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未完成交響曲02

廻る…それは、過去の魂と記憶を持つこと。

廻った順に
刑部・佐助→慶次→元親→家康→政宗→幸村→元就→三成→小十郎

BASARA転生話・2話は元就のターン。


※小政、佐幸、親就、家三を意識しているのでご注意を。またゲーム・舞台内容リンクも若干あるのでこちらもご注意を。続きは折りたたみ↓↓

拍手[1回]





本殿を軽く掃いて、榊の葉を振る。ざらつくような音が鼓膜を揺らす。この境内で、この社の中での生活が自分にとってのすべてである。面倒なことも厄介な者もすべて駆逐し、常に自分の小さく狭いこの世界が平和で乱れなければそれでいい。

(どうせ我もここでこのまま死んでいくのだから…)

父も祖父も曾祖父も皆そうだった。
「酒持ってきたぜぇ、元就!」
この男を除いては。
幼馴染みでまだまだひよっこの酒屋三代目元親だ。親でもない鬼島津(鬼のように酒豪故についたあだ名だ)の酒屋を元親が継いだことで、あるかないかの薄い縁が明確になってしまった。かつてより鬼島津の酒屋にはこの社での神事に関わる酒一切を頼んでいる。祖父とも旧知の仲で、その酒を見極める慧眼については定評がある。それは自分も良く知っているし、信用に足るものだと思っている。だがこの男が社に出入りする理由を作ったことに対しては不信しかない。
「その馬鹿でかい声を何とかしろ、元親。そして我の許可なく本殿へ上がるな」
「どうせてめぇは俺に許可なんぞしねーだろうが」
「ふん、よく分かっているではないか」
確認の為元親は風呂敷を解いて銘柄を見せる。軽く頷くとそれをまた丁寧にしまう。酒を受け取って下がろうとした時、反射した光に目を奪われる。眩しさに思わずぎゅっと目をつぶった時、反射的に手を離した。

「元就っ!」
元親の声。瓶の割れる音。けれどそれ以上に。
鈍い光は輪刀と碇がぶつかった先から火花のように散る。
「…元、親」
そうだ、この男と向かい合ったことなど数えきれないほどあるではないか。自国、安芸の安寧のために、天下よりも何よりもこの男と飽きる程に刀を交えた。それはこの胸を掻き乱す、この胸を焦がすほどの強い記憶と想いだ。思わず膝をつく。
「元就、大丈夫か!?おい、元就っ!」
元親が酒で濡れる床も気にせずに傍らに膝をついて肩を掴む。この男は、こう、は呼ばない。
「元就っ…!」
風呂敷から飛び出した瓶の破片を手に、元親の首に突きつける。

「…そのように、我を、呼ぶな…長曾我部よ」


元親は変化にさほど驚きはしなかった。肩を掴んでいた手はゆっくりと外れて。
「…そうか、今のが、そうだったか」
その声が少し落胆しているようにも思えたのはきっと気のせいだ。完全に元親の気配が離れて、手にした破片を捨てると浅く指が切れて酒の水たまりにぽとりと滴る。その手首が強い力で引かれて顔を上げると、切れた傷口を元親が舐めた。ざわり、と心が疼いた。
「我の血が毒であったら良かったものを…」
そうだったら、元親を今ここで葬ることができたのに。
「新しいの、ちょっと店から取ってくるわ」
元親はそう言って手首を放すと本殿から出て行った。あれだけの物音がしても屋敷の人間は様子見にも来やしない。この家はいつもこうだ。

『アンタはそういうのを蔑ろにし過ぎたんだ』

情け。絆。それを蔑ろにしてきたと元親は言った。周りに誰もいなかったなんてことはあり得ないだろう、と。
「…これが現実。蔑ろにするほどの情も絆もあったためしがない」
飛んだ破片を拾い風呂敷の中に戻すと、酒が滴るのも気にせずに風呂敷を持ち上げ外に投げ捨てた。

(この酒も気休め程度の清めにはなるであろう…)

元親が舐めた傷口を酒で濡らすと、ピリッと痛んだ。元親が同じ銘柄の酒を持参しすぐに帰ろうとするのを止めた。あの時の元親の反応から察するに、恐らく元親も同じ魂の記憶を持っている。

『…そうか、今のが、そうだったか』

そして自分よりも先にそれを経験しており、自分が同じであることを知っていた。ならばこの記憶についても知っていることがあるはず。

「長曾我部、聞きたいことがある」
そう座敷に上がるよう促すと、数秒の後、元親は素直にその言葉に従った。
胡坐をかいて座る元親はただ黙って話が始まるのを待っている。いくら賢くないと言えども、何を聞かれるかくらい予想に難くないはず。一度目を伏せ、そして目を開けどんな嘘やごまかしも見抜くように元親を見、口を開く。
「我が取り戻した…というのは些か語弊があるやもしれぬが、その記憶の件、貴様が知っていることをすべて吐け」
元親は、最初にぽつりという。
「それを、“魂と記憶の廻り”と言うらしい」
「魂と記憶の廻り、か」
なるほど、確かにその通りだ。千年以上昔の魂が廻ったのが今だったというわけか。

「俺が廻ったのは三番目だった。元就、お前で七人目だ…いや正しくは八人目か」
「貴様以外にも居たのか」
元親は軽く頭を掻く。
「知ってるだろうが俺はお前みたいに賢くもないし、難しいことは苦手でな。これについてそう詳しくは分からねぇ。分かってるのは、廻った連中の中で刑部とやらと真田の忍が特別だってことと、俺たちの他に四人同じだってことくらいだ」
知ってるだろう?と元親は他の名前を口にするが、そんなことはどうでも良かった。自分が此処を出ない限り、所詮は関わり合いになどならない。だから廻った者同士などと生温く慣れ合うつもりなどない。それよりも捨て置けなかったのは、ある男の名前。

「長曾我部、貴様、刑部、と言ったな?」
「あぁ、そういやお前と共謀した奴だったか」
「は、共謀とは何とも…あれは我にとってそう使い勝手の良い駒ではなかったわ」
東照と凶王との関ヶ原を思い出す。あの男が一枚噛んでいるとすれば、何とも不快なわけだ。
「刑部に会わせろ、あの男が何を考えているのか、それを問いただす必要がある」
「俺はそいつに直接会ったことはねぇ。そうやら隠居してるらしくてな」
「使えぬ駒め」
悪態をつくと元親が立ち上がる。
「だが、辿り着くルートは知ってる。元就、取引しようぜ」

「取引?」
「俺を一緒に連れて行く、その代わりに俺はお前に辿り着くルートを教える」
元親をしばし見上げてから腰を上げる。この男、「取引」という言葉の意味を一度辞書で引くといい。そんなもの、取引にすらならない。
「馬鹿は廻ってもやはり馬鹿か」
「なっ…!」
「さっさと支度をしろ、足がなければ何もできぬであろうが」
刑部に話を聞く。すべてはそれからだ。

元親は携帯でどこかに連絡を入れると、行先も告げずに目的地へと車を走らせた。途中落ち合った真田の影を拾い、山道を進む。
「本当にこの先に奴はいるのか?」

「嘘言ったってしょうがないでしょうが」
応える影は頬杖をついて大して変わらない外の景色を見ている。
「嘘しかつけぬ影風情の台詞とは思えんがな」
影はそれに言い返しはしなかった。
程なくして寂れた庵が見えた。元親が車を止めると、降りて歩き出す。元親も同じく車を降りたが、後を追っては来なかった。庵に入るとギシギシと床が軋む。あの男は昔と同じく足が不自由なようだ。気配で自分の存在には気付いているのだろうが、もてなすどころか振り返りもしない。そしてこの男は、自分が廻ったことを自分よりも先に知っていた。その事実が何とも耐え難い。
「…久しいな、大谷よ。二度と会いたくはなかったが」
刑部は笑った。
「こんな僻地に参るとは、やれご苦労なことよ」
「貴様にねぎらわれる苦労などない。大谷、貴様に聞きたいことがある」
刑部はようやく振り返った。
「この記憶の廻り、貴様の仕業か」
元親はこの男と真田の影が特別だと言った。
「それは違う。我もあやつも、気が付けば此処に居た。廻ったのがこの時代だった故は、ぬしの好きなように思えばよい。かつてのようにすべてを駒とするか、今生の絆を大事とするか」
ここですべてが分かると思っていた。なんという無駄足だ。
「そういえばあやつも、我との時間ほど無駄なものはないという顔をしていた」
刑部は目を細めて嘲う。

「人の心は変わりやすい、ぬしの心に他の思いは生まれいずらぬか?」

かつての問い。

「―――人の心とは…変わらぬものよ、」

何故か脳裏を過ったのは元親の顔。
「大谷、貴様のひねくれた心の奥底に秘めたるもののようにな」
恐らくまだ目覚めていない凶王を、この男はかつてと同じように想っている。
踵を返す。この男との邂逅には何の意味もなかった。何の結果も生まれなかった。…何も?込み上げてくるものを噛みしめて嚥下する。自らの喉元に食い込んだ指先

「…変わらぬ、何も」
確認するように吐き出した言葉。
「元就っ…」
元親の声が蹂躙する。心配そうな表情が癇に障る。近づいてくる元親を無視して歩く。
「話は済んだか?」
「気は済まないがな」
即答する。
「―――…元就、」
背中に投げられた真剣な声。足を止め振り返って少し後悔する。

「お前は、俺の名前…呼んでくれねぇのか?」

元親、と呼んでいた。昨日、いや、あの瞬間まではそれに違和感を感じなかった。けれど今出てくるのは「長曾我部」というかつての呼び名。
「記憶ってのは厄介だな、それは、俺たち自身じゃねぇのにな」
くしゃりと頭を掻いた元親はそう呟いて車に戻っていく。追い抜かれて離れていく背中に、口を開く。

「―――時が来れば、貴様をそう呼ぶこともあるやもしれぬ」
元親が足を止める。その単純さに、不意に口許が緩んだ。
「今のところその予定は万に一つもあり得ぬがな」
立ち尽くす元親を追い抜いて車に乗る。助手席に座り、深く沈んで目を閉じる。
「…何とも無駄な時間であった」
一度背後から影の視線を感じたが、影が何か口にすることはなかった。元親が車に戻ってくる。低いエンジンの音がして、車が走り出す。社に戻っても、訪れるのは変わらない日々。きっとこのまま、何も変わりはしないのだ。
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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
33
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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