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誰かを想うことは、

それが一方通行の矢印だとすれば。
それは、ただ己が内に積もっていくだけ。

鮮やかな恋の色は褪せて。




※現代版風来坊の話。蚊帳の外からすべてを傍観する、赤い糸が見えちゃう人。これでとりあえずは一区切り。続きは折りたたみ↓↓

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視界の隅を過ぎる糸。
絡んでいる糸。
両手をポケットに突っ込んでぼんやり歩いていると、いきなり目の前に糸が見えて。

「…ぅわぁっ!!」

慌てて避けたら、見事に尻餅をついた。
「…てて…」
「どうしたの?慶ちゃん?」
通りかかる女子に笑って、
「暑さにバテ気味なのかも」
「あはは、お茶飲む?」
「いんや、平気平気」
可愛い笑顔を見たら元気出てきた、と答えを濁してやり過ごす。

(…赤い糸避けちゃったんです、なんて寒いよな…)

立ち上がり軽く頭を掻いた。
気を取り直して歩いていると、チャイムが鳴って廊下の生徒たちが蜘蛛の子を散らすように消えていった。
急に静かになった廊下を歩いていくと、遠く先に人の姿を見つけて。

「…?元就?」

近づいて行って気付く。
華奢な背中が、あまりにも弱く見えて。

(…これは、あいつの、)

今の様子に比例するようにか細いこの糸を辿れば、きっとその理由を知ることはできるだろう。
でもそれを見ることはできない。
誰よりも気位の高い元就をきっと深く傷つける。

(…俺は見えるだけだ、何かできるなんて勘違いをするな)

自分に言い聞かせる。
結局、その背に掛ける言葉はなく。
見てみぬフリをして来た道を引き返した。

空き教室にいた二人は授業をサボっているのだろう。
教師の声だけが響く校舎の教室一つ一つを辿るように歩いて。
開け放たれたままの音楽室には机の向こうに見えた銀髪。
思い出す廊下に崩れそうだった背中。

「…確かに誰一人真面目に授業受けようってタマじゃねぇよな」

自分のことは棚に上げて苦笑する。
携帯を取り出してデータフォルダからいくつかの写真を表示して。
面白がって抱きつこうとする佐助を手で押し退けながら露骨に嫌そうな表情をする政宗。
その肩に腕を回し笑う元親の反対の腕に捕まって不機嫌な元就。
そんな四人を隠さないようにピースをしている自分の指。

「…何で変わってくもんなのかねぇ」

絵は変わらないのに、ピースの形が変わっていくような。
噛み合わない。
はまらない。
でも。

「離れるわけでもない」

空き教室から伸びる糸(冷たい床に座って片膝を立てて下敷きで仰ぐ佐助、その膝に寄りかかって眠る政宗)も、
音楽室からたなびく糸(音楽室の通路で机に寄り掛かりながらあぐらをかいて俯く元親)も、
廊下からさ迷う糸(廊下の窓に寄りかかって今にも崩れそうな元就)も。
すべては必ずどこかに繋がっていて、自分はそれを知ることができる。
けれどすべては複雑に絡まってやがて手を離れていく。

(俺のは、)

自分の手を見ても何も見えない。
昔からそうだ。
自分の糸は一度も見えた試しがない(これからも見えることはないのだろうが)。
だから、誰かのために祈る。
思う。
その糸の先が望んだ先であることを。
自分には何もできないけれど。
それでも。


「…人よ、恋せよって、な」


そう、思わずにはいられない。
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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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