忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

こうして並んで歩いているという、

ただそれだけで。

それが何よりも幸せなのだと。




※蒼主従の話。カッコいい小十郎が書きたかっただけなのに、盛大に失敗した。恥ずかしいので続きは折りたたみ↓↓

拍手[0回]

午後の政務をひと段落させて城下の活気づく街中に政宗と小十郎は足を踏み入れた。
まだ梅雨も明けぬというのにすっかり夏の日差しである。軒先からは二人を呼び止める声が聞こえる。奥州を統べる政宗はその好戦的な面とは対照的に民には対等に分け隔てなく接する。民たちがこの若き政宗に国を任せるのも、こういった信頼が出来上がっていることと、幼き政宗を知る古参のものが多いことに起因しているのかもしれない。茶を飲んでいけという茶屋の翁の声に申し訳なさそうに辞すと、

「片倉様は本当に政宗様をお放しにならない」

とからかう様に笑われた。翁の言葉に困惑する小十郎に政宗は笑いながら、内心随分な上機嫌で先を歩いていた。
その視線の先。
母親と買い物に来たらしい少女は、新しく買ってもらったのだろうか、綺麗な花簪を髪にさしていた。そんな姿を見ていると不思議とこちらまで微笑ましくなった。

「どうなされました?」

足を止めた政宗に追いついた小十郎が穏やかに笑う政宗に気付いて声を掛けた。
「あぁ、あの…」
一度小十郎を見、先ほどの少女に視線を戻した時途中一人の少女が目に止まる。
「政宗様?」
その少女は、花簪をさした少女を黙ってじっと眺めていた。その少女に近づいて、政宗は声をかけた。

「あれ、羨ましいのか?」

急に声を掛けられた少女はびっくりした様子で政宗を見上げ、すぐにふいっ顔を逸らした。

(…素直じゃねぇの、)

そんな少女の様子に気を悪くした様子もなく政宗は歩き出す。少し通りから外れた畦道。そこに咲く淡い桃色の花を摘んで少女の下に戻ると、結った髪に桃色の花をさした。
「これで、どうだ?」
少女は数度瞬いてから、政宗のさした花を乱暴に取ると地面に投げ捨てた。
「な、テメェ」
「こんなのイラナイ!」
少女は今にも泣きそうな表情になって。政宗とて馬鹿にしたつもりもからかったつもりもないが、どうやら少女にとっては良くなかったらしい。

(…この手の扱いってのはイマイチよく分かんねぇし、)

自分で手を出した以上は何とかしてやりたいが。あの少女と同じ簪を買ってやることができないわけではない。だが政宗の与える優しさは必ずしも相手のためとは限らない。どうしたものかと悩んでいると、少女が捨てた花を拾い上げる手。
「小十郎、」
小十郎は少女の前にしゃがんでしっかりと視線を合わせる。今にも涙がこぼれ落ちてしまいそうな少女の目の前で、拾った花を編みこんでいく。小十郎が手にしていたものは桃色の花を編みこんで小さく束ねたもので、それを丁寧な手つきで少女の結った髪にさした。少女はその花を確かめるように髪に触れて。ふわりと優しい香り。

「あの花よりも、この花の方が良く似合う、」

ほら、と少女が着ている桃色の着物を指差して小十郎が笑う。すると、少女は花が綻ぶように笑う。瞬いた拍子に涙はこぼれたが、嬉しそうに笑う少女の頭を小十郎は軽く撫でた。
「…あり、が、と…」
頬を朱に染めて少女は小さく呟くとそのまま走っていってしまった。立ち上がり少女の背中を見送る小十郎を政宗は肘で小突いた。
「…何だよ、アレは」
「ああやって花冠を作るのですよ、喜多に散々つき合わされました」
喜多のことを思い出し苦笑する小十郎に政宗は少し不服そうな表情をして歩き出す。そして先ほどの少女のことを考える。

(…あれは完全に惚れたな、)

どこで覚えてくるのか、女性受けするような振る舞いを小十郎はさらりとやってのける。実は巷では小十郎は相当もてるのだが、本人はまったく気付いていない。それに当人があの堅物なのだから、それが実ることも可能性としては低いのかもしれない。

(…っつーか、実られても面白くねぇし…)

「政宗様、」

すっかり喧騒から抜けたところで呼び止められる。足を止め振り返ると、小十郎が袂から小さな簪を取り出して政宗の髪を耳にかけるとその上にさした。

「…拗ねているのかと、思ったもので」

笑う小十郎には余裕があって、それが少し悔しいと思う。

「―――ご機嫌取りなら、さっきの花飾りの方が正解だな、小十郎」

だから簪をそのままに、笑って文句を言う。小十郎は人の目がないのを確信して、政宗の手を取るとその甲に口付けた。そして小十郎はその手を離さずに歩き出す。その手に引かれる様に政宗も歩き出して。もう既に機嫌は直っている。そもそも拗ねていたわけでもないのだから。それでももうしばらくは不機嫌なふりをしていよう、と政宗は思った。





※小十郎が別人なのはご愛嬌。
PR

この記事にコメントする

お名前
タイトル
メール
URL
コメント
絵文字
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
パスワード

この記事へのトラックバック

この記事にトラックバックする

カレンダー

06 2017/07 08
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
33
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

ブログ内検索

カウンター