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未完成交響曲03

廻る…それは、過去の魂と記憶を持つこと。

廻った順に
刑部・佐助→慶次→元親→家康→政宗→幸村→元就→三成→小十郎

BASARA転生話・3話は幸村のターン。


※小政、佐幸、親就、家三を意識しているのでご注意を。続きは折りたたみ↓↓

拍手[1回]





チリン。首元で音が鳴る。それは新しく始まる生活の門出を亡き両親が祝ってくれているような気がした。
「4号館…」
目視で建物を探していると、ふらっと間の前に現れた人に対応できず、そのまま背中に突っ込むことになった。
「ぶっ…」
鼻を押さえて下がると、相手と目が合う。
「す、すまない…」
黒髪から覗く目は、右を眼帯で覆う隻眼。
「…いや、アンタどこ行くんだ?」
「4号館を探している…」
すると相手が笑う。
「奇遇だな、俺も1限は4号館の外国語だ」
こっちだ、と案内するように歩き出す背中を慌てて追う。
「俺は真田幸村と言う」
「戦国武将と同名か、俺は伊達政宗だ」
「そんなところまで同じとは、不思議な縁だ」
大学に入学して最初に仲良くなったのが、政宗だった。それからもう二か月以上経って、季節は初夏だ。
「TH、θだ。…ったく、ホント上達しねぇな、お前」
政宗の言葉に何も言えない。そこに仕事帰りの佐助が顔を出す。
「お手柔らかに頼むよ、独眼竜」
「キツいくらいな方が滾るだろ?」
政宗が横目で佐助を見ると、佐助は少し不機嫌な表情になる。政宗は自分にとって大切な友人だが、佐助は政宗が嫌いなのだろうか…そう佐助に問うたことがあった。だが結論を聞く前にはぐらかされてしまった。佐助とは孤児院で兄弟のように育ったが、物心ついた時にはすでに佐助に勝てなくなっていた、口では特に。弟なんだから勝てなくていいんだよ、と佐助は笑うが、何でも隠すのは違うと思う。
「あんまり無責任なこと口にしないでくれる?」
「それはアンタの過保護、か?」
目の前の問題を解かなければと思うのに、まるで本の内容が頭に入ってこない。二人のやり取りが気になって。
「…そうだよ、俺様の過保護だ」
一拍の沈黙の後。
「そうか、…アンタの本音を初めて聞いた気がするぜ」
謝りこそしなかったが、政宗の言葉はさっきと違って柔らかく、佐助は何も言わなかったが少しだけ空気を和らげて出て行った。
「進んだか?」
「政宗っ…どの、」
「どの?」
「あ、いや、何でそんなことを言ったのか……ではなく、佐助のことだ」
政宗は退屈そうに指でペンを回している。
「政宗は、佐助が嫌いか?」
そんなことを言われるのは心外だ、とばかりの政宗の表情にこっちが心外だ。政宗が佐助に投げる言葉は敵意までは至らないが柔らかいとは言い難い、何か含んだような言い方をする。
「好きか嫌いかどっちかってんなら、好きではない。…が、どちらかと言うとアイツの方が俺を嫌いなんだろ」
それは呆れるを通り越して、ずっとそうだった事実を口にしているようだった。
「そうか、」
これはいい加減に佐助の真意を聞きださねばなるまい。
「何に気合いれてんだか知らねーが、とりあえずこのページの読解はさっさとしろよ。とりあえず今日はそこまで頑張ったら相手してやる」
「本当か!?」
政宗には武術を教えてもらっている。以前よく分からない理由で絡まれたことがあったが、その時政宗が助けてくれたのだ。それは俗にいう“喧嘩”だったわけだが、政宗の立ち回りに卑怯なところはなくむしろ正々堂々と純粋に相手を制す正当なものだった。

『これを変に崩して使うと自分が痛い目見るからな。まだガキの頃に親父の補佐してる10歳上の奴がいてな、そいつが強くて憧れてどうにか教えてもらった。力だけで相手を倒すのは格好悪いから、相手を懲らしめる戦い方で相手の心を折ってやれってな』

その話をする政宗はとても嬉しそうで、誇らしげで。気が付くと言葉は出ていた。

『俺にも、教えてはもらえないか…?』

それから政宗には何かとご褒美代わりに相手をしてもらっている。まだ始めたばかりで敵わないが。
「ならばすぐにでも終わらせる!」
そう改めて取り掛かると、苦戦しつつも予定より早く終わらせることができた。
「アンタのそういうとこ、昔っから変わらねぇよな…嫌いじゃないぜ」
政宗が笑う。
「昔から、とは?」
「…いや、言葉のあやだ、気にすんな」
この数か月で知られてしまうほど自分は分かりやすいのだろうか。確かにいつも佐助には分かりやすいと言われるが。

それは、暑い、夏の日。
講義は1限からで、遅刻するかしないかの瀬戸際。時計を見る時間さえ惜しんで走る。嗤うように揺らぐ陽炎。時折フラッシュバックする既視感。自分は何のために走っているのか。

(遅刻しないため、だろう…?)

はて。
果たしてそうだったろうか。背中に背負うのももどかしくて両手に強く握りしめた朱の二槍。焦燥感の理由はよく分かっていたはずだ。何よりも大切な、自分の最終目的。唯一無二の願い。それは。

(それは…?)

腕がしびれるほどの太刀と、一度体感したら忘れられない覇気と、この魂を熱く滾らせるそれは。見つめた背中は。

「…政宗、殿…」

今自分がいる世界がどこなのか。なぜ走っていたのか。それは、覚えている。けれどこの心は。魂が呼び合うように。

「…相変わらず暑っ苦しい野郎だな、真田幸村」

蝉の輪唱。焼けるように熱いアスファルト。視線の先に見える彼が、かつての唯一無二の好敵手であるということに気がついたのは、政宗の言う通り、暑苦しい夏の日のことだった。
「政宗殿…そうか、貴殿は此処にいたのだな…」
今までの日々は覚えている。けれどかつて共に刀と槍を交えたのが懐かしい。再会を祝うようなチャイムの音は、皮肉にも遅れまいとしていた1限開始のチャイムだった。
「なっ…!」
「積る昔話は後回しだ、行けるな?」
「無論っ」
隣に並ぶ政宗と共に教室に急ぐ。さっきまでの不安は吹き飛んで、今、心を満たすのはまたこうして好敵手に出会えたことに対する喜びだけだった。しかしそれも苦手な外国語の講義が始まって打ち砕かれるのだが。

遅いと言っていた佐助の帰りを待つ。政宗が言っていたように、自分が“廻った”ことを早く知らせたかった。明日になれば分かることだが、その時間がもどかしい。佐助は一体どんな顔をするのだろうか。
「ただいまぁ…て、あれ、旦那?まだ起きて…」
「佐助!」
目が合って、佐助が分かるように表情を変える。廻る魂と記憶は共鳴する。既に廻っている佐助ならばすぐに気付くはずだ。
「旦那…?」
呼び方は変わらないが、それは確かに確認だった。
「そうだ、佐助」
かばんを落とした佐助に強く抱きしめられる。佐助がこんな感情を表に出すのは珍しい。
「旦那…旦那」
「あぁ、佐助、遅くなったな」
ぎゅうと力強く抱きしめるから嬉しくなって、同じくらい力を入れたら佐助が声を上げた。
「いたたたっ…ちょ、手加減してよ旦那!」
「あぁ、すまぬ」
「その口調…昔に戻っちゃったのかい?」
離れた佐助が苦笑する。そういえば大学でもやたらと人の視線を感じたが、この口調のせいだろうか。
「今までのことを忘れたわけではないが、この話し方の方がしっくりくるというか、落ち着くのだ」
政宗との会話には何の支障もなかったのだし。
「はは、旦那らしいや。…改めて、お帰り、旦那」
「あぁ、」
「わざわざ起きて待ってなくても良かったのに」
「どうしてもお前にはすぐに知らせたかったのだ。…少し政宗殿には聞いたのだが、佐助、この魂と記憶の廻りについてお前の知っていることを聞かせてくれ。お前は特別なのだろう?」
最後の一言に佐助の舌打ちが聞こえたのはきっと気のせいではない。その証拠に心なしか佐助の表情が不機嫌に見える。
「疲れているなら、すぐにとは言わないが…」
「いや、そうじゃなくて。分かりやすく話すようにするから、とりあえずコーヒー…は、寝れなくなりそうだからココアか何か淹れるよ」
佐助はかばんを拾ってソファに投げると、キッチンでココアを淹れ始めた。
15分後、二人で向かい合って座る。
「さて、どう話したもんか…。独眼竜からは何を聞いた?」
「政宗殿からは…」
自分が廻ったのは七人目だということ、他に廻ったのが誰か、そして佐助が特別ということ。政宗から聞いたのはその三つだ。
「ふむ、まぁ、大方聞いたってことか。確かに独眼竜の言ったことは事実だ。独眼竜とは情報交換もしてたし疑う余地はない」
そこまで言って佐助はコーヒーを一口。
「お前が特別だというのは何なんだ?」
「…俺はね、刑部…関ヶ原西軍の参謀・大谷と同じく、気が付いたら“此処”に居た。旦那たちとは違って、普通に生活してるうちに突然廻ったわけじゃない」
「なんと…」
それは自分が廻った佐助との記憶一切を知りながら、知っている今の繋がりで接してくれていたというのか。それが自分を案じてのことだとしても、申し訳ないことをしたものだ。
「だから、隠居してる大谷に代わって、俺様が廻った人間に接触して情報交換してたの。そういう意味じゃフリーライターってのは動きやすいしね」
「大谷殿は、お前より色々と知っているのか?」
「さぁ?食えない性格だから、そう簡単に色々教えちゃくれないさ。けど、あの男は誰が廻るのか察知できる能力がある。それだけで特別だろ?」
ココアを両手で抱えながら情報を整理する。
「かつて大谷殿はそんな能力を持っているような節があったような気がするが…。佐助、お前にもそんな特別な能力があるのか?」
「いやいや、そんなこと昔の俺様にだってできないさ。できたら大谷か俺様一人で十分でしょ」
「…う、そうか…そうだな」
思わず黙ってココアを一口。
「誰がどのタイミングで廻るかも分からない。廻る理由も分からない。もしそれに特別な意味があるとしても、その意味だってどれほどのものか」
佐助は頬杖をついて、溜息を吐き出すように言う。
「お前は、廻った…いや、“此処”に居たことを後悔しているか?」
「…え?」
佐助の表情が一瞬凍ったように見えた。

「…いや、何でもない。某は今日より明日が楽しみなのだ。廻る前にはなかった人との繋がりが作る時間は、きっと充実した時間になるはずだ」

嬉しい楽しいはもちろん、辛い苦しいだって自分の肥やしになると信じている。そうして、生きたいと思う。
佐助には常々、能天気過ぎだとかもう少し人を疑えと言われていたが、人を疑うことは苦手だ。
「…まぁ、そういう良くないところは俺様が持つって言ったしね…旦那らしいや」
佐助がしょうがないなぁと笑う。
「無論、隣には佐助、お前がいることが前提だ」
キョトンとした佐助の顔。何か変なことを言っただろうか。

…あ。

ココアの残りを一気に飲み干して、勢いよく立ち上がる。
「旦那?」
「もう寝るっ…おやすみ」
カップをそのままに部屋に逃げ込むように入って、後ろ手にドアを閉めた。
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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
33
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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