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懐かない猫の話。

いつもそう言って誤魔化すのは、自分のことだ。




※現代版蒼主従話。蒼→高校生、右目→社会人。その③。保護者と猫舌。何となく続きは折りたたみ↓↓

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それはある種の直感に似ている。
違和感を感じて、慣れない香りに自分の直感を確認する。
露骨に嫌そうな表情をすれば、嫉妬する女みたいだなと小十郎に笑われた。
それにイラっとして足を蹴ってやった。
それから足をとられて「足癖悪いな、誰に似たんだ?」とひっくり返されるのは5秒後。
小十郎に違和感を感じる時は、身内に会って来た時だ。
小十郎の、ではない。

(…俺の、だ…)

いつもと変わらない素振りも、ふと目を離すと小十郎は一瞬だけ憂いを帯びたようなやるせない表情をする。
最初はその事実を知らずに違和感だけが先行しては不安になって行き先を問いただした。
すると決まって小十郎は「世話の焼ける懐かない猫の話をしに、な」と頭を軽く撫でて応えた。
それでも触れる体温と向けられる悪戯な笑みに安堵していたのは事実だ。

「…で、何か、言ってたか?」

小十郎に目を合わせて問うのが憚られて俯くと、顎をぐいと持ち上げられる。
「話す時はちゃんと目を見ろ」
小十郎は真っ直ぐに見返しながら、
「何かは言われた、だが素直に従う気はない」
そう言って手を離した。

「まぁ、素直でいい子には程遠いが、そう曲がってはない」

それで十分だろ、この話はもう終わりだと言わんばかりに言葉が途切れて。
素直に嬉しいというのも何だか癪で、ぎゅっと拳を握り締めた。
「…なぁ、コーヒー飲むか?」
部屋に向かって声を掛ければ、「どういう風の吹き回しだ?」と笑う声がして。
「ついでだ、ついで」
むきになって言い返し、コーヒーを入れた。
着替え終わってリビングに戻ってきたのを見計らって、カップを置く。
「…もし、だ」
向かいに座り、両手でカップを持ちながらそう切り出した。

「もし、俺がそのカップに毒を入れてたらどうする?」

いつも違和感を感じた日に思うことがある。
本来ならば、自分が負うべきことを小十郎が変わりに負って。
“身内”に何を言われているのかは知らないが、それは決していいことではあるまい。

(…俺は異端児で、“身内”としちゃあ恥ずべき存在で、)

これ以上負わせたくなくて、傷つけたくなくて。

(自分が嫌われるのが怖いから)

だから、小十郎が自分から離れるように仕向ける方法を考えて。
本当は離れられないのは自分の方なのに。
「…随分、意味の分からない質問だな」
小十郎は眉間に皺を寄せて見返してくる。
「まぁ、一種の反抗期だと見なすな」
どれだけ寛大な意見だ。
「致死量の毒が入ってても、か?」
すると小十郎は沈黙する。
時折目の前に置かれたカップを眺めて。
「―――とりあえず、あと3分待て、」
沈黙のあと、小十郎が言う。
どう言葉を返すべきなのか考えているのだろうか。

「…俺が猫舌なのは知ってるだろ」

あ。
そういえば。
「本当に毒が入っているかはさて置き、飲まなきゃ分からないだろ」
そんなのは、と大したことでもないように言い返された。
その言葉に、思わずふっと笑ってしまった。


とりあえず分かったことは、目の前の小十郎と離れるというのは到底無理だということ。






※何を書こうとしていたか見失った...
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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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