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何よりも口にしたかった言葉は、

自らの意志で閉ざした。

その言葉を口にできるほど子どもではなくなってしまった。
いや、むしろそれを口にしてしまった後の恐怖に、自分はきっと耐えられない。


そう、識っているから。


「…お前、真田幸村とはどうなんだ?」

忍は少しだけ目を丸くして、
「何いきなり、そういうのは風来坊の台詞なんじゃないの?」
と視線を投げてくる。
「あいつじゃ、意味がねぇ」
「それは、境遇が、って意味でか?」
沈黙を肯定と解釈した忍は小さく溜息をついた。
「別に何ら変わらないさ」
「お前は…それ、を告げようとは思わねぇのか?」
忍は軽く頭を掻いたが、迷った様子もなく「ないね、」あっさりと答えた。
「それに俺とアンタだって境遇は同じでも微妙に違う、少なくともうちの旦那は一国の主ってわけじゃないしね」
紅と自分の立場の違い。
それが大きいことはよく分かっている。
黙ったままくしゃりと髪を書き上げる様子に、

「アンタはそれ、を何度告げようとしたんだ?」

酷く冷静な忍の声。


「…多すぎて数えるのを諦めた」


ぼんやりと外に視線を遣り、そしてゆっくりと目を伏せた。




※蒼主従の話。永月さんとのナリメから…果たして救いはあるのか。なんか長くなったので折りたたみ↓↓

拍手[0回]

今思うのは、あの頃の自分が如何に無知で子どもだったかということ。
けれどそれ故に何でも口にできたあの頃の自分が少しだけ羨ましいと思う。
小十郎は昔から心配性で過保護で小言も多かった(今も大して変わってはいないが)。
それは自分が幼い頃に経験したことが大きく影響しているのだとは思うが。

「小十郎にとって、一番大事は政宗様、それも致し方のないこと」

そう穏やかに笑う小十郎に、
「俺も…俺にとっての一番もこ、」
そう言い返そうとして遮られた。
いつしか「その言葉」は止められるようになっていて。
無言で首を振る小十郎はいつも苦笑していた。
どこか申し訳ないと思いながらも、そうしなければならないとでも言うように。

「…何で、言っちゃいけねぇんだ」

そのことで喧嘩腰になったことも多い。
「政宗様、貴方はいずれ奥州を統べるお方です」
膝を折り、真っ直ぐに見上げる小十郎の目はいつだって真剣で。
「貴方が一番に思うのは国のこと、そして民のことにございます」
「確かに国のことも民のことも考えてる、大切だってのはわかってる」
そんなことは小十郎以外にだって再三言われていたこと。
父の背中を見ていた自分とて、幼いながらに感じ取っていたつもりだ。
「でも、俺の傍で支えてくれてるのはお前じゃねぇか!」
自分にとって小十郎が特別なことは、小十郎だって気付いているはずなのに。

「何でそのお前を想うことがいけないんだっ…」

小十郎はその言葉にも動揺した様子は一切なく静かに言葉を紡ぐ。

「政宗様、すべては奥州のためとお思いください」

その言葉も態度もずっと変わることはなく。
だからいつしか「その言葉」すら口にしなくなって。
それでも変わらす小十郎は傍で自分を支え、辛いことも嬉しいことも分かち合ってきた。
そして奥州を統べ天下を獲ると自分で決めたその時に、言葉を閉ざすことを決めた。
ずっと言いたかった、たった一言。
けれどその言葉を自分は口にしてはいけないと承知しているから。

(一番大事なんだ、とは口にできないから)

「お前が一番大事だという俺の、その右目がお前なんだ、勝手に傷つくんじゃねぇぞ」
「政宗様、」
振り返らぬと決めた。

「天下も大事なものも…俺はどっちも掴んでみせる、諦めるつもりはねぇ、だから俺の命が尽きるまでお前が俺の背中を守れ、」

振り返り、自分を見上げるその姿をしっかりと見返して。
「…な、小十郎」
口許に笑みを滲ませ名を呼ぶと、小十郎も応えるように笑って。
「無論、貴方の背中を他に任せる気は毛頭ございませぬ、貴方が望むのであればそのために小十郎のすべてを懸けましょう」
「―――それでいい、…必ず、だ」
その時はそう口にするので精一杯だった。
あくまでも右目として、傍に繋ぐことしか。


「なぁ、てめぇの目には小十郎はどう映る?」
頬杖をつきながら忍に問う。
その視線を向けることなく、問うているのか分からないほど軽く。
だが帰ってきたのは問いの答えではなく。

「じゃあアンタは戦場に出るたび恐れるのか?」

右目を失うのではないかと。
「小十郎がそこまで弱いとは思わねぇが、」
そっと心臓を押さえて。

「心の底がすぅっと冷えていく…あの感覚には未だ慣れねぇな」

それは大切だと、特別だと気付いてしまった故であり。
ずっと言いたかったたった一言を伝えられなくなることに対する恐怖でもある。
「…右目の旦那だって死ぬつもりはないさ」
忍はそう言って立ち上がる。
「行くのか」
声を投げれば、
「あんまり旦那の惚気話聞いてると、こっちまでアテられちゃいそうだから」
と肩を竦められた。
その言葉に苦笑する。
確かに、面倒なことを聞かせてしまったものだ。
「あくまで俺様個人としての感想だけど、」
背を向けたまま、腰に手を当てた忍は言う。
「アンタを見てる目は…一度だって主人を見てるって感じはしなかったぜ?」
一瞬、忍が何を言ってるのか分からなかった。
「いつだって優しくて穏やかで、そう、」
その言葉は、はぐらかされた問いの答え。


「ありゃ、愛しい者、を見てる目だった」


そう言うなり軽く手を振って忍は夜の闇に消えた。
呆然とその背が消えた方を追っていたが、くしゃりと頭を掻いた。

言葉にできない代わりに、いつだって、想っていてくれたのか?

「…そういうのは…面と向かって言われるより、クる、な」

小十郎の知らなかった一面を覗き見した気分になって申し訳なく思う。
でも、後悔はしていない。

(…いつか、俺も…ちゃんと、伝える…)

それがいつになるのか、気が遠くなるほど先の話だとしても。



(お前が一番大事なんだと、言葉で)
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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
33
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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