monocube
monoには秘めたイロがある。
見えないだけでそこに在る。
数え切れないそれは、やがて絡まり色彩(イロ)になる。
さぁ、箱をあけてごらん。
箱庭(ナカ)は昏(クラ)く底なしの闇色(モノクロ)。
深い闇に融けたらいいのに。
日々の戯言寄せ集め。
当サイトは作者の気まぐれにより、自由気ままに書きなぐった不親切極まりない戯言の箱庭です。
癒えない傷み、知らない闇。
自分の言葉を後悔してはいない。
間違っているとも思わない。
けれど、起こした波紋に気付かぬまま、すべて理解っていると思い込んでいた。
「あぁ、やっぱり、」
座敷に顔を出したのは成実だった。
「梵から休めって言われたんじゃなかったっけ?」
成実の言葉に苦笑する。
気遣いは有り難いし、仲間を信頼していないわけでもない。
だが何かをしていないと落ち着かない。
傷ついた声を表情を思い出すから。
(そう思っていることが、甘いということに他ならないのだろうが)
文机の傍らに成実は膝をつく。
「けど、珍しいよなぁ…梵があんな落ち込んでるの」
どんな喧嘩したの?小十郎サン、と文書を手にするのを止めずに成実は問う。
「…大したことじゃない」
そう、当たり前のことを口にした、だけ。
すると「小十郎サンの"大したことじゃない"はあてにならないからなぁ」と言われた。
視線を鋭くするも、こういうところは主てよく似ている成実だ。
文書を盾に躱された。
「それで全部だ、」
なにやら考え込む成実は生返事で立ち上がる。
「成実?」
「あぁ…そうか、これはアレだな」
すっきりしや様子で成実が手を打つ。
「人払いした、あの時と同じ」
人払いをしたことなど何度もあるが、成実のいうそれがある出来事を示唆しているのだと分かった。
「成実、それは、」
主が実の母親と二人きりになった、たった一度の邂逅。
「あの時、梵と義姫様がどんな話をしたのかは知らない、」
そもそも言葉を交わしたのかすらも。
自分はその時戦が迫っていたことのもあり斥候とのやり取りに気を取られていた。
だから、知っているのは主がこの腕に倒れたという事実のみ。
それ以外は知らされていない。
「けど、壮絶だったのは確かだろうな」
「…お前は、何を知っているんだ?」
そう問いた途端、自分を見下ろす成実の目が少しだけ鋭くなったような気がした。
「…知らないわけだよ、俺が梵に言われて口止めしたんだから」
今もそれは有効なのかな、と成実は呟く。
目の前のこの男は自分の知らないことを知っている。
あの時のことを。
そう思うとじっと座っていることが出来なくなる。
立ち上がる勢いを感じ取った成実は両手を突き出して落ち着くように促された。
「…あの時、梵、毒飲んでた、」
予想だにしない、言葉。
「真実は闇の中だけど…多分、義姫様の仕業」
「なんと…」
「義姫様が違うといったところで、梵がそうだと言えば、そう」
その時既に、そういう仕組みになっている。
「いくら母親だって言っても、発言の重さは一緒にはならない」
はっとした。
『一国の主と一兵士と、それの何処が対等で居られましょう』
それを口にしたのは、誰だ?
口許を手で押さえて再び浮かした腰を落ち着ける。
それを見て成実はようやく手を下ろした。
「…多分梵は、その時のことを死んでも自分から口にはしないだろうけど」
じゃあ文書はちゃんと預かったから、それとこのことは内緒で。
そう言い成実は座敷を出て行った。
言わない闇。
癒えないのは口にできないから。
気付いていてもいなくても、放っておいた傷みは、内側から苛んでやがてそのものが朽ちていく。
それを抱えたまま。
「…どれだけの時間を、」
共に過ごしてきただろうか。
人の心を明確に知る術はない。
けれど、ずっと傍に居ると、そう誓って見守ってきた他でもない自分が。
(どうして…気付けなんだ)
※後悔先に立たず。次が、多分、最後。
間違っているとも思わない。
けれど、起こした波紋に気付かぬまま、すべて理解っていると思い込んでいた。
「あぁ、やっぱり、」
座敷に顔を出したのは成実だった。
「梵から休めって言われたんじゃなかったっけ?」
成実の言葉に苦笑する。
気遣いは有り難いし、仲間を信頼していないわけでもない。
だが何かをしていないと落ち着かない。
傷ついた声を表情を思い出すから。
(そう思っていることが、甘いということに他ならないのだろうが)
文机の傍らに成実は膝をつく。
「けど、珍しいよなぁ…梵があんな落ち込んでるの」
どんな喧嘩したの?小十郎サン、と文書を手にするのを止めずに成実は問う。
「…大したことじゃない」
そう、当たり前のことを口にした、だけ。
すると「小十郎サンの"大したことじゃない"はあてにならないからなぁ」と言われた。
視線を鋭くするも、こういうところは主てよく似ている成実だ。
文書を盾に躱された。
「それで全部だ、」
なにやら考え込む成実は生返事で立ち上がる。
「成実?」
「あぁ…そうか、これはアレだな」
すっきりしや様子で成実が手を打つ。
「人払いした、あの時と同じ」
人払いをしたことなど何度もあるが、成実のいうそれがある出来事を示唆しているのだと分かった。
「成実、それは、」
主が実の母親と二人きりになった、たった一度の邂逅。
「あの時、梵と義姫様がどんな話をしたのかは知らない、」
そもそも言葉を交わしたのかすらも。
自分はその時戦が迫っていたことのもあり斥候とのやり取りに気を取られていた。
だから、知っているのは主がこの腕に倒れたという事実のみ。
それ以外は知らされていない。
「けど、壮絶だったのは確かだろうな」
「…お前は、何を知っているんだ?」
そう問いた途端、自分を見下ろす成実の目が少しだけ鋭くなったような気がした。
「…知らないわけだよ、俺が梵に言われて口止めしたんだから」
今もそれは有効なのかな、と成実は呟く。
目の前のこの男は自分の知らないことを知っている。
あの時のことを。
そう思うとじっと座っていることが出来なくなる。
立ち上がる勢いを感じ取った成実は両手を突き出して落ち着くように促された。
「…あの時、梵、毒飲んでた、」
予想だにしない、言葉。
「真実は闇の中だけど…多分、義姫様の仕業」
「なんと…」
「義姫様が違うといったところで、梵がそうだと言えば、そう」
その時既に、そういう仕組みになっている。
「いくら母親だって言っても、発言の重さは一緒にはならない」
はっとした。
『一国の主と一兵士と、それの何処が対等で居られましょう』
それを口にしたのは、誰だ?
口許を手で押さえて再び浮かした腰を落ち着ける。
それを見て成実はようやく手を下ろした。
「…多分梵は、その時のことを死んでも自分から口にはしないだろうけど」
じゃあ文書はちゃんと預かったから、それとこのことは内緒で。
そう言い成実は座敷を出て行った。
言わない闇。
癒えないのは口にできないから。
気付いていてもいなくても、放っておいた傷みは、内側から苛んでやがてそのものが朽ちていく。
それを抱えたまま。
「…どれだけの時間を、」
共に過ごしてきただろうか。
人の心を明確に知る術はない。
けれど、ずっと傍に居ると、そう誓って見守ってきた他でもない自分が。
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プロフィール
HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。