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いつかのこと。それがいつものこと。

「あの時だな、初めて雷蔵が怖いって思ったのは」




※勢いのみで続いた(何故か)落乱。前回のCPの流れだけど五年の話。というか雷蔵の話…?続きは折りたたみ↓↓

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時折こうして枕元の灯りをつけて話をする。
久々知の部屋にタカ丸が潜り込めるのも久々知にルームメイトがやってくるまでの間だけだ。
だからタカ丸は時間があれば、と通っていたが、お堅い優等生はいくら好意を寄せる相手とは言えいい顔はしなかった
(けれどその表情は明らかに葛藤していたので、タカ丸としては充分嬉しかったりする)。
連日、というのは無理だが、決まった曜日はこうして二人で少しだけ夜更かしのお許しが出た。
タカ丸はこの変化に、随分丸くなったねぇ、と笑った。
それが現在に至るまでの大まかな経緯である。

「でね、あやべってば…」
決まってタカ丸の口をついて出てくる名前。
他二名も皆、タカ丸と同じ四年生だ。
その名前を聞くのは耳たこなのだが、
不機嫌な表情を表に出さなくなった分自分も少しは成長したのかもしれないと思う。
頬杖をついて苦笑。

(せめてこれくらいは許して欲しい)

「お前、本当に四年好きだよな」
すると丸い目を益々丸めてキョトンとした後、タカ丸は声を上げて笑う。
「あはは、そういうへーすけくんだって、五年のみんな好きでしょう?」
「あぁ、好きだな」
負けじと言い返すタカ丸の言葉に、悪びれもせず即答。
「きっと、あいつらには敵わない気がするけど」
その言葉にタカ丸は枕を抱えなおし意外そうな表情で見上げてくる。
「優等生のへーすけくんが、そんなこと言うなんて意外だなぁ」
そうか?と首を傾げながら、ふと思い出したことがある。

「…特に、あいつは」

雷蔵のことを言うと、成績優秀で真面目だが真面目すぎて決断や選択という場面においては極端に弱い。
適度な柔軟さは人間必要だと思うが、一晩中些細なことを悩み続けるのはどうかと思う。
悪いことでは決してないのだが、忍として不安な要素であるというのもまた事実。
しかも優しくお人好しで、困った人を放っておけない性格。
いつだったか困っているおばあさんを見つけて助けようとしたのだが、
授業の時間が迫っていて、けれどおばあさんを放っても置けず、
結果、困っていたおばあさんを背負って授業ギリギリに教室に滑り込んできた。
これもその性格を端的に示す数々の逸話の一つだ。
そんな雷蔵を気に入っている鉢屋は要領もいいし、そうそうヘマはやらかすまい。
竹谷に関しては失敗も多いが頑丈さには定評があるから、心配はないだろう。
だからこそ、やけに雷蔵が気になったのかもしれない。
一時の気の迷いや情をかけることは自分の命取りになりかねない。

「また躊躇したな」

痛みに眉間に皺を寄せた雷蔵が苦笑する。
髪についた葉や土を手で払ってから、
「ゴメン兵助、少し抜ける」
みんなは続けてて、と水場に歩き出す雷蔵の背を追って。
「休憩にしよう」
その言葉に、ありがとう、と雷蔵は優しく笑う。
四人並んで水場に向かって歩き出した。
「今回も迷ったな、これじゃあすぐに命を落としかねないぞ」
「出たよ、久々知の小姑」
頭の後ろで指を組み目を眇めて笑う鉢屋を一瞥。
もっともこんなもの鉢屋には効きやしないのだ。
「いいんだよ、本当のことだし」
忍は主のために存在する。
主の為に働き、守ることに命を懸ける。
命を落とすのは主の為。
自分のミスで命を落とすのは正しい在り方ではない。
それは雷蔵も理解っているのだ。
「俺は、…忍にはなりたいと思うけど、主の為に任務こなして国を援けるとか、忍としての強さを極めようとか、そういう大きなことを考えてるわけじゃないんだ」
洗った顔を拭いて、後ろに立つ三人をしっかりと見ながら、雷蔵は言う。


「小さくていい、この手の届く、俺にとって大事な世界を守る力が欲しいんだ」


迷いなく口にする雷蔵の此処に居る理由。
聞くタイミングがなかったから知らずに居たが、まさかそんなことを考えているとは思わなかった。
雷蔵が手を伸ばせは届く距離に、鉢屋も、竹谷も、…そして自分も居る。

「あの時だな、初めて雷蔵が怖いって思ったのは」
自分が此処に居る理由は、恐らく忍としては模範解答だと思う。
けれど雷蔵にとってはずっと変わらない理由がある。
あの時口にした言葉が、全てで、本気だ。
頬杖を解いて、ごろりと仰向けになる。

「あいつ、自分の手の届く守りたい世界、とやらに俺たちまでひっくるめやがった」

何の臆面もなく守るだなんて、言って。
それを聞いたタカ丸に目をやると楽しそうに笑っていた。
「…うん、何か、不破くんらしいね、そういう優しいところ」
「あいつの強みだな、あれは」
優しい?いや、優しすぎるくらいに優しいところ。

(その優しさが、少し…怖いって思ったのもあるかもしれないが)

「ね、他の二人は?」
タカ丸に促されるまま思案する。
「鉢屋はよく掴めないな、竹谷に突っかかってる印象しかない」
竹谷は馬鹿だが、人を惹きつける不思議な力がある。
「あはは、不破くんの反応と温度差があるねぇ」
竹谷くんは確かに人を惹き付ける、人の心の壁を解くのが上手いんだね、きっと。
そうタカ丸の観察を聞きながら思う。

(それは、お前と、似てる)

タカ丸を見ながらそんなことを考えていたら、あ、とタカ丸が何か思いついてこちらを見た。
「でも、」
それから少し思案して言葉を慎重に選ぶように言う。

「鉢屋くんは、竹谷くんのこと気になってるんじゃないかと思うなぁ」

人を見る目はタカ丸の方がずっとある。
もしかしたら自分がよく掴めないと思っている鉢屋ものことが分かるのかもしれない。
まさかそんな言葉が出るとは思わず、目を丸くしていると、
「多分ね、俺の予想だと…不破くんも“それ”に気付いてると思うよ」
とタカ丸は軽くウインクした。
優しくお人好しの雷蔵なら、一番身近に居る三人のことはお見通しなのかもしれない。
四人の中では、一番人を見ていると思うから。
「…そうか、」

「一番へーすけくんの変化を感じ取ってるのも不破くんなんじゃないかな?」

自分の名前が出てきて驚く。
そして不覚にも、自分だけが名前呼びであることに気がついてしまった。
「…っ!」
くるりとタカ丸に背を向ける。
「へーすけくん?」
未だにこういう部分には慣れない。
慣れてはいけない気もする。
心地良い羊水に浸かるような、こういうのは。
「…俺は忍だ、」
言い聞かせるように小さく呟く。
その背に、こつんとタカ丸が額をくっ付けて。


「うん、でもこうして触れてる時は、へーすけくんはへーすけくん」


敵わない、と思う。
でも、敵わないままでもいいと思えてくるのは、タカ丸の不思議な力だ。
背を向けたまま、手を後ろに伸ばすとタカ丸の少し冷えた指先とぶつかって。
その手を握ることくらいしか、今の自分にはできそうにない。
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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
33
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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