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射抜くような眼差しは、

真っ直ぐに昏く深い曇天に向けられていて。
それを止めるのは憚られた。
だからただ、その横顔を見ていた。

縁を歩いていて不意に雲行きの怪しい空模様に気付いた。
湿気を吹くんだ風が頬を撫でて、益々風は勢いを増しきっと嵐を連れてくる。

「…まずいな、」

雲の流れが早い曇天を睥睨して踵を返した。
「片倉様、俺たちも手伝います」
「おう、」
兵士たちの厚意を素直に受け取って畑に向かう(正直とても一人では回りきれない規模なのだ)。
既に風は勢いを増してきていた。
補強用の板や棒をしっかりと結わいて、雨ざらしにならぬよう覆いその端を固定する。

「揃って居ねぇと思ったら此処に居たのか、手伝うぜ」

楽しそうな様子で竜は腕をまくり近くの兵士を作業を手伝い始める。
一国の主がやることではないと止めるべきだが、
気分屋の主の機嫌を損ねる真似は得策とも言いがたい。
ましてや今は。

(早くしねぇと、俺たち…はともかく政宗様も雨ざらしになりかねない)

「おい、少し作業の手を早めるぞ!」
その声に曇天を見上げた兵士達はその理由を察して作業の手を早めた。
結局、終わる前に雨に降られるのだが。
「来たぞ来たぞ!」
「この雨は激しくなるな」
どこか楽しみにしているような声に(主の気性によく似た連中が多いのだ)、
一喝して作業の済んだものから早々に屋敷に戻るよう指示を出す。
そして。

「政宗様、このままでは更に雨が酷くなりましょう」

畑に立ち尽くしたまま真っ直ぐに曇天を見上げている主は、
まるで見ているもの以外すべて聞こえても見えてもいないようで。
「…政宗様、」
けれどそれを邪魔することは憚られて。
主の気の済むまで、ただ傍に居ることしか出来なかった。

「…竜が、通るぞ」

うわごとの様に呟く声がして、それに応えるように空が光る。
口許に好戦的な笑みを滲ませながらも、視線は射抜くように鋭い。
そして訪れる強く凪ぐ風と刺さるような雨。
少しずつ体温が奪われていくのを感じて、
二度目に空に閃光が走った瞬間に手を伸ばしてその身体を腕の中に閉じ込めた。
刺さる雨から守るように。

「…小十郎…?」

今気付いたとばかりの反応に苦笑しながら、「…さぁ、屋敷へ」そう主を促して。
「すげぇ強い雨風だ…嵐なんていつぶりだ?」
「さぁ、いつぶりでしょうね」
見上げてくる主の背中を押しながら屋敷に向かって足を速める。
もうすっかりずぶ濡れになってしまった。





※昨日の対…というか、屋敷に入るまでの話。竜は竜に焦がれる。右目も竜に焦がれる。

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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