monocube
monoには秘めたイロがある。
見えないだけでそこに在る。
数え切れないそれは、やがて絡まり色彩(イロ)になる。
さぁ、箱をあけてごらん。
箱庭(ナカ)は昏(クラ)く底なしの闇色(モノクロ)。
深い闇に融けたらいいのに。
日々の戯言寄せ集め。
当サイトは作者の気まぐれにより、自由気ままに書きなぐった不親切極まりない戯言の箱庭です。
ふわりと夜桜が馨るから、
思い出したのだ、その姿を。
※風来坊→忍→紅→風来坊→紅→忍でリレー。無駄に長い。 続きは折りたたみ↓↓
※風来坊→忍→紅→風来坊→紅→忍でリレー。無駄に長い。 続きは折りたたみ↓↓
ただそれだけが、この脚を突き動かした。
(…逢いたい、)
と思うだけで。
夜桜の綺麗な季節には、
それをみんなで愛でようと大抵祭りが催される。
上田とて例外ではなく、その地に足を踏み入れた時、
風に舞う桜の花びらと共に喧騒は伝わってきた。
すっかり賑わった露店の軒先。
かけてあった狐面を取って、
「おじさん、これ、ひとつ」
そのまま人込みに紛れこんだ。
……………
「佐助っ、」
楽しそうに指差す姿を目で追いながら、
やれやれと佐助は頭を掻いた。
賑やかなことは嫌いじゃないが、
如何せんこの主人はこういうところにくると子どもらしさを存分に発揮してします性質らしい。
「あんまりはしゃぐと転ぶぜ、旦那」
ほら、ちゃんと前向いて歩きなって!
そんな注意も耳に届いているやら。
「…ん?佐助、何だそれは」
指を刺したのは顔を隠すようにつけている狐面。
「ほら、だって俺様忍だし、表立って大騒ぎはできないっしょ」
腑に落ちない表情をされたが、それ以上追求の言葉はなかった。
(旦那のことだから、祭り楽しいしどうでもよくなったのかも)
それはそれで考え物だと思っていたら、
いつの間にかその姿が人波に消えていて。
「…やっべ、」
小さく呟いて走り出した。
……………
背中から急に押されて踏み出してしまった。
周りを見渡せどもすっかり忍の姿を見失ってしまっていた。
「うむ、」
とは言え悩んでいては勿体無い。
折角の夜桜祭りなのだから。
人ごみが少し緩やかになって、足を止める。
はらりと舞い散る桜に目を奪われる。
その花びらを追った視線の先、狐面をつけた、男。
それは確かに忍と同じはずなのに、忍ではないと分かる。
「…け、」
名を呼ぶことを赦さず、腕を引かれた。
でもそれは導くように優しい。
何も言わないその背中に、自然と声を掛けることは憚られて。
人込みを抜けた後そのまま境内に向かって、
引かれていた手は一時離れた。
大きな樹に足をかけた時また手が伸びて。
「…おいで、」
引き寄せられるように手を伸ばしたら難なく身体を抱き上げられた。
「よっと…ほら、綺麗だろ?」
手を借りながら見下ろした世界は。
「…これ、は…」
風に乗って聞こえる祭りの音。
人のざわめき、笑い声。
照らし出された夜桜が闇夜に浮かび上がっているようで。
「…綺麗、だ」
呆然と呟いたら、隣で笑う気配がした。
つけていた狐面は退けられ、人懐っこい笑みを浮かべている。
「…慶次、殿」
「祭りは高いところから眺めるのが一番綺麗ってね」
特に夜桜は。
そう風来坊は笑う。
つられるように笑みが浮かんで、
見渡す限りの景色を存分に楽しむことにした。
……………
傍らで楽しげに景色を眺めるその表情に嬉しくなった。
「…此処に来たのはさ、足が、向いたからなんだ」
ふわりと夜桜が馨るから。
思い出したのだ、その姿を。
無邪気に笑う紅がそこには居て。
ただそれだけが、この脚を突き動かした。
「…会いたく、なったんだ」
隣に視線をやればキョトンと見上げてきた瞳が、
ふわりと、柔らかく笑うから。
「…幸村、好きだよ」
アンタが、好きなんだ。
それがどれだけ伝えられるのか、伝わっているのか分からないけど。
「…某も、」
小さな声でそう呟くから。
見上げてくる瞳が愛しくて、ゆっくりと触れるだけの口付け。
温もりを確かめるように強く抱き締めて。
でもすぐにその少し体温の高い身体を離して面をかぶる。
そして逃げるようにその場を離れた。
(…意気地がねぇな、俺…)
触れてしまったら、
受け入れられてしまったら、
きっとあれじゃ済まない。
『キスをする場所にはそれぞれに意味があるの、知ってるか?』
思い出す、竜の、言葉。
友愛。
親愛。
忠愛。
じゃあ…口唇への口付けは。
「…ホントに、」
祭りの喧騒は疾走する耳には入らなかった。
……………
冷たい風にひやりと頬を撫でられて、はっと我に返る。
触れた口唇を指で撫でて、頭に一気に血が上るのを感じた。
「…っ、」
脳裏をよぎる光景に頭を振る。
すると安全だったはずの太い枝から足が滑って。
「…ん?…あ、お…うわぁあっ!」
完全に傾ぐ身体。
頭は既に真っ白。
腕を振っても効果はなくて。
「…旦那、探したよ?」
聞きなれた忍の声。
身体が何かにぶつかった気配はないし、どこも痛くない。
きつく閉じた目をゆっくりと開ける。
「…あ、れ…?」
落ちたのは忍の腕の中で。
状況に頭が追い付かないで居ると、
忍が耳打ちした。
「風来坊の腕の中じゃなくて悪いね、旦那」
また落ち着いた熱が一気に上がって、じたばたもがいて忍の腕から逃れる。
「旦那?」
「かっ、…帰るぞ佐助っ」
すっかり上ずってしまった声に、後ろで笑う気配がした。
……………
さっさと逃げるように歩いていく主人の背中に言葉を投げる。
あの様子では恐らく聞こえまい。
「……さっさと風来坊に攫われちまえばいいのに」
まぁ、それはそれで自分も困るのだが。
(…逢いたい、)
と思うだけで。
夜桜の綺麗な季節には、
それをみんなで愛でようと大抵祭りが催される。
上田とて例外ではなく、その地に足を踏み入れた時、
風に舞う桜の花びらと共に喧騒は伝わってきた。
すっかり賑わった露店の軒先。
かけてあった狐面を取って、
「おじさん、これ、ひとつ」
そのまま人込みに紛れこんだ。
……………
「佐助っ、」
楽しそうに指差す姿を目で追いながら、
やれやれと佐助は頭を掻いた。
賑やかなことは嫌いじゃないが、
如何せんこの主人はこういうところにくると子どもらしさを存分に発揮してします性質らしい。
「あんまりはしゃぐと転ぶぜ、旦那」
ほら、ちゃんと前向いて歩きなって!
そんな注意も耳に届いているやら。
「…ん?佐助、何だそれは」
指を刺したのは顔を隠すようにつけている狐面。
「ほら、だって俺様忍だし、表立って大騒ぎはできないっしょ」
腑に落ちない表情をされたが、それ以上追求の言葉はなかった。
(旦那のことだから、祭り楽しいしどうでもよくなったのかも)
それはそれで考え物だと思っていたら、
いつの間にかその姿が人波に消えていて。
「…やっべ、」
小さく呟いて走り出した。
……………
背中から急に押されて踏み出してしまった。
周りを見渡せどもすっかり忍の姿を見失ってしまっていた。
「うむ、」
とは言え悩んでいては勿体無い。
折角の夜桜祭りなのだから。
人ごみが少し緩やかになって、足を止める。
はらりと舞い散る桜に目を奪われる。
その花びらを追った視線の先、狐面をつけた、男。
それは確かに忍と同じはずなのに、忍ではないと分かる。
「…け、」
名を呼ぶことを赦さず、腕を引かれた。
でもそれは導くように優しい。
何も言わないその背中に、自然と声を掛けることは憚られて。
人込みを抜けた後そのまま境内に向かって、
引かれていた手は一時離れた。
大きな樹に足をかけた時また手が伸びて。
「…おいで、」
引き寄せられるように手を伸ばしたら難なく身体を抱き上げられた。
「よっと…ほら、綺麗だろ?」
手を借りながら見下ろした世界は。
「…これ、は…」
風に乗って聞こえる祭りの音。
人のざわめき、笑い声。
照らし出された夜桜が闇夜に浮かび上がっているようで。
「…綺麗、だ」
呆然と呟いたら、隣で笑う気配がした。
つけていた狐面は退けられ、人懐っこい笑みを浮かべている。
「…慶次、殿」
「祭りは高いところから眺めるのが一番綺麗ってね」
特に夜桜は。
そう風来坊は笑う。
つられるように笑みが浮かんで、
見渡す限りの景色を存分に楽しむことにした。
……………
傍らで楽しげに景色を眺めるその表情に嬉しくなった。
「…此処に来たのはさ、足が、向いたからなんだ」
ふわりと夜桜が馨るから。
思い出したのだ、その姿を。
無邪気に笑う紅がそこには居て。
ただそれだけが、この脚を突き動かした。
「…会いたく、なったんだ」
隣に視線をやればキョトンと見上げてきた瞳が、
ふわりと、柔らかく笑うから。
「…幸村、好きだよ」
アンタが、好きなんだ。
それがどれだけ伝えられるのか、伝わっているのか分からないけど。
「…某も、」
小さな声でそう呟くから。
見上げてくる瞳が愛しくて、ゆっくりと触れるだけの口付け。
温もりを確かめるように強く抱き締めて。
でもすぐにその少し体温の高い身体を離して面をかぶる。
そして逃げるようにその場を離れた。
(…意気地がねぇな、俺…)
触れてしまったら、
受け入れられてしまったら、
きっとあれじゃ済まない。
『キスをする場所にはそれぞれに意味があるの、知ってるか?』
思い出す、竜の、言葉。
友愛。
親愛。
忠愛。
じゃあ…口唇への口付けは。
「…ホントに、」
祭りの喧騒は疾走する耳には入らなかった。
……………
冷たい風にひやりと頬を撫でられて、はっと我に返る。
触れた口唇を指で撫でて、頭に一気に血が上るのを感じた。
「…っ、」
脳裏をよぎる光景に頭を振る。
すると安全だったはずの太い枝から足が滑って。
「…ん?…あ、お…うわぁあっ!」
完全に傾ぐ身体。
頭は既に真っ白。
腕を振っても効果はなくて。
「…旦那、探したよ?」
聞きなれた忍の声。
身体が何かにぶつかった気配はないし、どこも痛くない。
きつく閉じた目をゆっくりと開ける。
「…あ、れ…?」
落ちたのは忍の腕の中で。
状況に頭が追い付かないで居ると、
忍が耳打ちした。
「風来坊の腕の中じゃなくて悪いね、旦那」
また落ち着いた熱が一気に上がって、じたばたもがいて忍の腕から逃れる。
「旦那?」
「かっ、…帰るぞ佐助っ」
すっかり上ずってしまった声に、後ろで笑う気配がした。
……………
さっさと逃げるように歩いていく主人の背中に言葉を投げる。
あの様子では恐らく聞こえまい。
「……さっさと風来坊に攫われちまえばいいのに」
まぁ、それはそれで自分も困るのだが。
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プロフィール
HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。