ｍｏｎｏｃｕｂｅ家庭菜園を始めました。

[PR]

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2024/04/27 (Sat)

家庭菜園を始めました。

慣れない手つきで世話をする。
新品のデジカメなんて構えて。

※現代版蒼主従話。蒼→高校生、右目→社会人。なので右目は普通に蒼を年下扱い。その⑥。ネタ提供は永月さんのト/モ/コ/レ。続きは折りたたみ↓↓

[0回]

「…お土産、」

そう言って小十郎から手渡されたのは、家庭菜園のキットだった。

朝起きると小十郎は居なかったが、テレビの音とコーヒーの香りがして安堵する。
顔を洗い着替えてリビングに行くと、その先のベランダに目が留まる。
ベランダに屈む、でかい背中。
その奇妙な光景に、そう言えば昨日家庭菜園のキットをもらってきたことを思い出した。
近づいて膝でその背中を小突いた。
「おはよ、」
「あぁ、おはよ」
見上げて笑う小十郎の髪をくしゃくしゃと乱すと、何事だ？とばかりに訝しげな表情に変わる。
「それ、何？」
「トマト、だと」
説明書らしきものを見ながら小十郎は言った。
「小十郎、コーヒーは？」
「飲む」
コーヒーメイカーからいい香りが漂う。
取り出して二人分注いだ。
いつものゆったりとした休日。
ちらりとベランダに視線をやる。
訂正。
新しい仲間も増えた、休日の朝。

(…大きくなれよ、)

なんて呟くように思った。

水遣り当番は交替制。
当番を統一した方が分かりやすいから、と洗濯当番に合わせた。
小十郎は元よりこういうことは好きらしく、つられるようにそれを楽しみにしている自分が居る。

「早くできねぇかな、」

ベランダに屈んで言ったら、そんな早くできたら苦労しないだろ、と小十郎の笑う声が降って来た。
「ほら、いくぞ」
今日は電気屋に出かける予定だった。
長らく愛用していたコーヒーメイカーの調子が悪いことには気付いていたが、
それもとうとう手の施しようがなくなって、
それに伴い小十郎も気落ちした(こういうところは外見に似合わず可愛いと思う)。
「あ、そういや電球も切れてた」
車の助手席で指折り数えていたら、メモしておけ、といつもの小言。
無視した。
その後小十郎とあーでもないこーでもないと言いつつ、
目的のものを購入(最終的な決定権は物にも因るが小十郎だ、出資者だし)。

「…あ、お前、こういうの分かるか？」

エスカレーターを下りながらそう言われて手を引かれたのはデジカメのフロア。
「あー…こういうのは慶次なら詳しい」
旅好きのクラスメートだと説明すると思い至ったのか納得したようだった。
「うーん…」
慶次との会話の記憶を手繰り寄せるも、
結局あーでもないこーでもないを繰り返すのを見かねた店員さんの助け舟により無事購入。
「…最初からこうすりゃ良かったんじゃないか…？」
それにしてもこんなに一気に大きな買い物をするのは珍しい。

「―――なぁ、デジカメどうすんだ？」

車に戻って小十郎に問えば、
「折角だから撮ろうと思って」
「？」
「…ベランダの、アレ」
心なしか言いにくそうに口にする様子に笑って。
成る程、合点がいった。
「そうならそうと言やぁいいのに」
笑いを引きずったら横から小突かれた。

水遣り時々米のとぎ汁。
甲斐甲斐しく世話を続けた成果か、芽を出したヤツは少しずつ日々成長している。
まだまだ、赤い実をつけるのは先だろうが。
今日もベランダに屈むでかい背中。
カシャ、とシャッターを切る音。
「この間撮ったばっかじゃなかったか？」
ベランダに近づいて笑えば、
「違うよ、ほら」
手渡された新品のデジカメ。
そこに写る、澄んだ青空とうっすらかかる虹。
「上手いだろ」
なんて笑う。
悔しいが、…上手い。
「…まぁ、80点」
答えたら立ち上がった小十郎に軽く頭を叩かれた。
こうして小十郎に頭を叩かれるのは嫌いじゃない。
ついと見下ろした先に、土から顔をだした芽。

「…いいだろ、」

やらねぇよ、と笑って呟くとベランダを後にした。

この記事にコメントする

この記事へのトラックバック

この記事にトラックバックする

カレンダー

2024/04

S	M	T	W	T	F	S
	1	2	3	4	5	6
7	8	9	10	11	12	13
14	15	16	17	18	19	20
21	22	23	24	25	26	27
28	29	30

リンク

devinette　(僕の政宗様こと永月さんブログ)

ニッケル水素電池　(城攻め旅記録はコチラ)

UTA-KATA (切夜様)

管理画面

新しい記事を書く

カテゴリー

未選択 ( 3 )

ぼやき ( 73 )

戯言 ( 10 )

『BOEDER LINE』　world map ( 3 )

プロフィール

ＨＮ：

瑞季ゆたか

年齢：

性別：

女性

誕生日：

1984/02/10

職業：

引きこもり人嫌いの営業AS見習い

趣味：

読書・音楽鑑賞・字書き

自己紹介：

◇2006.11.16開通◇

好きな音楽：Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん（自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本：長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別！僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中！某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。