monocube
monoには秘めたイロがある。
見えないだけでそこに在る。
数え切れないそれは、やがて絡まり色彩(イロ)になる。
さぁ、箱をあけてごらん。
箱庭(ナカ)は昏(クラ)く底なしの闇色(モノクロ)。
深い闇に融けたらいいのに。
日々の戯言寄せ集め。
当サイトは作者の気まぐれにより、自由気ままに書きなぐった不親切極まりない戯言の箱庭です。
暖かい陽射しと、
風に淡い桜色がひらり。
目を遣ったその桜の下に、幻を見た。
『…また、逢えたらな』
奥州の、蒼。
その言葉が、不意に脳裏に過ぎって。
桜の花はどうでも良かった。
何となく胸騒ぎがして、気がつくと奥州に脚が向いていた。
道中視界に入る春の景色に、
花見と言い訳が出来そうだと安堵する。
杞憂ならいい。
この不安は「あの時」と似ている。
首に提げたお守りを押さえた。
呟くように口唇に名を乗せようとした時。
「意外と近くに居たんだな、前田の風来坊さんよ」
桜に紛れた迷彩。
何故、とは問わない。
「…一番最初のお出迎えがアンタとはな」
少し残念な表情をしたが、迷彩は少しも表情を動かさなかった。
「さて、この俺に何の用だい?」
「用があるのは俺じゃない、…いや、そもそも用事があるわけでもないのか」
迷彩は軽く考える仕草をしたが、
すぐにそれをやめたらしい。
「ま、とりあえずアンタがどこにいるかは突き止めたし」
「俺を探してたのに、用がないってのも寂しいねぇ」
わざとらしく嘆息すると、初めて迷彩が笑う。
桜の枝を手折らぬよう器用に桜の中に隠れて。
「…近くに居てくれて助かったぜ、小さな労力でたっぷりお返しを請求できる」
楽しげな迷彩に、
「…それ、一体誰に請求する気だ?」
胸騒ぎが、した。
「察するに、アンタも気付いてるんだろ?」
主君の命令なら、「請求」なんて言葉は要らない。
主ではない誰か。
この迷彩が、気紛れだとて動くだけの。
(そんなのは、一人しか居ねぇだろっ…)
「あちらさんにアンタに会う気はないみたいだぜ?」
アンタが生きてどこにいんのか、それが知りたかったらしい。
珍しいよな、あんなこと言うなんて。
迷彩が笑う。
会って言葉を交わしたのを思い出すように。
「…なぁ、前田の風来坊さんよ」
アンタの胸騒ぎは優秀だよ、と。
胸騒ぎと奥州に向いた脚。
迷彩は、音もなく地面に降り立って。
けど、
「そんなに動揺するくらいなら、目を離さない方がいいぜ?」
見上げてくる、射る様な瞳。
「アンタと違って、手を伸ばせばいつでも捕まえられる」
それくらい、近くに居るぜ?
主語は言わない。
言わなくても分かっている。
無意識に奥歯を噛んだ。
「…さて、と、俺様は報告に帰るとするかね」
いつものように笑うことも忘れて、露骨に表情を変えてしまった。
それを見、また楽しそうに迷彩は笑い、
「…野暮なこと、しなさんなよ?風来坊」
風のごとく、消えた。
自分の足では追いつくことは叶わない。
焦燥感だけが、だた膨らむばかりで。
「――――…っくしょぉっ…」
風にゆっくりと枝をしならせる桜の下。
呼吸を忘れてしまうほど、夢中になって走りだす。
余裕なんて無い、なんて格好悪いんだ。
それでも、
『…また、逢えたらな』
(逢えたら、じゃなくてさ)
笑みを含んだ声で、軽く手を上げた後ろ姿。
「…花見、どころじゃねぇよな、こりゃ」
あの、蒼に。
何よりも先に、あの蒼に。
自分の居所を気にしてくれている。
あの正直で、不器用な。
愛おしい、蒼。
それからどうやって蒼の元にたどり着いたのか、
正直覚えていない。
それだけ無我夢中だったってことで、許してもらえばいいか。
畳に横たわる後ろ姿。
「藤の花を見に来たぜ、」
ゆっくりと目を開ける蒼に笑って、
感触を確かめるように柔らかい髪を指で梳いた。
前回の続き…というか、裏話。
実は風来坊、迷彩にこんなこと言われてました、ぞっと!(笑)
目を遣ったその桜の下に、幻を見た。
『…また、逢えたらな』
奥州の、蒼。
その言葉が、不意に脳裏に過ぎって。
桜の花はどうでも良かった。
何となく胸騒ぎがして、気がつくと奥州に脚が向いていた。
道中視界に入る春の景色に、
花見と言い訳が出来そうだと安堵する。
杞憂ならいい。
この不安は「あの時」と似ている。
首に提げたお守りを押さえた。
呟くように口唇に名を乗せようとした時。
「意外と近くに居たんだな、前田の風来坊さんよ」
桜に紛れた迷彩。
何故、とは問わない。
「…一番最初のお出迎えがアンタとはな」
少し残念な表情をしたが、迷彩は少しも表情を動かさなかった。
「さて、この俺に何の用だい?」
「用があるのは俺じゃない、…いや、そもそも用事があるわけでもないのか」
迷彩は軽く考える仕草をしたが、
すぐにそれをやめたらしい。
「ま、とりあえずアンタがどこにいるかは突き止めたし」
「俺を探してたのに、用がないってのも寂しいねぇ」
わざとらしく嘆息すると、初めて迷彩が笑う。
桜の枝を手折らぬよう器用に桜の中に隠れて。
「…近くに居てくれて助かったぜ、小さな労力でたっぷりお返しを請求できる」
楽しげな迷彩に、
「…それ、一体誰に請求する気だ?」
胸騒ぎが、した。
「察するに、アンタも気付いてるんだろ?」
主君の命令なら、「請求」なんて言葉は要らない。
主ではない誰か。
この迷彩が、気紛れだとて動くだけの。
(そんなのは、一人しか居ねぇだろっ…)
「あちらさんにアンタに会う気はないみたいだぜ?」
アンタが生きてどこにいんのか、それが知りたかったらしい。
珍しいよな、あんなこと言うなんて。
迷彩が笑う。
会って言葉を交わしたのを思い出すように。
「…なぁ、前田の風来坊さんよ」
アンタの胸騒ぎは優秀だよ、と。
胸騒ぎと奥州に向いた脚。
迷彩は、音もなく地面に降り立って。
けど、
「そんなに動揺するくらいなら、目を離さない方がいいぜ?」
見上げてくる、射る様な瞳。
「アンタと違って、手を伸ばせばいつでも捕まえられる」
それくらい、近くに居るぜ?
主語は言わない。
言わなくても分かっている。
無意識に奥歯を噛んだ。
「…さて、と、俺様は報告に帰るとするかね」
いつものように笑うことも忘れて、露骨に表情を変えてしまった。
それを見、また楽しそうに迷彩は笑い、
「…野暮なこと、しなさんなよ?風来坊」
風のごとく、消えた。
自分の足では追いつくことは叶わない。
焦燥感だけが、だた膨らむばかりで。
「――――…っくしょぉっ…」
風にゆっくりと枝をしならせる桜の下。
呼吸を忘れてしまうほど、夢中になって走りだす。
余裕なんて無い、なんて格好悪いんだ。
それでも、
『…また、逢えたらな』
(逢えたら、じゃなくてさ)
笑みを含んだ声で、軽く手を上げた後ろ姿。
「…花見、どころじゃねぇよな、こりゃ」
あの、蒼に。
何よりも先に、あの蒼に。
自分の居所を気にしてくれている。
あの正直で、不器用な。
愛おしい、蒼。
それからどうやって蒼の元にたどり着いたのか、
正直覚えていない。
それだけ無我夢中だったってことで、許してもらえばいいか。
畳に横たわる後ろ姿。
「藤の花を見に来たぜ、」
ゆっくりと目を開ける蒼に笑って、
感触を確かめるように柔らかい髪を指で梳いた。
前回の続き…というか、裏話。
実は風来坊、迷彩にこんなこと言われてました、ぞっと!(笑)
PR
この記事にコメントする
この記事へのトラックバック
- この記事にトラックバックする
カレンダー
カテゴリー
最新記事
(02/10)
(05/06)
(03/21)
(02/23)
(01/13)
プロフィール
HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。