monocube
monoには秘めたイロがある。
見えないだけでそこに在る。
数え切れないそれは、やがて絡まり色彩(イロ)になる。
さぁ、箱をあけてごらん。
箱庭(ナカ)は昏(クラ)く底なしの闇色(モノクロ)。
深い闇に融けたらいいのに。
日々の戯言寄せ集め。
当サイトは作者の気まぐれにより、自由気ままに書きなぐった不親切極まりない戯言の箱庭です。
冴えた月夜に、
その伸びた背中の主は何を思うのか。
(そんな自明のこと)
右目は刀にかけた手をゆっくりと戻しながら、
「気配を消すこたぁねぇだろ」
と昼間とは対照的な砕けた口調で言った。
「つい癖で、」
と軽く答えたら右目は小さく笑っただけだった。
縁に座り、中庭を明るく照らす冴えた月を右目は真っ直ぐに眺めていた。
その横に座り視線を追う。
今宵の月はあまりにも似ていて、
あまりにも遠い。
「―――…心配?」
主語を付けずに短く問えば、
右目はゆっくりと目を伏せる。
「政宗様はそんなに柔じゃねぇ、やると決めたからには必ずやり遂げる」
右腕的存在としては、正しく模範解答だと思う。
「…の割には、歯痒そうな表情に見えるけど」
さらりと言えば、らしくもなく右目は舌打ちする。
「そういうてめぇはどうなんだ、真田が心配なんじゃねぇのか?」
「心配は、してないね」
今自分の内に燻っているのは、そういう感情ではない。
飛び出していった紅の目は本当に真剣だったから。
迷っていないと理解ったから。
ただ。
「少し…独眼竜が羨ましいと思うだけさ」
何故隣が自分ではないのだろうか。
今まで誰よりも長く傍で見てきたのは自分なのに。
でも、竜は知っていた。
直感的に、紅が何を思うのかを。
だから自分の積み上げてきた分をあっさり越えていることが、
何だかズルイと思うのだ。
また刀を交えたいと、竜に焦がれる紅を見ていたから。
アンタならわかるんじゃないか?
と視線で問うも、右目はそれに答えなかった。
だがその代わりに、
「俺はまだ真田を認めちゃいねぇ、」
甲斐の虎の背を追うひよっこだと答え、
それを否定するつもりはない。
単純に比較すれば、独眼竜の立場は甲斐の虎と同じ立場で。
独眼竜と紅のこの差は大きいと思う。
「…だが、何故政宗様がその真田を選んだのかは、解った気がする」
右目は少し表情を緩めてそう言った。
多分、この右目も自分と同じ思いをどこかしらで持ってて。
(だってさ、多分右目は独眼竜の傍でずっと見てきた)
弱さも甘さも、それゆえの強さも。
戦場に赴くときだって、それは例外ではなかったはず。
(突然の解散宣言は、独眼竜の意志で、筆頭としても正しい判断だったと思う)
そのまま挑めば兵は無駄に駆逐されるだけだ。
では右目は?
その腕は達人の域に達するほどだし、
伊達は右目を封じれば攻略できると噂されるほど軍師としても名高い。
その右目に「ついてこい」と言わなかった理由。
その竜の背に「ついていきます」と言わなかった理由。
「何でアンタは自分も行くと言わなかった?」
戦意を喪失し、使い物にならなかった紅を導いたのはこの右目だ。
(俺は…それに気付きながら、口にしようとしなかった)
あのタイミングでならば、二人で出ていくことも可能だったはずだ。
「アンタなら」
それを考えたはず。
「さっきも言ったろ、政宗様は真田を選んだ、真田が来るのを待った」
それを知っていたら、右目であろうと一蹴されるだろう。
だからこそ食い下がる兵たちを止めることを選んだ。
「ならば、俺にできるのは真田を政宗様と共に立ち上がらせることだけだ」
どこまでも深い理解、揺るがない忠義。
『私情を挟めば、忍は忍でなくなる』
かすがに行った言葉。
(それは…俺様も同じ、か)
行かせたくない思いが、一瞬先行した。
あの震える手を、身体を抱き締めて閉じ込めて守れたら、と。
ぼんやり考えていたら、隣で笑う気配がした。
「てめぇこそ、そんなに離したくねぇなら追いかけりゃいいだろ」
忍の脚の速さなら間に合うだろう?と意地悪く右目は言って。
「離したくねぇ」と言うのが何とも意地悪い。
「――言ったでしょ、真田の教育方針は自主性、ここで手ェ出すワケにはいかない」
言い返しても右目が真に受けた様子はなく。
だがそれ以上追及もしてこなかった。
「それに、まだこっちが安全になったワケじゃねぇからな…恩は返す主義だ」
「それなら十分過ぎるほど返してもらってる、きっと大将もそう言うと思うけど」
膝に頬杖をついて見上げれば、
右目は沈黙したまま真剣な眼差しでまた月を仰いでいた。
※今日の放送前に。揺らぐ音。の対になる従者二人の話。
(そんな自明のこと)
右目は刀にかけた手をゆっくりと戻しながら、
「気配を消すこたぁねぇだろ」
と昼間とは対照的な砕けた口調で言った。
「つい癖で、」
と軽く答えたら右目は小さく笑っただけだった。
縁に座り、中庭を明るく照らす冴えた月を右目は真っ直ぐに眺めていた。
その横に座り視線を追う。
今宵の月はあまりにも似ていて、
あまりにも遠い。
「―――…心配?」
主語を付けずに短く問えば、
右目はゆっくりと目を伏せる。
「政宗様はそんなに柔じゃねぇ、やると決めたからには必ずやり遂げる」
右腕的存在としては、正しく模範解答だと思う。
「…の割には、歯痒そうな表情に見えるけど」
さらりと言えば、らしくもなく右目は舌打ちする。
「そういうてめぇはどうなんだ、真田が心配なんじゃねぇのか?」
「心配は、してないね」
今自分の内に燻っているのは、そういう感情ではない。
飛び出していった紅の目は本当に真剣だったから。
迷っていないと理解ったから。
ただ。
「少し…独眼竜が羨ましいと思うだけさ」
何故隣が自分ではないのだろうか。
今まで誰よりも長く傍で見てきたのは自分なのに。
でも、竜は知っていた。
直感的に、紅が何を思うのかを。
だから自分の積み上げてきた分をあっさり越えていることが、
何だかズルイと思うのだ。
また刀を交えたいと、竜に焦がれる紅を見ていたから。
アンタならわかるんじゃないか?
と視線で問うも、右目はそれに答えなかった。
だがその代わりに、
「俺はまだ真田を認めちゃいねぇ、」
甲斐の虎の背を追うひよっこだと答え、
それを否定するつもりはない。
単純に比較すれば、独眼竜の立場は甲斐の虎と同じ立場で。
独眼竜と紅のこの差は大きいと思う。
「…だが、何故政宗様がその真田を選んだのかは、解った気がする」
右目は少し表情を緩めてそう言った。
多分、この右目も自分と同じ思いをどこかしらで持ってて。
(だってさ、多分右目は独眼竜の傍でずっと見てきた)
弱さも甘さも、それゆえの強さも。
戦場に赴くときだって、それは例外ではなかったはず。
(突然の解散宣言は、独眼竜の意志で、筆頭としても正しい判断だったと思う)
そのまま挑めば兵は無駄に駆逐されるだけだ。
では右目は?
その腕は達人の域に達するほどだし、
伊達は右目を封じれば攻略できると噂されるほど軍師としても名高い。
その右目に「ついてこい」と言わなかった理由。
その竜の背に「ついていきます」と言わなかった理由。
「何でアンタは自分も行くと言わなかった?」
戦意を喪失し、使い物にならなかった紅を導いたのはこの右目だ。
(俺は…それに気付きながら、口にしようとしなかった)
あのタイミングでならば、二人で出ていくことも可能だったはずだ。
「アンタなら」
それを考えたはず。
「さっきも言ったろ、政宗様は真田を選んだ、真田が来るのを待った」
それを知っていたら、右目であろうと一蹴されるだろう。
だからこそ食い下がる兵たちを止めることを選んだ。
「ならば、俺にできるのは真田を政宗様と共に立ち上がらせることだけだ」
どこまでも深い理解、揺るがない忠義。
『私情を挟めば、忍は忍でなくなる』
かすがに行った言葉。
(それは…俺様も同じ、か)
行かせたくない思いが、一瞬先行した。
あの震える手を、身体を抱き締めて閉じ込めて守れたら、と。
ぼんやり考えていたら、隣で笑う気配がした。
「てめぇこそ、そんなに離したくねぇなら追いかけりゃいいだろ」
忍の脚の速さなら間に合うだろう?と意地悪く右目は言って。
「離したくねぇ」と言うのが何とも意地悪い。
「――言ったでしょ、真田の教育方針は自主性、ここで手ェ出すワケにはいかない」
言い返しても右目が真に受けた様子はなく。
だがそれ以上追及もしてこなかった。
「それに、まだこっちが安全になったワケじゃねぇからな…恩は返す主義だ」
「それなら十分過ぎるほど返してもらってる、きっと大将もそう言うと思うけど」
膝に頬杖をついて見上げれば、
右目は沈黙したまま真剣な眼差しでまた月を仰いでいた。
※今日の放送前に。揺らぐ音。の対になる従者二人の話。
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プロフィール
HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。