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陥落。

開け放たれたままの戸。
背を向ける男。
咄嗟に投げつけた襟飾りが『義』だったのは何の偶然か。
振り返る男の刀に手を掛けた刹那。
首筋が凍るように音もなく突き付けられた短刀。

この命は、目の前の無言の忍に握られていることを察した。




※右目と梟、竜と鬼の会話捏造。アニ●サ8話から、あまりの近さに黄色い悲鳴……続きは折りたたみ↓↓

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振り返った松永の刀を手にした小十郎は、
それとほぼ同時に首に短刀を突き付ける風魔を視界に捉えた。
動けば切れる。
小十郎は本能的に危険を察知して動きを止めると、次の瞬間鳩尾に鈍い痛み。
息を吐きだす間もなく背中に同様の一撃を受け、畳に伏した。
息がつまって声も出ない。
その間に弾いた襟飾りを松永は拾う。
「風魔、それは貴重な人質だ、丁重に遇さねば」
言う声は静かで波ひとつなく。
「ぐっ…まつ、な、が」
辛うじて吐き出した声もすぐに消えた。
「独眼竜は何処か、何にせよあの奇特な軍師殿は時間が惜しいようだ」
時間が惜しい、とは?
疑問を感じながらも考えはうまくまとまらない。
畳に伏したまま動けない小十郎の前に膝をつく松永。
「独眼竜とて右目が恋しかろう、…風魔」
松永は手にしていた襟飾りを風魔に投げた。
そして松永の意図を察したのか音もなく消えた。
「さて、襟飾りを見た独眼竜はどれだけ早く卿を案じてやってくるのだろうか」
初めて松永に感情を見た気がした。
「…てめぇ…」
「今しばしはゆっくりしたまえ、旅は、長い」
松永はそう言って刀を抜く。
「たび…だ、と?」


ガツン。


小十郎の問いに答えることなく、松永は刀の柄を小十郎のこめかみに振り下ろした。
そこで小十郎の意識は途切れる。

………

甲斐・武田。
四国の戦況を報告がてら戻った佐助は、大坂の不穏な動きを察した。
「うむ、豊臣に動きか」
信玄は軽く顎を撫で、思案してから再び口を開く。
「…佐助よ、既に進軍を開始している奥州独眼竜にその動きを知らせよ」
一瞬、佐助は信玄の言葉を理解できなかった。
「…っちょ、お館様!?今このタイミングで俺がここを離れるなんて」
一拍置いてから反論する佐助に信玄は静かに諭す。

「佐助よ、右目を欠いた独眼竜…あれが、次の台風の目になるやもしれぬ」

そう命を受けてからどれくらいか。
いつもより遥かに早いスピードで奥州方面へ下った佐助は、ようやくそれらしき気配を感じとった。
小童だと言いながらも信玄が独眼竜に一目置いていることを知っている。
「台風の目、ね」
竜は嵐を呼ぶのか。
そして佐助は(楽しそうに)いがみ合う政宗と元親のもとを訪れた。

「長曾我部…アンタ、生きてたのか」

真っ先に元親の姿を見つけた佐助は感嘆した。
四国で豊臣秀吉にこっぴどくやられたのをこの目で見ている。
「んだぁ、てめえは」
名指しされ眉間にしわを寄せる元親に、政宗は「真田…いや、甲斐の忍だ」と助け船を出す。
「で、わざわざそんなことを確かめに来たわけじゃねぇんだろ?」
見上げれば、佐助は音もなく地面に降りた。

「あぁ、…豊臣が動いた」

その言葉に一瞬で二人の表情が険しくなる。
「かつてない兵の大移動に陣頭はあの豊臣秀吉」
「本陣の移動、か?」
政宗の呟きに佐助は頷く。
「勘がいいな独眼竜の旦那。進路から見て目指すは小田原。恐らくは…」
目的もそこにある。
政宗は佐助の言おうとしていることを察した。
「どうやら進路変更が必要みてぇだな」
そう元親を顧みる政宗。
すると佐助は政宗の手の文に気付く。
「…そうか、知ってるなら話は早い。アンタらを迎え討つよう竹中半兵衛が配置したのは、松永久秀」
それは手にした文に書いてあった名だ。
あの一件で或いは変な縁を持ってしまったか。
「おまけにそのクナイ…松永が風魔を伴ってるってのは事実らしい」
「…成る程な」
以前は北条についていた忍だと聞き及んでいたが。
政宗は手の文をくしゃりと握り締める。
「…独眼竜の旦那、」
佐助が一旦言葉を切り、その佐助に視線をやることなく政宗は続きを待つ。
「俺様でも右目の旦那の状況は分からなかった…面目ねぇ」
佐助の言葉は、何となく予想できたものだった。
「随分と殊勝なことを言うじゃねぇか。生憎だが、アイツなら死んじゃいねぇ。相手が松永なら尚更、小十郎には人質の価値がある」
静かな声で政宗は言う。
それは自分に言い聞かせるようでもあった。

「そりゃそうだが、だからって無「んなこたぁ、分かってる!!」

突然怒鳴る政宗にその場の空気が止まる。
だが、怒号は続かなかった。
「…っと…悪ぃ」
政宗は苦虫を噛み潰したような表情をした。
「No problem、どうにもCoolじゃねぇな」
そして自嘲する。
「真田の忍、状況は理解した。甲斐の虎にも礼は言わねぇ」
「…はいはい、端からそんなもん期待しちゃいないよ。んじゃ」
佐助は苦笑して去って行った。
くしゃりと潰した文から、同封の襟飾りを取り出す。
小さな傷がついた鈍く光るそれを見る。
「…どうやらアンタの取り戻したいモンも相当大事なモンらしいな」
元親の言葉に。
「大事なモン?」

(あれは、俺の半身だ)

政宗は改めて認識する。
「そうだな、俺自身みたいなモンだ」
政宗の言葉に元親は気持ちの良い笑みを浮かべた。
「取り戻しに行こうぜ、独眼竜」
そんな元親に政宗も不敵に笑って応えた。
「そこでだ、さっきの進路の話だがお互いに囮は引き受けねぇ、それは二手に分かれりゃ平行線だ。で、俺に考えがある」 と元親。
それに政宗も口を歪ませる。
「俺が考えてることと、どうやら同じ匂いがするぜ」
そして兵士たちが二人を覗き込む中、


「「正面突破だ」」


と二人の声が重なった。
「裏をかくのは性に合わねえ」
「奇遇だな、俺も策ってのはあまり好きじゃなくてな」
二人はしっかりと手を握る。
「そうと決まりゃあ、目指すは小田原」
「行くぜ、野郎どもっ!」
二人の声を掻き消すように雄々しい声が響いた。






※伊達軍の撃滅。小十郎に許可された半死半生。どうなるのか非常に目が離せません。
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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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