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恋文

先立つ不孝をお許しください。

自分勝手な睦言は、天高く灰となって消えた。




右目が残した恋文を介した双竜の話。(言葉遣いはかなりデタラメ)※死ネタ注意! 続きは折りたたみ↓↓

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小十郎の部屋を整理していたら、文筆箱の中から見つけた一枚の文。
いつかの商人がからくり箱と置いていった物だった気がする。
先に部屋を綺麗にしてしまった喜多はそれに気づかなかったようだ。
喜多から荷物を預かりふとそんなことを思い出して、反対端の組木をずらして引いたらそれが出てきたのだ。

今は何もない小十郎の部屋。
入口でぼんやりと立っていたら、喜多が隣に並んで。
その気配にすぐに気づけない程度には思いを馳せていたらしい。

「綺麗なものでしょう?」

喜多の言葉は片付けた部屋を指しているのではない。
喜多から預かった小十郎の持ち物は驚くほど少なく、片付けも半日で終わってしまった。

「まるで、自分の行く末を悟っていたかのようで」

横目で見た喜多はその表情に懐かしさすら滲ませて座敷を見ていたが、前で組んだ指が微かに震えていて。
すぐに目をそらして気づかないふりをした。
それすらも喜多は気づいていそうだが。

「潔さはあいつの美徳だ、それこそ"らしい"じゃねぇか」

袖に腕を入れて歩き出す。
その背中に。

「…それでも、残り香を探してしまうのは遺された者の我が儘なのでしょうね」

呟いた喜多の声は当分頭から離れそうにない。

先立つ不孝をお許しください。
そう綴り始めた文をどうしても開けることができなくて、しばらくその存在を忘れた。
刻一刻と情勢は変化し、悲しみや空虚感に浸る暇すら与えてくれない。
右目の空席は少なからず支障をきたしたものの、約束を違えるわけにはいかない。
そうして周辺が落ち着いた頃には、既に次の月へと変わっていた。
残された畑の世話に精を出す兵士たちを見ながら、はた、とあの文を思い出したのだ。

文を手にとって深呼吸ををする。
そして綺麗に折り畳まれたそれを広げる。
それは先立ったことに対する謝意から始まる、恋文だった。


先立つ不孝をお許しください
貴方と命尽きるまで共に駆けると胸に刻んだ誓いが果たせぬことが何よりも無念でなりませぬ
思えば貴方の博役として初めてお目通り致しましたのも、まだ寒さを残す春先でございました
暗く表情を見せない貴方が少しずつ表情を見せるようになり、その度にどれほど嬉しかったことか
その姿を誰よりも傍で見守る喜び、そしていつの頃か小十郎の命は貴方と出会うために生まれたのだとそう思うようになりました
貴方は強くなられた
貴方が泰平の世を築くのもそう遠くないことでしょう
その竜の背をお守りできたことが小十郎にとって何よりの誇りでございます

この文を綴る背筋の伸びた姿が見えた気がした。

貴方の背を命尽きるまでお守りできなかった無念と、心残りがひとつございます
それは貴方に伝えること叶わなかった言葉
言葉は呪
それが貴方の目を曇らせてしまうことを恐れて言えずにおりました
しかしながら小十郎の言葉が貴方の目を曇らせるなどと、なんとも思い上がったことか
身の程を弁えぬ言葉、どうかご容赦ください

そして続く言の葉は。

政宗様、貴方をお慕いしておりました
けれどそれは乙女が抱くそれには程遠い、醜く胸を焦がすほどの想いでございます
本来ならばこのように文に書き残すことさえ赦されぬ想いでありましょう
故にそれを残していくことに罪悪感を抱かぬわけもありません
けれど貴方がこの文を見つけ、この想いに縛られてくれたらと望む自分も居るのです

政宗様、死して尚貴方を望む我が儘をお赦しください
そしてこの文を跡形も残らぬよう燃やしてください
それが、小十郎の最後の望みです

愛しき貴方様


「……赦さねぇ。赦してたまるか」

その文はその日に庭で燃やした。
愛し、と形を残した文の欠片は灰になって高く煽られる。

「いいか、小十郎」

いつか自分がこの世に未練なくその場所に行く時まで、その恋文はお前が持っておけ。
そして再会したその時は、薄い紙切れではなくお前のその声で囁いて欲しい。

「…俺は欲深くて、我が儘なんだ」

そして今度は未来永劫傍にいろ。
背中を守る右目としてではなく、優しい腕で抱きしめてくれる想い人として。


「…ずっと、傍に」






end.
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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
33
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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