monocube
今日というその日に、
※永月さん宅での蒼主従南国&姉川デートから。ほんのり昨日のお誕生日風味。続きは折りたたみ↓↓
揺らぐ視界。
暗示でもかけるように歪んだり回ったりする天井に、気分が悪くなって目を閉じる。
油断していた。
完全に油断していた。
薩摩からの帰途、薩摩の強烈な日差しに焼けた腕が痛んでそれを煩わしいと思っていた矢先に熱を出した。
ここしばらく風邪をこじらせたこともなかったし、熱をだすという感覚は実に久しぶりだ。
だからこそ、こう身動きが取れなくなってしまったのだが。
(…気分悪ィ…)
いつもであれば、はしゃいでいるからだと右目の小言が飛んで来そうなものだが、
さすがに体調を考慮してくれたのだろう。
忙しなく寝床が整えられ、現在に至る。
(色々土産話してやろうと思ったのにな…)
こうも勝手がままならないと気分まで滅入ってきて。
(…小十郎はどこに行ったんだ、あの阿呆!)
そう心の中で叫んだらタイミングよく襖が開いた。
「お呼びになりましたか?…悪態つきで」
たまにこの右目、人(主に自分)の心を読む力があるんじゃなかろうかと疑いたくなる時がある。
「…別に、呼んで、ねぇ」
そう突き放すように答え、背を向ける。
背中の向こうで笑う気配がした。
すると首元に冷たい指が触れてびくりと思わず振り返る。
その反応に、驚かせて申し訳ありません、と右目は苦笑する。
慣れてくるとその指の冷たさが心地良くて目を伏せた。
「この熱も一過性のものでしょう、慣れない環境では致し方のないこと」
右目はゆっくりと穏やかにそう言う。
その低音は心地良く鼓膜をくすぐって。
「…土産話をしてやろうと思ったのにな、」
薩摩行きの道中で姉川にも寄った。
祝言をあげるところに遭遇して面白いものをたくさん見れた。
(あの風来坊からの提案ってのが腑に落ちねぇが、今回に関しては大いに感謝してる)
いざ薩摩に着けば、あまりにも奥州と違う景色に物珍しいものも多くて。
「きっと連中も楽しみにしてますよ、」
右目は柔らかい声でそう応えて。
「あぁ、でも日焼けは勘弁だな、痛くてかなわねぇ」
と笑えば、また柔らかい声で応えてくれる。
「なぁ、小十郎…お前は楽しかったか?」
問うて右目を見上げると、軽く黒髪を撫でてくれて。
「はい、楽しかったですよ」
政宗様の言う通り、たまには羽を伸ばすのも悪くない。
その応えに満足げに頷く。
「それと、熱が引いたら、ちゃんとお祝いをいたしましょう」
右目は目を伏せて言う。
「…お祝、い?」
熱に浮かされた頭がうまく情報を処理してくれない。
右目の言ったことをうまく理解できず、訝しげな表情をすれば右目は楽しそうに笑う。
「一日遅れの、貴方の誕生日を、です」
はっとした。
今回の珍しい遠出にすっかり忘れていた。
「…そう、か」
軽く額を押さえる。
「連中も貴方と騒ぎたくてうずうずしてますよ」
兵士たちのその光景が容易に想像できた。
「じゃあ、勿論無礼講だよ、な?」と言えば、「そう仰ると思いましたよ」と苦笑された。
特別に堅物の右目から許可は貰った。
これで心置きなく騒げるというもの。
「早く、熱が引くように」
額に掛かる髪を避けて、額に口付けが落とされる。
それを甘んじて受けながら、これじゃあ益々熱が上がりそうだとぼんやり思った。
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好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。