monocube
monoには秘めたイロがある。
見えないだけでそこに在る。
数え切れないそれは、やがて絡まり色彩(イロ)になる。
さぁ、箱をあけてごらん。
箱庭(ナカ)は昏(クラ)く底なしの闇色(モノクロ)。
深い闇に融けたらいいのに。
日々の戯言寄せ集め。
当サイトは作者の気まぐれにより、自由気ままに書きなぐった不親切極まりない戯言の箱庭です。
ニッケルキリ番「8018」のお題
またまた、鈴雅さんより、キリリクです(笑)
順番無視ってのは置いといて…
順番無視ってのは置いといて…
「…泣くなよ、雲雀…」
誰よりも優しいその人は。
「泣いてるのは君だろ?」
誰よりも泣き虫で。
誰よりも泣くことを知らない人。
『ただ切に幸せを願う人』
部屋に戻るとソファを占領する「それ」に、小さくため息をついた。ぐったりとでかい身体をソファに沈めている。身じろぎ一つしないが、寝息は聞こえない。眠ってはいないのだろう。
「…何やってるの、」
ソファに近づいて素っ気なく問うと、山本は閉じていた瞼をゆっくりと上げた。
「…ぁ、おかえり」
起き上がろうとしたが、力が出ないのか少し上体を起こしてまたすぐにソファに沈んだ。
「徹夜した…」
雲雀はネクタイを緩めて引き抜いて、ジャケットを脱いだ。
「昨日の仕事は夜じゃなかっただろ」
「報告書終わらなくて、寝てねーの」
その言葉に雲雀はシャツを脱ぎかけたところで手を止めて山本に視線を向ける。
「ムラムラするからヤメテ~」
雲雀を見る山本にシャツを投げつけた。
「報告書くらいで徹夜なんて馬鹿じゃないの」
呆れ顔で言うと、キッチンに入り冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。
「雲雀みたいに得意じゃねーんだよ、俺は」
「あぁ、キミ馬鹿だもんね」
拗ねたような声に雲雀は容赦なく返事を返す。すると返ってきたのは沈黙。雲雀は一瞬手を止めたが、すぐにミネラルウォーターをグラスに注いだ。部屋は注ぎ入れる水音が聞こえるくらいに静かで。
「自分が何をしたのかも分かってる」
ぽつりと。
「―――書くことも、書かなきゃいけないことも分かってる、」
それはまるで。
「反芻する度に、たくさん殺した顔も死んでいった顔も思い出す」
独り言のように。
「苦しいって、死にたくないって顔を、思い出す」
雲雀はグラスのミネラルウォーターを一口嚥下した。
「…当然だろ、僕らがしているのは綺麗なことじゃない」
それが嫌だと言うなら、此処を離れるほかない。此処に居る、それはその代償なのだから。雲雀は山本がそれを理解できないほど馬鹿だとは思っていない。
「…でも、俺の居ないところでみんなが傷つくのは嫌なんだ」
くしゃりと山本が頭を掻く。
「…って、矛盾してんだけど」
「まぁ、甘チャンなキミらしいけどね」
山本の苦笑に、雲雀はキッチンを出て山本に近付く。
「ツナもこんな気持ちだったのかな」
雲雀は俯いて答えなかった。
「…泣くなよ、雲雀…」
「泣いてるのはキミだろ?」
雲雀はやはり呆れた表情で山本を見、小さくため息をつく。
「僕らは人間の上に立ってるんだよ(幹部と言うだけで何千何万の上に)、それに今のこの場所は敵の死の上に立ってることにもなる」
雲雀の言葉を聞きながら、ソファに倒れたまま山本は腕で顔を隠す。
(…甘い、のは優しいからで)
その傍らに雲雀は膝をついた。その気配を感じ取って、山本が少しだけ腕を退ける。その眦に雲雀はキスを落とした。
「君は、泣くことを覚えた方がいい」
ぽつりと呟く雲雀を呆然と山本は見上げる。
「もう、張り詰める理由はないでしょ?」
雲雀の言葉に、山本の脳裏を様々なことが過ぎった。色んなことを思い出しているのだと雲雀は思った。今まで深く立ち入ったことはなかったが、母親が死んでいることは知っているし、堪えてきたことはたくさんあったのだろう。一つに執着することのない性格もそれに起因しているのかもしれない。周りに気を使ったり我慢したり。それに慣れすぎているように思えて。
「…少なくとも僕の前では」
雲雀の言葉はいつでも容赦なく率直だ。山本はその言葉に、触れた指先に安堵する。気を抜いたら泣き笑いになった。
それを見て雲雀は山本の額に優しいキスをした。
「雲雀、お風呂入ろ」
雲雀は仕方ない、とでも言うように溜め息を吐いた。
それから二人は一緒にお風呂に入った。雲雀は風呂が狭いとだけ文句を言い、それ以外は黙認した。落ち込んでいるのを刺激したら厄介だとよく理解っていたからだが。雲雀は山本を抱きしめたまま眠った。人の温もりが優しいことを、雲雀は山本に教えてもらったから。だから、そうするべきだと思った。
「…キミは、それでいいよ」
些細なことで心を痛めて、落ち込んで。そしてその度に泣けばいい。死して泣くことのできなかった誰かの為に。
「…それで」
抱きしめる腕に少しだけ力を込めて、雲雀はゆっくりと目を伏せた。
誰よりも優しいその人は。
「泣いてるのは君だろ?」
誰よりも泣き虫で。
誰よりも泣くことを知らない人。
『ただ切に幸せを願う人』
部屋に戻るとソファを占領する「それ」に、小さくため息をついた。ぐったりとでかい身体をソファに沈めている。身じろぎ一つしないが、寝息は聞こえない。眠ってはいないのだろう。
「…何やってるの、」
ソファに近づいて素っ気なく問うと、山本は閉じていた瞼をゆっくりと上げた。
「…ぁ、おかえり」
起き上がろうとしたが、力が出ないのか少し上体を起こしてまたすぐにソファに沈んだ。
「徹夜した…」
雲雀はネクタイを緩めて引き抜いて、ジャケットを脱いだ。
「昨日の仕事は夜じゃなかっただろ」
「報告書終わらなくて、寝てねーの」
その言葉に雲雀はシャツを脱ぎかけたところで手を止めて山本に視線を向ける。
「ムラムラするからヤメテ~」
雲雀を見る山本にシャツを投げつけた。
「報告書くらいで徹夜なんて馬鹿じゃないの」
呆れ顔で言うと、キッチンに入り冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。
「雲雀みたいに得意じゃねーんだよ、俺は」
「あぁ、キミ馬鹿だもんね」
拗ねたような声に雲雀は容赦なく返事を返す。すると返ってきたのは沈黙。雲雀は一瞬手を止めたが、すぐにミネラルウォーターをグラスに注いだ。部屋は注ぎ入れる水音が聞こえるくらいに静かで。
「自分が何をしたのかも分かってる」
ぽつりと。
「―――書くことも、書かなきゃいけないことも分かってる、」
それはまるで。
「反芻する度に、たくさん殺した顔も死んでいった顔も思い出す」
独り言のように。
「苦しいって、死にたくないって顔を、思い出す」
雲雀はグラスのミネラルウォーターを一口嚥下した。
「…当然だろ、僕らがしているのは綺麗なことじゃない」
それが嫌だと言うなら、此処を離れるほかない。此処に居る、それはその代償なのだから。雲雀は山本がそれを理解できないほど馬鹿だとは思っていない。
「…でも、俺の居ないところでみんなが傷つくのは嫌なんだ」
くしゃりと山本が頭を掻く。
「…って、矛盾してんだけど」
「まぁ、甘チャンなキミらしいけどね」
山本の苦笑に、雲雀はキッチンを出て山本に近付く。
「ツナもこんな気持ちだったのかな」
雲雀は俯いて答えなかった。
「…泣くなよ、雲雀…」
「泣いてるのはキミだろ?」
雲雀はやはり呆れた表情で山本を見、小さくため息をつく。
「僕らは人間の上に立ってるんだよ(幹部と言うだけで何千何万の上に)、それに今のこの場所は敵の死の上に立ってることにもなる」
雲雀の言葉を聞きながら、ソファに倒れたまま山本は腕で顔を隠す。
(…甘い、のは優しいからで)
その傍らに雲雀は膝をついた。その気配を感じ取って、山本が少しだけ腕を退ける。その眦に雲雀はキスを落とした。
「君は、泣くことを覚えた方がいい」
ぽつりと呟く雲雀を呆然と山本は見上げる。
「もう、張り詰める理由はないでしょ?」
雲雀の言葉に、山本の脳裏を様々なことが過ぎった。色んなことを思い出しているのだと雲雀は思った。今まで深く立ち入ったことはなかったが、母親が死んでいることは知っているし、堪えてきたことはたくさんあったのだろう。一つに執着することのない性格もそれに起因しているのかもしれない。周りに気を使ったり我慢したり。それに慣れすぎているように思えて。
「…少なくとも僕の前では」
雲雀の言葉はいつでも容赦なく率直だ。山本はその言葉に、触れた指先に安堵する。気を抜いたら泣き笑いになった。
それを見て雲雀は山本の額に優しいキスをした。
「雲雀、お風呂入ろ」
雲雀は仕方ない、とでも言うように溜め息を吐いた。
それから二人は一緒にお風呂に入った。雲雀は風呂が狭いとだけ文句を言い、それ以外は黙認した。落ち込んでいるのを刺激したら厄介だとよく理解っていたからだが。雲雀は山本を抱きしめたまま眠った。人の温もりが優しいことを、雲雀は山本に教えてもらったから。だから、そうするべきだと思った。
「…キミは、それでいいよ」
些細なことで心を痛めて、落ち込んで。そしてその度に泣けばいい。死して泣くことのできなかった誰かの為に。
「…それで」
抱きしめる腕に少しだけ力を込めて、雲雀はゆっくりと目を伏せた。
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プロフィール
HN:
瑞季ゆたか
年齢:
41
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
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