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no pray

何も、願わない。
何も、望まない。

願うだけなら、
望むだけなら、
誰だってできる。


『no pray』


フリクリは刀をしまう。カチンと小さな音を聞いて、ゆっくりと静かに息を吐いた。男はそんな後ろ姿を見遣ってから、短い不揃いな髪に触れる。色は燃えるような赤色(アカ)。
「ん…」
その指がくすぐったいとばかりに、笑ったフリクリが振り返る。
「…随分、短くなったんだな」
一見冷たいようにも取れる声。だが長年付き合っているフリクリは、相棒が常に率直な物言いをすることを知っている。男は怒ってもいなければ、興味がないわけでもない。
「これくらいでいい、長いのは邪魔になるしね」
「以前に言っていたことと矛盾しているな」
髪を長くしていた頃のフリクリはこんなことを口にしなかった。
男の言葉にまたフリクリは笑って、「そうだったか?」ととぼけた。その反応に男は「うむ」と応えただけだった。

願掛けなんて、今時流行らないだろうか。

「…お前か」
ノックをしたが返答はなく、控えめにドアを開けるとその一言が飛んできた。キングは声の主に苦笑してゆっくりと部屋に入った。
「珍しいな、姿見せてるなんて」
通常鉱石たちはあまり姿を見せない。気配は常に主の傍に、呼べば姿を見せる。男はフリクリの傍に立っていた。人の気配がすればすぐに反応するフリクリだ。キングは珍しく熟睡しているフリクリを見、向かいのソファに腰掛けた。
「何の用だ」
普段と変わらない声音に、やや咎めるような気配を感じ取る。
「別に取って喰おうってわけじゃない」
足を組んで背もたれに体を沈める。キングはすっと目を細める。
「フリクリとは間違いなく酒飲み友達だ」
「妥当だ、こいつはお前の手に余る」
歯に衣着せぬ物言いに、ふっとキングが笑う。その目の鋭さを失わないまま。
「鉱石の中で一二を争う気難しいお前から、そんな発言が出るとはな」
男は沈黙してキングを見返す。
「…敵にはならんよ、フリクリは気に入ってる」
「"あれ"を知っていながら、か?」
男の表情は変わらない。動じていたとしても、きっと分かるのはフリクリと直感の強いあの少女くらいだろう。

「くだらない質問だね、」

キングはニヤリと笑った。
「そうか、」
話は終わり。奇遇にも向かい合った双方がそう感じた。キングは普段より時間をかけて立ち上がり、男はゆっくりと目を伏せる。だが眠ってはいない。キングがどう動いても対応できるように、意識は細かく張り巡らされている。信用がないものだ、とキングは溜め息。そして傍らで、殊の外この男を好いているらしい娘たちの残念がる気配に苦笑しながら、キングは部屋を後にした。訪ねた理由は既に忘れていた。

フリクリが愛した男はトランプだった。知らなかったわけでもなければ、気づかなかったわけでもない。それでもいずれこの日がやってくるなら、それまでは傍にいようとただそう思ったから。どちらとも口にはしなかった。「離れよう」とも「やめよう」とも。
だから、あの瞬間に失うものはなくなった。髪を短くすることに何ら抵抗はなかった。ただ自分で掴んだ長い髪が上手く切れずに苦労した。不揃いな髪の毛先が焦げているのを男は目聡く見つけて、指で触れる。そして少し残念そうに、

「…燃えてしまったのか、綺麗な赤色(アカ)なのに」

と呟いた。
それが最後の言葉。フリクリは優しいこの男らしいと思った。

「…ん…」
フリクリは軽く頭を振る。軽く横になったつもりが、本当に寝てしまっていたらしい。ゆっくりと身体を起こす。
「…ガーネット、」
傍らには、ガーネットが在た。
「よく寝ていたな、」
その言葉に苦笑する。そして空気の変化を感じて、フリクリは目の前のソファを見た。
「…誰か、居たのか?」
フリクリの言葉に。
「…いや、」
ガーネットは答えた。
「―――…あの日の夢を見た」
その一言に、ガーネットの空気が僅かに揺れた気がした。フリクリは笑って、背もたれに寄りかかった。
「まだまだ私も、覚悟が足らない」
「…別に守るものができただけだろう」
ガーネットの言葉はいつもフリクリのまとまらない思考を言い当てる。
「…弱くなったな、」
苦笑してため息。
「強くなればいい」
いとも容易く、ガーネットは言う。そんな簡単ではないのだと言い返したくなるが、ガーネットの言っていることは的を射ている。…悔しいが。返答に困っていると、何も言わず姿が消えた。だが気配はある、傍にいる。

「それこそ、気の遠い…」

フリクリは小さく呟いて、ガーネットに見えないようにため息を吐いた。

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贔屓にしているフリクリ姐さん

この人の過去は絶対に書きたいものの一つ。
ガーネットはフリクリの保護者みたいな、兄貴みたいな(笑)
関係ないけど、ガーネットはめちゃ身長あってちょっとガッシリめです(爆)
  • 水城夕楼
  • 2007/07/26(Thu)21:01:59
  • 編集

このシリーズも、

いい加減、立ち上げるか…
このままで行くとどんどん収集がつかなくなっていく気がする。でも処理する体力が追いつかない…
まぁ、いつか…いつかね、(遠い目)
  • 水城夕楼
  • 2007/07/27(Fri)19:28:13
  • 編集

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
33
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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