monocube
monoには秘めたイロがある。
見えないだけでそこに在る。
数え切れないそれは、やがて絡まり色彩(イロ)になる。
さぁ、箱をあけてごらん。
箱庭(ナカ)は昏(クラ)く底なしの闇色(モノクロ)。
深い闇に融けたらいいのに。
日々の戯言寄せ集め。
当サイトは作者の気まぐれにより、自由気ままに書きなぐった不親切極まりない戯言の箱庭です。
no title
男は煙草を咥えながら、ゆっくりと顔を上げた。
それは暗闇に、はっとするほど鮮やかに映る白。
『no title』
静かな夜。
男はベンチに浅く掛けながらぼんやりしていた。
空は暗幕で覆ったように、月はおろか星すらも見えない。
どうせ空を見上げたりはしないのだから、月が出ていようがいまいが大した問題ではない。
だが、男はそんな夜が好きだった。
「――――…相変わらず、呆けた顔をしておる」
慇懃無礼な声に、男は小さく笑う。
相変わらずな自分と同じ、相変わらずの性格だ。
もっとも、男としては「それ」を好意的に受け取っているので特に気にしない。
それより、声をかけられることはあってもかけることの少ない相手が、自分に対しては口を開くことが面白い。
こういうのは、嬉しい、とでもいうのだろうか。
そんなことはないと理解っているが、少し特別になった気がする。
「…アンタも相変わらずじゃねぇか」
男は少し顔を上げて、相手を見遣る。
「なぁ、狐よ」
暗闇に浮き彫りになる白。腰までとどく髪を結うでもなく無造作に風に遊ばす。肌の色も透き通るように白い。その陶器のような完全さに嗜虐心がないと言えば嘘になるが、男にはその勇気もなかった。
「…鉱石も連れず、何をやっておるのだ」
狐のそれは咎めると言うよりは、訝しがると言った方が正しい。大抵の主ならば鉱石を持ち歩くのが常だ。鉱石は言わば主の手であり足であり、また剣でも楯でもある。それを手放すことが何を示すか、男が分からぬはずはない。男は上げた視線をまた地面に落とした。
「理由はねぇさ。行動に理由付けすんのは嫌いだ、」
すると狐は僅かに瞠目して、
「何とも変わり者の考えることよ」
くつくつと喉を震わせて笑った。そしてついと目を細めて男を見た。
「―――…煩わしいなら、素直に言えばよい。お前は嘘が下手だ」
男は苦笑して、煙草を取り出す。溜め息と共に軽く白煙を吐き出すと、狐の見えないはずの顰めっ面が見えた気がした。男の思い違いでなければ、狐は煙草の匂いが嫌いだ。そんなことを口にしようもんなら、「知ってて吸うお前の方が質が悪いわ」とでも言い返すだろうが。
「――――…その匂いは、お前の匂いだな」
ぽつりと呟くような言葉。
「それはしつこく残るから好かん」
「…俺を思い出すか?」
それを「お前の匂い」だと言うなら。それを感じる度に、脳裏によぎるのだろうか。
それはただ単に興味があったからだ。言うなれば何にも揺らぐ姿さえ見せない狐に対する好奇心。何の意味も含みもない、只の問いに過ぎない。
「…想ってほしいのか?」
動いた気配。髪が微かに音を立てて触れる。
男は煙草を咥えながら、ゆっくりと顔を上げた。
それは暗闇に、はっとするほど鮮やかに映る白。その手が伸びて、冷たくなった男の頬に触れる。
男は肯定も否定もしなかった。ただぼんやりと狐を見上げる。
「…それでも、煙草の匂いは嫌いだ」
整った指が男の咥えた煙草を攫い、気の抜けたように開いた口をその口唇で塞いだ。
「――――…タチの悪さなら、アンタも大して変わらないな」
口唇が離れて、男が小さく悪態を吐く。狐はその反応に笑って、男から離れた。
顔色一つ変えず男を見下ろす狐を見て、不覚にも、
『綺麗だ』
と思ってしまった。
男は俯きながら、触れた口唇を撫で苦笑した。
それは暗闇に、はっとするほど鮮やかに映る白。
『no title』
静かな夜。
男はベンチに浅く掛けながらぼんやりしていた。
空は暗幕で覆ったように、月はおろか星すらも見えない。
どうせ空を見上げたりはしないのだから、月が出ていようがいまいが大した問題ではない。
だが、男はそんな夜が好きだった。
「――――…相変わらず、呆けた顔をしておる」
慇懃無礼な声に、男は小さく笑う。
相変わらずな自分と同じ、相変わらずの性格だ。
もっとも、男としては「それ」を好意的に受け取っているので特に気にしない。
それより、声をかけられることはあってもかけることの少ない相手が、自分に対しては口を開くことが面白い。
こういうのは、嬉しい、とでもいうのだろうか。
そんなことはないと理解っているが、少し特別になった気がする。
「…アンタも相変わらずじゃねぇか」
男は少し顔を上げて、相手を見遣る。
「なぁ、狐よ」
暗闇に浮き彫りになる白。腰までとどく髪を結うでもなく無造作に風に遊ばす。肌の色も透き通るように白い。その陶器のような完全さに嗜虐心がないと言えば嘘になるが、男にはその勇気もなかった。
「…鉱石も連れず、何をやっておるのだ」
狐のそれは咎めると言うよりは、訝しがると言った方が正しい。大抵の主ならば鉱石を持ち歩くのが常だ。鉱石は言わば主の手であり足であり、また剣でも楯でもある。それを手放すことが何を示すか、男が分からぬはずはない。男は上げた視線をまた地面に落とした。
「理由はねぇさ。行動に理由付けすんのは嫌いだ、」
すると狐は僅かに瞠目して、
「何とも変わり者の考えることよ」
くつくつと喉を震わせて笑った。そしてついと目を細めて男を見た。
「―――…煩わしいなら、素直に言えばよい。お前は嘘が下手だ」
男は苦笑して、煙草を取り出す。溜め息と共に軽く白煙を吐き出すと、狐の見えないはずの顰めっ面が見えた気がした。男の思い違いでなければ、狐は煙草の匂いが嫌いだ。そんなことを口にしようもんなら、「知ってて吸うお前の方が質が悪いわ」とでも言い返すだろうが。
「――――…その匂いは、お前の匂いだな」
ぽつりと呟くような言葉。
「それはしつこく残るから好かん」
「…俺を思い出すか?」
それを「お前の匂い」だと言うなら。それを感じる度に、脳裏によぎるのだろうか。
それはただ単に興味があったからだ。言うなれば何にも揺らぐ姿さえ見せない狐に対する好奇心。何の意味も含みもない、只の問いに過ぎない。
「…想ってほしいのか?」
動いた気配。髪が微かに音を立てて触れる。
男は煙草を咥えながら、ゆっくりと顔を上げた。
それは暗闇に、はっとするほど鮮やかに映る白。その手が伸びて、冷たくなった男の頬に触れる。
男は肯定も否定もしなかった。ただぼんやりと狐を見上げる。
「…それでも、煙草の匂いは嫌いだ」
整った指が男の咥えた煙草を攫い、気の抜けたように開いた口をその口唇で塞いだ。
「――――…タチの悪さなら、アンタも大して変わらないな」
口唇が離れて、男が小さく悪態を吐く。狐はその反応に笑って、男から離れた。
顔色一つ変えず男を見下ろす狐を見て、不覚にも、
『綺麗だ』
と思ってしまった。
男は俯きながら、触れた口唇を撫で苦笑した。
PR
この記事にコメントする
端書き端書き
久々に携帯からあげた戯言です(笑)no titleなのはまだちゃんと固まってないから。
「そんなの固めてから載せやがれっ!」
と思ってもいいから、言わないでください。
キャラを固めるという意味も兼ねて試作的に書いてみました。狐は相手として作られた即興キャラです(掴みたかったのは男の方)。
…でも、なかなか楽しい…(笑)
「そんなの固めてから載せやがれっ!」
と思ってもいいから、言わないでください。
キャラを固めるという意味も兼ねて試作的に書いてみました。狐は相手として作られた即興キャラです(掴みたかったのは男の方)。
…でも、なかなか楽しい…(笑)
- 水城夕楼
- 2007/05/23(Wed)08:51:45
- 編集
この記事へのトラックバック
- この記事にトラックバックする
カレンダー
カテゴリー
最新記事
(02/10)
(05/06)
(03/21)
(02/23)
(01/13)
プロフィール
HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。