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ニッケルキリ番「8059」のお題

鈴雅さんより、キリリクです。
順番無視ですが…
●ボーン系のキリ番にはめっぽう強い彼女…




「あっはははっ…」
半泣きになりながら山本が笑う。
「お前、他人事だと思って…」
不機嫌になる声に、
「はーい、動くなよー」
軽くキスで宥めて。

息をするように当たり前な、

この優しい時間が、

このままずっと続くように。


『呼吸』


「随分伸びたのな」
山本はソファで本を読んでいる獄寺の髪に触れる。跳ねたりしているが、癖がつきやすいだけで髪質は柔らかい。
「ここしばらくは時間とれなかったもんな」
まるで猫でも撫でているような感覚に、山本の表情はほころんだ。
その手を退かすわけでもなく、雑誌に目を落とす獄寺の耳にかける髪が少し邪魔なような仕種。
「…少し切ってやろうか?」
「あー…そうだな、」
山本の言葉に獄寺は頷いて雑誌を閉じた。
いつからか山本に髪を切ってもらうようになった。いくら冗談とは言え、髪を梳いてやろうかと時雨金時を出した時はグーで殴ってやったが。基本的に遺伝もあるのか山本は手先が器用だ。要領もいいからある程度は平均並にこなしてしまう。だが、任せる理由はそれだけではなく。

(…すげぇ気持ちいいんだよな、)

山本に髪を触られるのが心地良くて安心してしまう。そんな獄寺に山本も優しく笑うから反則だ。
「獄寺の髪って、柔くて綺麗だよな」
軽快に鋏を扱いながら、山本が笑う。
「なんだよ、今更……あ"、」
呆れたような声で言ったかと思うと、急に獄寺が顔をしかめる。
「あ"、」という言葉に反応した山本は、一旦手を止めて獄寺の表情を覗き込む。
「何?どうした?」
「ヤなこと思い出した…」
しかめっ面のまま、山本に手を動かせと催促する。山本はまた鋏を動かし始めた。軽快な音が心地よい中で、嫌なものを吐き出すように獄寺が口を開く。
「この間の潜入の時な、」
ついこの間のこと。
いつもなら多くても二人なのだが、ボンゴレ幹部総出で一つの任務を行った。つい最近台頭してきた巨大なカジノ。裏取引も堂々と行われているその場所に獄寺たちは潜入した。
「あぁ、結構楽しかったな」
山本はカジノのディーラーとしてターゲットが好きなカードゲームの相手を、獄寺は遠巻きにターゲットを尾行していた。あの馬鹿正直だった山本が、あれほどまでに鮮やかに且つスマートにイカサマをしているのに獄寺は正直驚いたのだが。
「お前とヤツが楽しく遊んでる間に声掛けられたんだよ」
そのセリフに、山本は一瞬手を止めまた作業に戻る。
「ふーん…」
素っ気無い返答に獄寺は楽しそうに笑う。
「妬くなよ、」
「別に?だってそいつはこんな事出来ないんだろ?」
そう言って耳を甘噛みした。
「やっ…めろ、バカっ」
「それで?」
山本がそう促すと、獄寺は話を続ける。
「その相手がヤツが引き連れてたボディガードで、」
あの時、正体がばれたのかと本気で焦ったのだ。

「普通にナンパされた」

「ぶっ…」
それを聞いて山本は吹いた。
「あの時、獄寺髪結ってなかったもんな」
大抵は邪魔だからとあげているのだが、綱吉から下ろした方がいいよと何とかの一声。結局獄寺は髪を下ろして行ったのだ。
「しかも俺が男だって言ったら、解ってて声掛けてきやがってんだ」
まぁ、そうだろうな。山本は内心思った。当の獄寺は話している内に怒りが戻ってきたらしい。そんな様子に、山本は手を止めて笑った。
「あっはははっ…」
半泣きになりながら山本が笑う。
「お前、他人事だと思って…」
不機嫌になる声に、
「はーい、動くなよー…くくっ…」
笑いを抑えた山本は振り返る獄寺に触れるだけのキスをして、前を向かせる。
「マジ、お前死ね」
容赦ない言葉に、ただ山本は穏やかに笑うだけ。
「なぁ、コレ終わったら買い物行かねー?」
獄寺は壁の時計を見る。夕飯の買出しにはまだ早い時間だ。
「何しに、」
「ピアス、探しに行こう」
「は?」
また動こうとするのをやんわりと止めて。
「獄寺に似合いそうなのをさ」
あまりに楽しそうに口にするから。獄寺は口を開いたものの、言葉を口にはしなかった。
軽快な鋏の音。
時折混じる鼻歌。
「…音痴だな、お前」
獄寺が笑う。つられて山本も笑う。
「よし、じゃ髪洗って来い!」
掛けた布を取って、山本は獄寺の背中を押す。
「命令すんな、」
獄寺は山本を軽く叩いて、バスルームへ歩いて行った。
「あ、それとも俺が洗ってやろうかー?」
「余計なお世話だっ」
声を張って投げた山本の言葉は一刀両断。山本はまた肩を震わせて笑った。鋏をしまって、散らばった銀糸を片付ける。そうしてドライヤーを取り出して、熱風の熱さを確かめる。あんまり暑いとまた不機嫌な表情で文句を言うから。

呼吸をするように必要不可欠な、この優しい時間が、ずっと続きますように。
山本は、獄寺を待つ間に心の中で祈った。


獄寺は唐突に買い物へ誘った山本の真意をはかりかねていた。というのも、山本自身本当に何も考えていないかもしれないからだ。ご機嫌とりが必要なほど、獄寺は機嫌が悪いわけでもない。だが、
「…まぁ、悪くはねぇよな」
獄寺自身のんびりとした時間を過ごすのは悪くないと思っている。男二人の奇妙な買い物。ふと目に留まった店のガラスに映る自分。髪が随分さっぱりした。隠れていた耳も見える。

(…あ…)

だから、山本は買い物に誘ったのではなかろうか。気に入って付けているピアスに触れる。
「イイモノ見つかった?」
後ろに立つ山本をガラス越しに見てから振り返る。すると、山本はじっとガラスを見ていて。真剣な横顔に一瞬見惚れたのは秘密だ。
「やま、」
「武、だろ?」
「なっ、」
悪戯に山本は笑って獄寺の手を引くとその店に入った。
「―――…すか?」
獄寺から離れたところで山本は店員と話をしている。内容は聞こえないが、店員が申し訳なさそうにしている。
「なぁ、」
声をかけると山本は嬉しそうに笑った。
「イイモノ見つけたよ」
獄寺の知らぬまま山本は会計を済ませてまた獄寺の手を引くと、そのまま店を出た。
さっきの店の小さな手提げを片手に、ご機嫌な山本。広い公園を横切って、お気に入りのオープンカフェへ。
「…変な感じだな、」
獄寺の呟きに山本が振り返る。
「デートしてるみてーだ」
その言葉に山本は一瞬キョトンとしてから苦笑。
「あー…一応、デートしてるつもりなんだけど」
「…あ、そ」
獄寺は山本から視線を逸らして逃げた。その仕草に山本はまた優しく笑った。
カフェラテとエスプレッソを頼んでひと息。夕暮れにはまだ早いが涼しさを帯びた風。穏やかな午後。
「あ、これ」
山本が手提げから出した小さな箱。
「結婚申し込むみたいに開けた方がいい?」
山本が笑い、獄寺は「バーカ」と言いながらその箱を受け取る。入っていたのはシンプルなデザインのピアス。
「それさ、光りの加減で青と碧になんの」
"俺たちの色だろ?"なんて恥ずかしげもなく言われて、逆に反応に困る。
「本トはお揃いにしようと思ったんだけど、」
ウィンドウ越しに見たそれは、現品限りでたった一つだけ。
「でも、どうしてもこれつけて欲しかったからさ」
運ばれてきたカフェラテとエスプレッソ。エスプレッソを口にする山本に、獄寺は呆れたような眼差しを向ける。
「本トお前って…」
「ん?」
「…卑怯者、」
目を丸くする山本を無視して片方のピアスを取ると、そのまま山本の耳に付けた。今つけているピアスには申し訳ないが。
「獄寺?」
「隼人、だろ」
そしてもう一つを自分の耳につけようとする。
「待って、」
山本は獄寺の手からピアスを取ると、それを耳につけた。見上げると山本が優しい目で笑う。名残惜しそうに獄寺の髪を軽く指で梳いて。
「…うん、やっぱ似合う」
獄寺はにやりと笑った。

「…お前が言うんなら、間違いないんだろうな」

山本は「そのセリフは反則だ」と額を押さえ、その様子に笑う。
「なぁ、これって指輪はめ合ったみたいじゃねぇ?」
あっ、と気づいたように山本が言い、
「調子に乗んな、バーカ」
それをはねのけるように獄寺はカフェラテを口にした。珍しく甘いのが飲みたくて頼んだカフェラテ。

「…甘…」

きっとブラックを頼んでもそう感じたに違いない。カフェラテの選択は失敗した。
視線を上げるとそこには山本が居て。
まとわりつくような硝煙も、消えない赤と鉄の匂いもなくて。

ただ穏やかな風と、

心地よい空気と、

二人が居るこの時間が、

ずっと続きますように。


獄寺は、そっと目を伏せて祈った。

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ありがとうございます

あっあっあっ
ありがとうございます!!ありがとうございます!!
本と水城さんの小説はいつでも私のつぼです(><)
本当ありがとうございますvv
  • 鈴雅
  • 2008/04/21(Mon)18:00:46
  • 編集

いやいやいやいや

こちらこそ楽しんで書けるリクエストありがとですー(笑)喜んでいただけて良かった~(*´v`*)
  • 水城
  • 2008/04/21(Mon)22:41:47
  • 編集

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
33
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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