monocube
monoには秘めたイロがある。
見えないだけでそこに在る。
数え切れないそれは、やがて絡まり色彩(イロ)になる。
さぁ、箱をあけてごらん。
箱庭(ナカ)は昏(クラ)く底なしの闇色(モノクロ)。
深い闇に融けたらいいのに。
日々の戯言寄せ集め。
当サイトは作者の気まぐれにより、自由気ままに書きなぐった不親切極まりない戯言の箱庭です。
雨、そして雨。
雨が酷かったあの日。
すれ違った青年は、
まるで雷の行方を追うように天を睨んでいた。
肩に流れる艶やかな漆黒の髪。
一瞬中性的にすら見えたそれが、
後の奥州筆頭だと無論知るはずもなく。
奥州筆頭を初めて見た時には、
その髪は肩にかかる程度だった。
伊達の根城を訪れたのは気まぐれで、
運よく目的の当人が居てくれたことに安堵した。
(右目には門前払いを食らう可能性がある)
話を始めれば野暮はしないとばかりに右目は退出し、
用意された酒を軽く飲み交わしながら旅の話でもする。
それにしても、今日は随分冷え込んでいる。
戸の隙間からじわじわと入ってくる湿った空気。
不意に会話が途切れると、
妙に蒼は不機嫌な表情をする。
何となく、合点がいった。
大気が不安定に揺らぐ日を、
蒼は酷く嫌う。
「やることに追われてりゃあいい、」
ふと、手を止めた時にぶり返す。
見ずに蓋をしていたものが、
少しずつ本物さながらな質感を伴って。
それが嫌いなのだそうだ。
そりゃヤだな、と笑えば、
笑い事じゃねぇよ、と軽く睨まれた。
「そういや昔、アンタ髪長かったよな?」
その言葉に、良く知ってるなとばかりに蒼は目を丸くした。
「何で切っちまったんだ?綺麗な髪だったのに」
残念そうに髪に触れれば、
その手を嫌がるでもなく。
「…髪は、くれてやった」
と何の感情も滲まない声で蒼は言った。
「奴等は早くこっちに来いって手を伸ばしてきやがるからな」
蹴落としてきた色んなものが、
どす黒く濁った手を伸ばしてくる。
「だから、テメェはテメェの場所に帰れって、くれてやった」
無造作に掴んだ髪に刃を当てた。
「勿体ねぇなぁ…」
幾度も奥州筆頭の顔の蒼に逢ったことがある。
その度に見える髑髏。
辿ってきた道を振り返れば、
ぎっしりと屍が敷き詰められているに違いない。
その白い手は蒼の背に伸びて、
「此方」側に堕ちてくるのを嘲笑って待っているのだ。
「昔の俺なら、何でもくれてやれた」
それほどに大事なものなんて何もなく、
自分すらもどうでも良かった。
蒼は懐かしがるように目を細める。
「だが、今は違う」
「見てりゃ分かるよ、」
蒼は大切なものも、失いたくないものもたくさん抱えている。
両腕で抱えきれないほどたくさん。
(その中に、俺は、入ってんのかな…)
「死して残らねぇ奴等にくれてやるものなんざ、何もねぇ」
蒼の視線の先。
いつしか立ち込める霧を睨む様子に、
手にした杯の酒をまいた。
すぅ、と逃げるように霧は四散して。
「…俺が天下を獲るのが先か、死者に持ってかれるのが先か…」
蒼はそう呟いて嘲笑った。
「…どいつもこいつも、何でこう、戦ばかり好むんだろうな」
「自分の意志があるからだろ」
理想。
野望。
目的。
内に秘めた理由はみんな違う。
「それが出来ると思わなけりゃ戦はしねぇ」
負け戦と分かって手を出す馬鹿はいない。
誰かに天下を治めてほしくて立ち上がるものなど。
「…もし、俺はそうだと言ったら?」
誰かに…この目の前の蒼に、
天下を治めてほしくて戦に加わるのだとしたら。
「Ha!そんなのはただ食われるだけだ」
蒼は面白がるように言って杯の酒を呷った。
そうか、と頭を掻くと真っ直ぐな瞳がこちらを見ていて。
何?と問えば、
「…だが、俺は見捨てねぇ、」
それは心の中も見透かしてしまいそうな程真剣な眼差し。
「俺のために心を砕く奴は、最後まで誰一人として見捨てたりしねぇ」
それがお前でも。
(…そう、こうだから皆この男に心酔する)
憧れる。
付いていこうと思う。
最後まで、共に、戦いたいと望む。
あの、右目のように。
「…じゃあ俺がアンタを連れていこうとする悪夢から救い出すよ、」
頭を引き寄せて髪に柔らかな口付けを。
すると蒼は「そりゃ頼もしいな」と笑った。
どうか散る最期の瞬間まで、
この蒼の傍に。
蒼+風来坊。
今は未だ、恋愛より友愛。
…そもそも何の話だったのかを忘れてしまった。
間を空けるとそれはそれで考えもの。
すれ違った青年は、
まるで雷の行方を追うように天を睨んでいた。
肩に流れる艶やかな漆黒の髪。
一瞬中性的にすら見えたそれが、
後の奥州筆頭だと無論知るはずもなく。
奥州筆頭を初めて見た時には、
その髪は肩にかかる程度だった。
伊達の根城を訪れたのは気まぐれで、
運よく目的の当人が居てくれたことに安堵した。
(右目には門前払いを食らう可能性がある)
話を始めれば野暮はしないとばかりに右目は退出し、
用意された酒を軽く飲み交わしながら旅の話でもする。
それにしても、今日は随分冷え込んでいる。
戸の隙間からじわじわと入ってくる湿った空気。
不意に会話が途切れると、
妙に蒼は不機嫌な表情をする。
何となく、合点がいった。
大気が不安定に揺らぐ日を、
蒼は酷く嫌う。
「やることに追われてりゃあいい、」
ふと、手を止めた時にぶり返す。
見ずに蓋をしていたものが、
少しずつ本物さながらな質感を伴って。
それが嫌いなのだそうだ。
そりゃヤだな、と笑えば、
笑い事じゃねぇよ、と軽く睨まれた。
「そういや昔、アンタ髪長かったよな?」
その言葉に、良く知ってるなとばかりに蒼は目を丸くした。
「何で切っちまったんだ?綺麗な髪だったのに」
残念そうに髪に触れれば、
その手を嫌がるでもなく。
「…髪は、くれてやった」
と何の感情も滲まない声で蒼は言った。
「奴等は早くこっちに来いって手を伸ばしてきやがるからな」
蹴落としてきた色んなものが、
どす黒く濁った手を伸ばしてくる。
「だから、テメェはテメェの場所に帰れって、くれてやった」
無造作に掴んだ髪に刃を当てた。
「勿体ねぇなぁ…」
幾度も奥州筆頭の顔の蒼に逢ったことがある。
その度に見える髑髏。
辿ってきた道を振り返れば、
ぎっしりと屍が敷き詰められているに違いない。
その白い手は蒼の背に伸びて、
「此方」側に堕ちてくるのを嘲笑って待っているのだ。
「昔の俺なら、何でもくれてやれた」
それほどに大事なものなんて何もなく、
自分すらもどうでも良かった。
蒼は懐かしがるように目を細める。
「だが、今は違う」
「見てりゃ分かるよ、」
蒼は大切なものも、失いたくないものもたくさん抱えている。
両腕で抱えきれないほどたくさん。
(その中に、俺は、入ってんのかな…)
「死して残らねぇ奴等にくれてやるものなんざ、何もねぇ」
蒼の視線の先。
いつしか立ち込める霧を睨む様子に、
手にした杯の酒をまいた。
すぅ、と逃げるように霧は四散して。
「…俺が天下を獲るのが先か、死者に持ってかれるのが先か…」
蒼はそう呟いて嘲笑った。
「…どいつもこいつも、何でこう、戦ばかり好むんだろうな」
「自分の意志があるからだろ」
理想。
野望。
目的。
内に秘めた理由はみんな違う。
「それが出来ると思わなけりゃ戦はしねぇ」
負け戦と分かって手を出す馬鹿はいない。
誰かに天下を治めてほしくて立ち上がるものなど。
「…もし、俺はそうだと言ったら?」
誰かに…この目の前の蒼に、
天下を治めてほしくて戦に加わるのだとしたら。
「Ha!そんなのはただ食われるだけだ」
蒼は面白がるように言って杯の酒を呷った。
そうか、と頭を掻くと真っ直ぐな瞳がこちらを見ていて。
何?と問えば、
「…だが、俺は見捨てねぇ、」
それは心の中も見透かしてしまいそうな程真剣な眼差し。
「俺のために心を砕く奴は、最後まで誰一人として見捨てたりしねぇ」
それがお前でも。
(…そう、こうだから皆この男に心酔する)
憧れる。
付いていこうと思う。
最後まで、共に、戦いたいと望む。
あの、右目のように。
「…じゃあ俺がアンタを連れていこうとする悪夢から救い出すよ、」
頭を引き寄せて髪に柔らかな口付けを。
すると蒼は「そりゃ頼もしいな」と笑った。
どうか散る最期の瞬間まで、
この蒼の傍に。
蒼+風来坊。
今は未だ、恋愛より友愛。
…そもそも何の話だったのかを忘れてしまった。
間を空けるとそれはそれで考えもの。
PR
この記事にコメントする
この記事へのトラックバック
- この記事にトラックバックする
カレンダー
カテゴリー
最新記事
(02/10)
(05/06)
(03/21)
(02/23)
(01/13)
プロフィール
HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。