忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

不覚にも、

自分が抱いたのは子どもじみた嫉妬。
惚れた弱みとはこういう時に発揮されるのか。




※現代版蒼主従話。蒼→高校生、右目→社会人。なので右目は普通に蒼を年下扱い。その⑦。ネタ提供はまたもや永月さんのト/モ/コ/レ。★節目の100本目★続きは折りたたみ↓↓

拍手[0回]


眠れない夜はいつも小十郎のところにもぐりこむ。
最初は口煩く言われたが、最近は特に何も言われなくなった。
その代わり逆襲という名のアレコレに巻き込まれても何も言えなくなったが(時折同意の上もあるわけで)。
そういう時、特別甘やかされている自覚はある。
それも気が狂いそうなほど、ゆっくりと丁寧に余すところなく徹底的に甘やかされるのだが。
昨夜のアレコレを思い出して一気に顔が熱くなる。
それを振り払うように慌てて頭を振った。
沈んだシーツの海から腕を伸ばして傍に居るはずの姿を探す。
だが、何にも触れないしぶつからない
(機嫌がいい時は伸ばした手を取られてはキスと舌が這う感触に半ばどうにかなってしまうのだ…余談だが)。
不思議に思い顔を出すと、いつも傍にあるその姿はなく。

(…あぁ、通りで寒いわけだ)

言葉にならない呟き。
ゆるゆると起きだして、服を羽織ると部屋を出た。

静まり返った家の中。
いつもの休日なら、テレビの音と時折新聞を折り返す音、それと。

(コーヒーの、匂い)

ペタペタと音を立てながら他の部屋を覗いてみたが、小十郎の姿はない。

「…どこ、行った?」

いつもとは違うその休日はそんな疑問と共に始まった。
とりあえず身支度を整える。

(出かけるにしても、俺に声掛けないで出て行くか…?)

自分が忘れているだけだろうか。
それとも気がつかなかった、とか。
リビングのソファ(小十郎が珍しくお気に入りで買ったやつだ)に座り電話をかける。
コール7回を越えたところで留守電に切り替わった。
「…ったく、何のための携帯だよ、」
いつも小十郎が自分に言っていることを呟く(遊びに夢中になると携帯の着信にいつも気がつかないのだ)。
電源が入っていなかったわけでもないし、着歴は残るはずだ。
携帯を閉じてテレビを見る。
耳に障る時計の秒針。自分でも気付いている。
秒針の音は気に障るくせに、テレビの音は耳を素通りしていくのだ。
またすぐに携帯を開けてメールを送る。
「どこ、行って、んだ、」
送信。
今度は携帯をソファに放ってそのまま横になる。
眠くもないのに目を閉じて。
返信はない(まだ送信してから数分しか経っていない)。
返信に時間がかかる時は電話を寄越すのだが、それもない。
痺れをきらして携帯を取るとまた電話をかける(最初の電話からまだ20分程度しか経っていない)。
コールが5回を越えたところで、不機嫌な声が聞こえた。
「お前、今どこに居んだ?」
言ってやりたい文句は多々あったが、とりあえず一番重要なことを聞く。
すると小十郎は素っ気無い声で「“質屋”」と手短に答えた。
むしろ用件がそれだけなら切るぞ、とばかりの空気を感じ取った。
「そっち行くからな、」
「“は?”」
小十郎が切る前にこっちから切ってやった。
小十郎の言う“質屋”で思い当たるのはひとつしかない。

(小十郎の親戚の…えーと、そうだ!島津の爺さん)

一度だけ会ったことのある気さくな爺さんだ。

「…つーか、あいつ何を質に入れやがったんだ?」

携帯、財布、家の鍵をポケットに。
廊下からリビングのテレビが消えているのを確認して家を出た。

家から自転車で15分。
自転車は小十郎が使ってないから仕方なく走る。
そのうち自分が何故急いでいるのかも分からなくなってきた。

(ただ、何も言わずに小十郎が消えてた、だけ、だろ)

不機嫌な表情で目的地に到着。
そこで飛び込んできた光景。
小十郎は、居る。
だが。
「なん、」
自分に気付いて呆れた表情になる小十郎に近づく。
「何でお前、それ、」
小十郎は質屋の着物を着ていた。
その姿に鼓動が跳ねるのは不意打ちと急いできた制だと理由付けて自分を落ち着かせる。
「そんなに急いで、何かあったのか?」
よく考えればメールに電話、明らかに急いできましたとばかりの自分をみれば当然の疑問だった。
幸いにも今は客が居ない。
「何かあった…つーか、起きたら居ないし…」
視線を小十郎から逸らして文句を言えば、小さく小十郎が嘆息したのが分かった。
「…昨日、“明日は島津の爺さんの手伝いに行く”って言っただろ」
「聞いてない、」
少なくとも自分の記憶にそれがあったら、今こんなことをしているはずがない。
小十郎の手に、くしゃりと前髪を掻き上げられた。
「言ったろ、夜、に」
なんだか嫌な予感がする。
「…夜?」

「お前が俺のとこに潜り込んでき「あーっ!!」

小十郎の手を払って声を上げる。
今ここに客が居なくて良かった。
お陰さまで今朝振り払った記憶が蘇って。
触れる吐息。
鼓膜を揺らす甘い低音。
「…っ、そっ、の…タイミングで言われて、俺が聞いてるわけねぇだろっ」
それは恐らく小十郎もよく知っている。
だから余計に腹がたつ。
睨んでみても小十郎にはまったく効いた様子はなかった。
「夕方には終わる、それまでおとなしく待ってろ」
「何だよ、その夕方って…アバウトだな」
「爺さんの性格だ、」
そう言って小十郎が肩を竦めて、そんな様子に笑った。
「一緒に帰るだろ、」
それともまた走って帰るのか?と言われれば、当然自転車があるのに走って帰る必要などない。
「お前が前だからな、」
小十郎は笑って、また髪をくしゃりと撫でた。






※バイト後、買い物をして仲良く自転車二人乗りして帰ったらしいです。
PR

この記事にコメントする

お名前
タイトル
メール
URL
コメント
絵文字
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
パスワード

祝★100本!!!

お疲れ様です♪!
そして待ってました質屋話(笑)!ネタが出来た瞬間が明確に思い出せちゃうのでなんかにまにまします(笑)

改めまして、100本お疲れさまでした!
毎日見れなくなっちゃうのは寂しいですが、これからも通わせていただきますね♪
応援してます(^^)v!!
  • 永月
  • 2009/09/09(Wed)18:59:09
  • 編集

無題

  • 永月
  • 2009/09/09(Wed)19:34:49
  • 編集

この記事へのトラックバック

この記事にトラックバックする

カレンダー

03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30

プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

ブログ内検索

カウンター