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不意にフラッシュバックする、

知っているようで知らない、過去の、記憶。





※現代版風来坊と竜の話。
某方の本を友人に借りたがために出来た話。
きっと「記憶」を持っている人間は他にも居るはずだ。某方の本とは一切何の関係もありませんが。
続きは折りたたみ↓↓

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『……ねぇよ、俺が……た』

いつも見えるのは背中だけで、でもそれが自分だと
(少なくとも自分とどこかしら繋がったものだと)いうことは自明のことで。
その時何を思ったか知らない。
けれど、その背中に見た決意に僅かに胸が軋んだ。

理由は忘れたが、授業が半ドンになった帰り道。
ゆっくりと視線を上げて飛び込んできた赤信号に慌ててブレーキを握る。

「…ってぇ…」

急ブレーキに慶次の背中に思い切り頭をぶつけた政宗は、恨みがましい低い声で小さく唸った。

「わー、ゴメン、大丈夫か!」

「大丈夫じゃねぇ」

軽くぶつかった頭をさする政宗。

「ごめんて!大丈夫だろ?政宗の頭石頭じゃん」

背中にぶつかったあの重い一撃。
「石頭」に二重の意味を含めたことに気付いたのか、
政宗は困ったように笑う慶次の背中に拳ひとつお見舞いした。

「あでっ!」

そうこうしているうちに信号が青に変わって、慶次はまたペダルを踏み出す。
政宗と二人乗りで帰ることはたまにしかないが(なんたって右目がいつも傍に居る)、
そういう時は決まって政宗は慶次に背中を向けて座る。
背中の方から変わっていく景色を見るのが好き、らしい。
地理はよく解らないが何となく走っているといつも見慣れた景色に出て、
頻繁に同じ道を通ることはない。

(まぁ、近道遠回り…色んな道通った方が楽しいし)

それに関して政宗は慶次にまかせっきりである。
だから、どの道を通ってもいいと慶次は解釈する。

(あー…でも、あの猫の通り道を走りぬけた時はさすがに怒られたなぁ…)

あれは手足スレスレのとにかく細い道だった。
そんなことをぼんやり思い起こしながら走っていたら、
こつんと「ちゃんと走れ」といわんばかりに小突かれた。

「…本ト、アンタって抜かりねぇよな…」

「an?」

風を切って走る。
前方に坂道が見えて小さく嘆息。

「…政宗、落ちるなよ?」

とりあえずひとつ声を掛けて立ち上がると、慶次は勢いよく前かがみに自転車をこぎ始めた。
さすがは帰宅部ながら助っ人に引っ張りだこの慶次だ。
後ろに政宗を乗せていながらも快調に坂道を登っていく。
以前、政宗も自分の部に誘ったことがあった。
だが、答えは他の部と同じくノーで。

「…てめぇは昔っから、風来坊だもんな」

『よぉ、風来坊』

坂道の頂上に着くか着かないかのところでフラッシュバックする。
目の前の男は不思議な格好をしていて、

(豪奢な…なんだ、これ)

長い…大きな刀を持っていて。
その先で振り返って笑う、のは。

「…まさ、む、ね…?」

隻眼の、男。

「慶次っ!!」

政宗の声にはっとする。
自転車は既に坂道を下り始めていた。
すとんと座ると、その背に政宗が寄りかかる。
早鐘を打つような慶次の心音。
落ち着いた政宗の心音。

「ったく、てめぇは前世からそんなんだったんだろうよ」

風の向くまま気の向くまま、本性なんて掴めなくて。
時折何かに意識をとられている時があるのを政宗は知っている。

「じゃあ、前世とやらでも俺と政宗はこんな感じだったのかも?」

楽しげに慶次が笑えば、「前世の俺に同情するぜ」と嘆息が返ってきて。
慶次はひでぇなぁと呟いてこつんと政宗の頭に自分の頭を軽くぶつけた。

「事実だろ、お前は誰にも縛られねぇんだ」

政宗の言葉に。昔こんな言葉を言われたことがあったような錯覚。
朝に見た夢のような亡霊のような過去が。

『……ねぇよ、俺が……た』

ぼやけた言葉が、鮮明に脳裏に響く。


『俺は誰にも従わねぇよ、俺が、そう決めた』


折れた長い刀と、いたるところから血を流す傷だらけの後ろ姿。
その腕(かいな)に、蒼を血染めの緋色に染めた身体を抱いて。



(違う、昔からとっくに縛られてるんだ、)



アンタに。
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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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