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言いたい痛み、言えない痛み。

気付いたことがあった。
だから言わなければならないことが出来て。


その足で座敷を出る。傷は変わらず痛むが、隠しながら動いていた時より遥かに楽だ。
自分勝手に心が痛んでも。
本当は此処へ来ることを自分に禁じるつもりだった。
せめてこの傷に、主が胸を痛めなくなるまでは。

(手を差し伸べることは容易い、けれどそれが戦場で命の危険に晒す甘さへと姿を変えたら…)

きっと自分は自分を一生許さない。
それを怖れて、引いた手を離して。

(どんな言葉でも受けよう、)

責められるべき非を自分は持っているのだから。

「―――小十郎、何でここに居る」

座敷の襖の前で立ち尽くしていると、素っ気ない声がした。
「養生してろって言ったはずだ」
「…雑務は他へ任せております、ただひとつ、」
言うべきことがあった。
言わなければならないことが。
「…何だ、」
ややあって言葉を許される。
深く息を吸い込んで吐き出す息に言葉を乗せる。
「…政宗様に申し上げたことを取り消すつもりはありません、後悔してもおりません」
それは変わることのない事実だ。
「ただ、小十郎にも、政宗様に申し上げていないことを抱えております」
分かっているだろうことを真面目に言う自分を主は笑うだろうか、それとも呆れるだろうか。


「ですから、「小十郎、入ってこい…足が冷えて、うまく動かねぇんだ」


言葉を遮る声は苦笑を滲ませた声音で。
「…失礼致します、」
襖を開けると冷たい床に一人座ったままの主が居て。
その傍に寄れば、
「…何だ、その面は」
俺に言ったこと、取り消すつもりも後悔してもいないんだろう?と笑われた。

「これは、俺の…俺だけの痛みだ、それをお前が負う必要はないし、負って欲しくねぇ」

傍に居ても、すべて共有することがいいわけではない。
それは時に互いの行動を阻んで、身動きがとれなくなる。
「…それと、お前の言うことは一々正しい」
腹はたつけどな、と素直に言われた。
「大将ってのは大局を見極められなきゃいけねぇ」
でなければ、自分を含む兵たちはあっという間に全滅するだろう。

「けどな、大局が見極められたって一人を思えない大将になりたくねぇんだ」

(その、思いは)

ずっと昔から知っていたではないか。
主が何を思い戦っているのかは。
「―――はい、存じ上げております」
「お前はこれからも俺に同じことを言い続けるだろうし、俺はそれに腹を立てるのは変わらねぇ」
同じことを言わせない努力をしてください、という言葉が喉まで出かかったが飲み込んだ。

「だが俺は、俺の思うことを曲げるつもりはねぇ」

立つから手を貸してくれ、と伸ばされた手。
支えた身体は酷く冷えていた。
「ま、とりあえず…」
主の身体を暖めること。
そう思った時飛び込んできた一言は。
「余計なこと喋りやがった成実をしめとかねぇとな」
あまりにも予想外な一言に、込み上げてきた笑いを止めることが出来なかった。
「…ご存知、だったんですか」
それを。
「そうか、やっぱり成実の仕業か」
苦い顔で舌打ちする主に、謀られたのだと気付いたが既に遅い。

その後、屋敷内に成実の声が響いたのに目をつぶった。






※一応解決。根本的な解決はしていないけど、何度も同じことを繰り返すけど、それでも曲げずに生きていくだけ。

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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