monocube
monoには秘めたイロがある。
見えないだけでそこに在る。
数え切れないそれは、やがて絡まり色彩(イロ)になる。
さぁ、箱をあけてごらん。
箱庭(ナカ)は昏(クラ)く底なしの闇色(モノクロ)。
深い闇に融けたらいいのに。
日々の戯言寄せ集め。
当サイトは作者の気まぐれにより、自由気ままに書きなぐった不親切極まりない戯言の箱庭です。
その言葉が嘘か真か、
確かめる術はなく。
ただ呆然とその背を見送るだけだった。
あの時はっきりと明確な答えを返すことが出来たら何かが違っただろうか。
去っていくその身体を抱きしめて留めていたら運命は変わったのだろうか。
後悔と自責の念だけが、ずっとずっと苛んで。
「俺、アンタのそういうとこ好きじゃないね」
忍は射るような視線で見下ろしながら言う。
「あんたそれをいつまで繰り返す気だ?」
忍の言っていることはよく理解っている。
自分だって繰り返したくて繰り返してるわけじゃない。
「何回、独眼竜で繰り返すつもりだ?」
「だから俺はっ…!」
見返した忍の眼は波紋ひとつない夜の海のようで気圧される。
「独眼竜に言ったんだってな、“好きな人に看取られて死にたくないのか”って」
言った。
あまりにも蒼が死に急ぐから。
命を失う恐怖を知らないから。
「…だったら、アンタが看取ってやれば良かったんじゃないのか?」
頭に血が上って立ち上がると勢いよく忍の胸座を掴んだ。
「何でアンタたちは死に急ぐ!どうして幸せな世に生きようとしないんだっ!!」
忍はされるがままに
「それはアンタと俺たちの違いだよ、立ち位置が違う」
冷静な口調で続ける。
「アンタがどれほどのものを守りたいのか知らないが、独眼竜は国のすべてを背負ってるし俺は旦那のためなら何でもできる」
力の抜けていく手を忍はゆっくりと解いた。
「アンタが独眼竜を想うなら、どうしてその言葉に従ってやらなかったんだ?」
俺様にはそれが一番疑問だよ、と呟くようにこぼして忍は去っていった。
忍の胸座を掴んでいた手にこびりついた血の跡が幻のように見えて。
澄んだ蒼を血の緋に染めて倒れている姿を見つけた時、
一番最初に思ったのは「逃げ出したい」だった。
脳裏を過ぎったのは最後に蒼と会った時のこと。
『また逢おうな、』の返事『さぁな、』という曖昧なセリフだった。
それは目をつぶっていた蒼の立場を嫌でも思い出させるもので。
『最初に会ったとき、“好きな人に看取られて死にたくないのか”って言ったな』
蒼は少し考えるような素振りをして。
『俺は、アンタがいいな』
まるで天気の話でもするような軽さで。
『アンタが俺を、看取ってくれよ』
そう、蒼は、綺麗に笑った。
そうして去っていく背中に、何一つ言葉を返すことが出来なくて。
「行くな」とでも言えばよかっただろうか。
それとも行かせないように留めれば良かっただろうか。
…いや、何をしたとしてもきっと変わらなかった。
嵐が一所に留まらぬように、あの蒼も止まることはしないのだ。
緋色に染まった姿を前に呆然としていると驚いたように忍がやってきて、
自分に判断を委ねた。
「どうするんだ前田の風来坊、このままじゃ…独眼竜は死ぬぜ」
その時言えたのは、
「…助けて、くれ」
酷く動揺した声で一言だけ。
自分で動くことも出来たはずなのに、脚が、手が、凍りついたように動かない。
重なる悪夢。
きつく蓋を閉めたはずの記憶が、手遅れだと囁く。
繰り返したくないのに、竦んで逃げ出したくて。
先に蒼を連れて消えた忍を追うことが出来たのは奇跡。
でも蒼の姿を見ることが怖くて。
(ほら今だって、俺は、逃げようとしてる)
俺は。
「…一番大切なものを失うのが怖いんだ」
小さく呟いた言葉は、座敷の静けさに吸い込まれて消えた。
※風来坊は脆い、弱い。過去を断ち切れない。
ただ呆然とその背を見送るだけだった。
あの時はっきりと明確な答えを返すことが出来たら何かが違っただろうか。
去っていくその身体を抱きしめて留めていたら運命は変わったのだろうか。
後悔と自責の念だけが、ずっとずっと苛んで。
「俺、アンタのそういうとこ好きじゃないね」
忍は射るような視線で見下ろしながら言う。
「あんたそれをいつまで繰り返す気だ?」
忍の言っていることはよく理解っている。
自分だって繰り返したくて繰り返してるわけじゃない。
「何回、独眼竜で繰り返すつもりだ?」
「だから俺はっ…!」
見返した忍の眼は波紋ひとつない夜の海のようで気圧される。
「独眼竜に言ったんだってな、“好きな人に看取られて死にたくないのか”って」
言った。
あまりにも蒼が死に急ぐから。
命を失う恐怖を知らないから。
「…だったら、アンタが看取ってやれば良かったんじゃないのか?」
頭に血が上って立ち上がると勢いよく忍の胸座を掴んだ。
「何でアンタたちは死に急ぐ!どうして幸せな世に生きようとしないんだっ!!」
忍はされるがままに
「それはアンタと俺たちの違いだよ、立ち位置が違う」
冷静な口調で続ける。
「アンタがどれほどのものを守りたいのか知らないが、独眼竜は国のすべてを背負ってるし俺は旦那のためなら何でもできる」
力の抜けていく手を忍はゆっくりと解いた。
「アンタが独眼竜を想うなら、どうしてその言葉に従ってやらなかったんだ?」
俺様にはそれが一番疑問だよ、と呟くようにこぼして忍は去っていった。
忍の胸座を掴んでいた手にこびりついた血の跡が幻のように見えて。
澄んだ蒼を血の緋に染めて倒れている姿を見つけた時、
一番最初に思ったのは「逃げ出したい」だった。
脳裏を過ぎったのは最後に蒼と会った時のこと。
『また逢おうな、』の返事『さぁな、』という曖昧なセリフだった。
それは目をつぶっていた蒼の立場を嫌でも思い出させるもので。
『最初に会ったとき、“好きな人に看取られて死にたくないのか”って言ったな』
蒼は少し考えるような素振りをして。
『俺は、アンタがいいな』
まるで天気の話でもするような軽さで。
『アンタが俺を、看取ってくれよ』
そう、蒼は、綺麗に笑った。
そうして去っていく背中に、何一つ言葉を返すことが出来なくて。
「行くな」とでも言えばよかっただろうか。
それとも行かせないように留めれば良かっただろうか。
…いや、何をしたとしてもきっと変わらなかった。
嵐が一所に留まらぬように、あの蒼も止まることはしないのだ。
緋色に染まった姿を前に呆然としていると驚いたように忍がやってきて、
自分に判断を委ねた。
「どうするんだ前田の風来坊、このままじゃ…独眼竜は死ぬぜ」
その時言えたのは、
「…助けて、くれ」
酷く動揺した声で一言だけ。
自分で動くことも出来たはずなのに、脚が、手が、凍りついたように動かない。
重なる悪夢。
きつく蓋を閉めたはずの記憶が、手遅れだと囁く。
繰り返したくないのに、竦んで逃げ出したくて。
先に蒼を連れて消えた忍を追うことが出来たのは奇跡。
でも蒼の姿を見ることが怖くて。
(ほら今だって、俺は、逃げようとしてる)
俺は。
「…一番大切なものを失うのが怖いんだ」
小さく呟いた言葉は、座敷の静けさに吸い込まれて消えた。
※風来坊は脆い、弱い。過去を断ち切れない。
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プロフィール
HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。