monocube
monoには秘めたイロがある。
見えないだけでそこに在る。
数え切れないそれは、やがて絡まり色彩(イロ)になる。
さぁ、箱をあけてごらん。
箱庭(ナカ)は昏(クラ)く底なしの闇色(モノクロ)。
深い闇に融けたらいいのに。
日々の戯言寄せ集め。
当サイトは作者の気まぐれにより、自由気ままに書きなぐった不親切極まりない戯言の箱庭です。
その優しさが、
腹立たしくて仕方ない。
想うのはひとり。
優しいのは自分じゃない誰かのため。
※現代版瀬戸内の話。ゆらり、揺らいで、の続き的な何か。瀬戸内はよくわかりません。続きは折りたたみ↓↓
窓の向こうに見えた光景に吐き気がして。
言い表わし難い感情に教室を出た。
歩きながらもあの光景が離れなくて。
あのまま二人で身を潜めるだろうか、それとも何事もなかったかのように離れるのだろうか。
(…我は、)
無意識に握り締めていた手を解く。
(…切ってくるべきだったな)
手の平に爪が食い込んで血が滲む跡を見ながら、小さく舌打ちした。
いつも駆け込むのは音楽室だ。
此処は静かで、ピアノの鍵盤を弾く度に揺れる空気が好き。
心が落ち着いていく。
「…今日の先客は俺の方だぜェ?」
声と共に段々になった席の奥から顔を出したのは。
「…長曾我部、」
「何だァ?いつもなら名前で呼ぶくせによ」
笑いながら近づいてくる姿を睨んだ。
失念していた。
特別棟の廊下に居たなら、音楽室に自分より早く辿り着くのはあり得る話。
そこへノコノコ歩みを進めた自分に腹が立つ。
「…我が動揺していたなどと、」
くだらない。
元親が来るのを待たずに踵を返す。
一刻も早くこの場を去りたい。
元親の前から消えたい。
「待てって、」
元親の手が腕を掴んで引くから、必然的に元親を見上げる羽目になる。
苛立っているのに気が付いて、元親は眉間に皺を寄せた。
「何で苛立ってるか知らねェが、別に出ていけたァ言ってねェだろ」
「どうしようと我の勝手だ、貴様に引き止められる言われはない」
視線を反らして破棄捨てるように言えば、
「おい、元就」
『元就、』
愉しそうに名を呼ぶ声が耳の奥に蘇って。
(勘違いをするな甘んじるなどうせそれは我ではない)
自分の方に向かせようと伸びた元親の指が、顎に触れて。
蘇る光景。
その指が輪郭をなぞったのは。
「触るなっっ!」
掴まれた腕さえも振りほどいて。
逃げるように距離を取る。
掴まれていた部分を守るように自分の手で掴んで。
「…怯えてる、のか?」
呆気に取られた元親の声に。
「…我が、怯えている、だと?有り得ぬな」
口元を歪めて答える。
「……見たのか、お前」
元親はさっきとは違う、酷く落ち着いた声で言う。
「あの時感じたのは、お前の、視線だったんだなァ」
咄嗟に声が出ない。
喉の奥が凍り付くように。
「…何、の話だ」
そう、分かっているのに問い返すことしか。
元親が離れたはずの距離をゆっくりと詰めて。
「…元就、俺のこと好き?」
「自惚れるな、なぜ貴様なぞに」
撫でるように触れた指は。
視界を満たす銀色。
(違う、これは)
焼き付いた光景。
黒髪。
隻眼。
「…いつも貴様には、あの男がいる」
口唇が触れる瞬間に呟くと、元親は止まった。
「…見たこと、誰にも言うなよ」
キスをする代わりに言う元親の手から逃れる。
「誰が言うか、そんな不毛なものに興味はない」
そう言い捨てて音楽室を出た。
無意識に反芻する優しい声が今は酷く煩わしい。
自分に重ねる元親も。
それに応えない黒髪も。
でも一番赦せないのは。
(…それを知って尚、心変わりしない我自身だ…)
その想いを溶かす術など知らない。
※おまけはコメント欄
想うのはひとり。
優しいのは自分じゃない誰かのため。
※現代版瀬戸内の話。ゆらり、揺らいで、の続き的な何か。瀬戸内はよくわかりません。続きは折りたたみ↓↓
窓の向こうに見えた光景に吐き気がして。
言い表わし難い感情に教室を出た。
歩きながらもあの光景が離れなくて。
あのまま二人で身を潜めるだろうか、それとも何事もなかったかのように離れるのだろうか。
(…我は、)
無意識に握り締めていた手を解く。
(…切ってくるべきだったな)
手の平に爪が食い込んで血が滲む跡を見ながら、小さく舌打ちした。
いつも駆け込むのは音楽室だ。
此処は静かで、ピアノの鍵盤を弾く度に揺れる空気が好き。
心が落ち着いていく。
「…今日の先客は俺の方だぜェ?」
声と共に段々になった席の奥から顔を出したのは。
「…長曾我部、」
「何だァ?いつもなら名前で呼ぶくせによ」
笑いながら近づいてくる姿を睨んだ。
失念していた。
特別棟の廊下に居たなら、音楽室に自分より早く辿り着くのはあり得る話。
そこへノコノコ歩みを進めた自分に腹が立つ。
「…我が動揺していたなどと、」
くだらない。
元親が来るのを待たずに踵を返す。
一刻も早くこの場を去りたい。
元親の前から消えたい。
「待てって、」
元親の手が腕を掴んで引くから、必然的に元親を見上げる羽目になる。
苛立っているのに気が付いて、元親は眉間に皺を寄せた。
「何で苛立ってるか知らねェが、別に出ていけたァ言ってねェだろ」
「どうしようと我の勝手だ、貴様に引き止められる言われはない」
視線を反らして破棄捨てるように言えば、
「おい、元就」
『元就、』
愉しそうに名を呼ぶ声が耳の奥に蘇って。
(勘違いをするな甘んじるなどうせそれは我ではない)
自分の方に向かせようと伸びた元親の指が、顎に触れて。
蘇る光景。
その指が輪郭をなぞったのは。
「触るなっっ!」
掴まれた腕さえも振りほどいて。
逃げるように距離を取る。
掴まれていた部分を守るように自分の手で掴んで。
「…怯えてる、のか?」
呆気に取られた元親の声に。
「…我が、怯えている、だと?有り得ぬな」
口元を歪めて答える。
「……見たのか、お前」
元親はさっきとは違う、酷く落ち着いた声で言う。
「あの時感じたのは、お前の、視線だったんだなァ」
咄嗟に声が出ない。
喉の奥が凍り付くように。
「…何、の話だ」
そう、分かっているのに問い返すことしか。
元親が離れたはずの距離をゆっくりと詰めて。
「…元就、俺のこと好き?」
「自惚れるな、なぜ貴様なぞに」
撫でるように触れた指は。
視界を満たす銀色。
(違う、これは)
焼き付いた光景。
黒髪。
隻眼。
「…いつも貴様には、あの男がいる」
口唇が触れる瞬間に呟くと、元親は止まった。
「…見たこと、誰にも言うなよ」
キスをする代わりに言う元親の手から逃れる。
「誰が言うか、そんな不毛なものに興味はない」
そう言い捨てて音楽室を出た。
無意識に反芻する優しい声が今は酷く煩わしい。
自分に重ねる元親も。
それに応えない黒髪も。
でも一番赦せないのは。
(…それを知って尚、心変わりしない我自身だ…)
その想いを溶かす術など知らない。
※おまけはコメント欄
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無題
「…ん?…元、就?」
窓に寄りかかるその華奢な背中が、慶次には酷く小さく弱く見えて。
その背にかける言葉も声も見つからない。
窓に寄りかかるその華奢な背中が、慶次には酷く小さく弱く見えて。
その背にかける言葉も声も見つからない。
- 水城
- 2009/07/23(Thu)17:05:26
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プロフィール
HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。