monocube
降り注ぐ優しい日差しに、
不覚にも悪い気はしなかった。
(そんなこと言おうもんなら、殺されそうだけどな)
「や、そもそも近づくことすら不可能だろ…」
何をどう気配を感じ取るのか、顔を見せる前から自分の存在には気付いていて。
扇子を皮きりに襖を開けた途端に投げ付けられる様々なものにはもう慣れた。
躱すか取るか弾くかは気分と何が飛んできたかによる。
「…ちっ」
何とも分かりやすい舌打ちには涙が出るね。
「―――何しに来た、」
「別に、何か最近通してくれるからよォ」
以前なら一暴れしなければこの男の前に立つことすら叶わなかったが、
最近はあっさり兵士たちが道を開けてくれる。
「…使えぬ捨て駒どもが、」
そう吐き捨てるように言って、
すっかり関心を失ったとばかりに背をむけ文机に向かう。
(こうも無防備に背中向けられるってのは貴重だろうが…相手にされてないとも言う)
まぁ、いいか、とすぐ傍に腰を下ろす。
一応、文句は言われない。
「…なぁ、もと」
振り返った途端に首に突き付けられた小刀。
「それ以上近づいたら掻き斬る」
こちらを振り返らずに突き付けられた切っ先に、改めてタダ者じゃないことを認識する。
「…こりゃ失敬、」
また背を向けて後ろに手をつき天井を仰いだ。
柔らかい日差しが差し込んで、暑くもなく心地よい。
屋敷の中をうろついたが、この座敷ほど良い場所はないのだろう。
(そういうとここだわりそうだし、)
さらさらと風が紙を揺らす音が聞こえて。
昼寝したい時にでも来るかな(確実に寝首をかかれるが)、
なんて考えていたらタイミングよく背中に何かがぶつかって。
人の心の中まで読めるのか、と振り返る。
「元就、」
小刀は、突き付けられなかった。
身体を動かせばそのまま倒れてしまいそうな位置に寄り掛かるのは元就当人で。
「…悪い冗談じゃねぇよな」
さらりと色素の薄い髪が肩からこぼれて。
(マジ寝とか…ある意味余計に質が悪ィぜ…)
今はいい、起きたらきっと自分は半殺しになるのだろう。
半殺しで済むなら元就の機嫌がすこぶる良かったと評価するべきか。
「…どちらにせよ、死なねぇようにしねぇとな」
仲間を置いて天下の大船に乗り損ねたなんざ、格好が悪くて仕方ない。
すっかり無防備な元就に苦笑して、ゆっくりと目を閉じた。
※実験的瀬戸内。まだよく分からない。何となく見てみたい瀬戸内の話…は折りたたみ↓↓
慟哭。
そう言うに相応しい有様だった。
その圧倒的なまでの存在に、完膚なきまでに蹂躙された。
日は、文字通り地に堕ち。
その傷だらけ身体を抱き締める。
逃げるように藻掻くのを力で無理やり押さえ込んで。
「…ぁあ…あぁぁあ…」
もはや言葉にすらならない声に。
何も映さない瞳を手で隠して(見えてないのだからこんなことをしても変わらないのだろうが)。
「…見んな、思い出すな、痛むな、」
その言葉が耳に届いているかも怪しいものだが。
「今は、眠ってろ…必ず、取り戻してやる」
次第に弱くなっていく抵抗。
「日差しを遮る壁なんざ、俺がぶち壊してやっから」
掻き抱いたその身体はやがて力を失い、その頬を一筋の滴が伝った。
※信長にコテンパンにやられた元就を見てしまった元親(こんな弱い元就を見たことがねぇ)…そんな瀬戸内とか見てみたい。自分で書くとあんまり萌えないから。
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好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。