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それはきっと君を思うあまり、

目を逸らしていた想いの形。




※現代版の竜と右目。始まりは、シャワー室萌えから。いちゃこらしているので、続きは折りたたみ↓↓

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多分きっと間違いなくきっかけはあの夜だ。
酒が入っていたのは事実。その酔いに任せて発言したのも本当だ。でも気持ちに偽りなんて一つもなかった。ノリだとか冗談だとかそんな不誠実だったつもりはない。

「…好きだ、お前が…好きなんだ」

俯く頬に手が伸びて、顔を上げたら呼吸すらも奪ってしまう程の本気の口付け。触れる指先も柔く名を呼ぶ声も絡まる吐息も、すべてが想い通じたと言っていた。鼓膜を揺らす低音は内に疼く熱を呼び覚まして。今この瞬間に果てるなら本望だなんて縁起でもないことを考えた。それ程に満たされていた。いきなりすべてが叶ってしまったのがまずかったのか、次の日高熱で倒れた。きっと消化不良を起こしたのだ。頭が心が満たされてしまって、自分のキャパをはるかに超えていた。甲斐甲斐しく世話を焼くその姿はやっぱり優しくて、特別だと思われていることが伝わってきてくすぐったかった。
その時までは変わらずいつもと同じ日々だった。だがその次の日から空気が変わった。優しくなくなったわけじゃない。態度も声音も変わらない。…ただ一点を除けば。決定的な変化、それは。

(…小十郎が、俺に、触れなくなった)

何度問いただしてもはぐらかされてしまう。それがずっと歯痒いまま。部活を終えて片付けをしている小十郎の姿に近づいていく途中。

「お、エースの旦那も部活終わったんだ」

一足先に声を掛けてきたのはサッカー部キーパーの佐助だった。笑いながら近づいてくると、
「だったら一緒に帰んない?途中コンビニでアイスおごるし」
と軽く肩を叩いて。
「…今日は、いい」
「ウっソ、珍しいなエースの旦那がアイス蹴るなんてさ」
「別に俺にだってそんな日くらいはあんだよ」
苛立ちながら見上げるも、佐助には効いた様子はなかった。思わず小さく舌打ち。
「ホントは何かあって…」
佐助の言葉が耳をすり抜ける。気が付くと小十郎の姿が少し遠ざかっていた。小物類をまとめた箱を持つ当人が顔を上げたところで目が合って。
「こじゅ、」
何も言葉を交わすことなく逸らされた視線。グランドを後にする背中。

(…そんなのって、アリかよ…)

ギリッと奥歯を噛んで走りだす。
「え、ちょ、旦那!?」
突然の様子に唖然とする佐助を振り返り、
「テメェついて来たら絶交だかんなっ!」
ビシッと指を差して叫ぶとグランドの外へ消えていく背中を追い掛けた。

「小十郎っ!!」

叫ぶ声に振り返る驚いた顔。その腕をしっかりと掴んで歩きだす。
「な、政宗さ、」
一瞥すると、小十郎は口を閉ざした。腕を引いて入ったのは更衣室奥のシャワー室。その狭い個室の中だった。
「政宗…様」
さすがに困惑した様子で声を掛けてくる。だからくるりと振り返ってその胸ぐらを掴んだ。
「何で俺を避けんだ」
「避けているなんてことは…」

「じゃあ、何で俺に触んねぇんだよ」

表情を歪ませて問えば、少し驚いた表情をして。
「せっかく、想いが通じたって思ったのに」
特別になれたと思ったのは、一方的な認識だったか?胸ぐらを掴んだまま俯く。
「…何で、」

(…お前が、解らないんだ…)

すると垂れていただけの腕が、明確な意思を持って髪を撫でる。

「想いが通じた、と思っているのは同じです」

「じゃあ、」
「熱を…出したこと、忘れてはおりませんでしょう?」
眉間に皺を寄せて小十郎は言う。忘れていない。忘れるはずがない。いつも優しい手が、特別だと思ってくれていることを実感させてくれたあの日。
「貴方に触れてしまえば、きっとあの時のように自分を抑えることが出来なくなりそうで」
愛しいから。
特別だと自覚してしまったから。
だから触れたいと思い、触れてしまえば更に欲が肥大化して。それは自分と同じ。
「…また、無理をさせてしまう」
その指が軽く頬を撫でるだけでこんなにも鼓動が速くなる。
「…あ、いや、その…」
あの時のことを思い出した途端に、今こんな所に連れ込んで問い詰めている自分が恥ずかしくなった。

(なんか俺…すげぇ愛されたいって言ってるみたいだ…)

後ろに下がったら壁に背中が当たって、手が何かにぶつかる。
「っわ!」
突然シャワーから水が降り注ぎ、小十郎は直撃を受けてずぶ濡れになる。
「悪ィっ…」
振り返って止めようとする手に小十郎のそれが重なって。
「…頭を冷やすには丁度いい」
シャワーの向きを変えて小十郎は苦笑する。見上げる目の前で、水の滴る髪を掻きあげて。不覚にも、それに見惚れてしまった。
「政宗様?」
見下ろす瞳に。
「別に…無理させられたとか、思ってねぇし」
確かに色んなことを経験して一気に三段四段抜かしでもして上ってしまったような気はする。だからオーバーヒートを起こして。でも嫌だとも、ましてや強制されたとも思ってはいない。
「あれは…俺も望んだっつーか、」
触れたくて、熱を共有したくて。

「だからっ…触れない方が嫌、だ」

きっと今の自分の顔は真っ赤で、気遣う小十郎に無理を言っているのかもしれない。でもお互いに想いが通じているのなら対等なはず。すると、参った、とばかりに小十郎は穏やかに笑って。

(…ぁ、キス、される…)

まるでそれを赦すように目を閉じれば、案の定口唇を塞がれた。口唇を舐める舌に促されるようゆっくりと口を開けば、優しく丁寧に舌が挿し入れられて。逃げられぬように髪に絡ませた手が頭を押さえて。口の中を撫で回す舌に自分のそれを絡めて。無意識に小十郎の首に腕を回すと、空いている不埒な手が無防備に開いた襟元から直接肌を撫でる。
「…っは、…ァ…」
思わず漏れてしまう声すらも呑み込むキスに膝が笑った。するとそれを察した小十郎の膝が足の間に割って入って支えてくれる。すっかり翻弄されて口唇が離れた時には息が上がり意識に靄がかかっていた。

「…続きは、帰ってからたっぷりと」

耳朶を舐めるように低音で囁かれる。無論、それを拒む理由などなく。




※甘い甘い、恋の話。
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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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