理解できている。だがその理由を自分から突き止めようとはしなかった。いづれ少女が語り出す、そうキングは確信していた。窓際に立つ少女視線の先でキングは、テーブルの上の豪奢な煙草ケースに手を伸ばす。
「…っと、失敬失敬」
ケースの蓋を開けたところで、少女の視線を受け止める。そしてその手で蓋を閉じ手を引く。
「J・Q両名が現れたとの報告です」
キングは帽子を目深にかぶり直す。
「それで、この招待なわけですか」
キングは口元を歪ませて少女に言う。
「行動の牽制?抑止?…別に仲間全滅になんてしやしませんよ」
少女はまた椅子に腰掛けて、チラと視線を上げたキングへ綺麗な笑みを向ける。
「私は貴方に対してそんなことは思っていませんわ。それに、一番強い貴方でも他の主たちをまとめて相手にするのは大変でしょうし」
キングはそんな光景を想像して心底面倒くさいと思った。
「…面倒はお嫌いでしょう?キング」
「えぇ、お嫌いですね」
キングは少女の見透かした言葉に苦笑した。
「それで、八月と十二月で処理を?」
少女は冷めかけた紅茶を口にする。
「ナンバーズ二人相手では心許ないのが正直なところですね」
「…じゃあ、一月を?」
一月の君は八月とも十二月とも面識がある。追加任務なら力を貸してくれるはずだ。
「えぇ、彼女に追加要請をお願いしました」
キングは酒飲み相手でもある赤髪を思い浮かべ、妥当な判断だと目の前の珈琲に手をつけた。砂糖の入れ忘れた珈琲は予想より苦い気がした。
「―――…先程のお話ですけれど、」
「あぁ、俺の裏切りについてですか?」
率直なキングの答えに、今度は少女が苦笑した。
「私に貴方を手放す気はありませんの」
「これは熱烈な告白だ、」
キングはおどけて笑う。少女はそれを気にせずに続ける。
「キング、貴方は私の切り札…いえ、ワイルドカードと言った方が正しいのかもしれませんね」
「…それは、期待されてるって意味合いで?」
すると少女は首を振ってまた真っ直ぐにキングを見た。
「貴方はいつも通りで良いのです。どう出すかは、プレーヤーの私が決めること」
「――――…成程、」
カードに意思は必要ないということか、そう心の中で付け足してキングは立ち上がる。
「では、もし仮に俺が悪いカードだとしたら?」
「その時には責任を持って排除させていただきますわ。…"K"として」
向けられる完璧な笑みに、
「それでこそ貴女だ、クォーツ」
キングは優雅に一礼した。そして少女の部屋を後にした。
「…すべては私の意思のままに、」
その姿を見送って、少女は小さく呟いた。
『no name』
「…この分では、宵まで止みそうにありませんね」
少女は窓硝子に手を添えて呟く。
「それなら尚更、貴女が引き留めてくれて良かった。雨はあまり好きじゃないんでね」
少女はその声に振り返って声の主を見る。キングを呼び出したのは少女の方だった。お茶のお誘いという名目でありながら、その裏に何かがあることはキングにも理解できている。だがその理由を自分から突き止めようとはしなかった。いづれ少女が語り出す、そうキングは確信していた。窓際に立つ少女視線の先でキングは、テーブルの上の豪奢な煙草ケースに手を伸ばす。
「…っと、失敬失敬」
ケースの蓋を開けたところで、少女の視線を受け止める。そしてその手で蓋を閉じ手を引く。
「J・Q両名が現れたとの報告です」
キングは帽子を目深にかぶり直す。
「それで、この招待なわけですか」
キングは口元を歪ませて少女に言う。
「行動の牽制?抑止?…別に仲間全滅になんてしやしませんよ」
少女はまた椅子に腰掛けて、チラと視線を上げたキングへ綺麗な笑みを向ける。
「私は貴方に対してそんなことは思っていませんわ。それに、一番強い貴方でも他の主たちをまとめて相手にするのは大変でしょうし」
キングはそんな光景を想像して心底面倒くさいと思った。
「…面倒はお嫌いでしょう?キング」
「えぇ、お嫌いですね」
キングは少女の見透かした言葉に苦笑した。
「それで、八月と十二月で処理を?」
少女は冷めかけた紅茶を口にする。
「ナンバーズ二人相手では心許ないのが正直なところですね」
「…じゃあ、一月を?」
一月の君は八月とも十二月とも面識がある。追加任務なら力を貸してくれるはずだ。
「えぇ、彼女に追加要請をお願いしました」
キングは酒飲み相手でもある赤髪を思い浮かべ、妥当な判断だと目の前の珈琲に手をつけた。砂糖の入れ忘れた珈琲は予想より苦い気がした。
「―――…先程のお話ですけれど、」
「あぁ、俺の裏切りについてですか?」
率直なキングの答えに、今度は少女が苦笑した。
「私に貴方を手放す気はありませんの」
「これは熱烈な告白だ、」
キングはおどけて笑う。少女はそれを気にせずに続ける。
「キング、貴方は私の切り札…いえ、ワイルドカードと言った方が正しいのかもしれませんね」
「…それは、期待されてるって意味合いで?」
すると少女は首を振ってまた真っ直ぐにキングを見た。
「貴方はいつも通りで良いのです。どう出すかは、プレーヤーの私が決めること」
「――――…成程、」
カードに意思は必要ないということか、そう心の中で付け足してキングは立ち上がる。
「では、もし仮に俺が悪いカードだとしたら?」
「その時には責任を持って排除させていただきますわ。…"K"として」
向けられる完璧な笑みに、
「それでこそ貴女だ、クォーツ」
キングは優雅に一礼した。そして少女の部屋を後にした。
「…すべては私の意思のままに、」
その姿を見送って、少女は小さく呟いた。
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プロフィール
HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。