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雨、そして雨。

雨が酷かったあの日。
すれ違った青年は、
まるで雷の行方を追うように天を睨んでいた。
肩に流れる艶やかな漆黒の髪。
一瞬中性的にすら見えたそれが、
後の奥州筆頭だと無論知るはずもなく。

奥州筆頭を初めて見た時には、
その髪は肩にかかる程度だった。
伊達の根城を訪れたのは気まぐれで、
運よく目的の当人が居てくれたことに安堵した。
(右目には門前払いを食らう可能性がある)
話を始めれば野暮はしないとばかりに右目は退出し、
用意された酒を軽く飲み交わしながら旅の話でもする。
それにしても、今日は随分冷え込んでいる。
戸の隙間からじわじわと入ってくる湿った空気。
不意に会話が途切れると、
妙に蒼は不機嫌な表情をする。
何となく、合点がいった。
大気が不安定に揺らぐ日を、
蒼は酷く嫌う。

「やることに追われてりゃあいい、」

ふと、手を止めた時にぶり返す。
見ずに蓋をしていたものが、
少しずつ本物さながらな質感を伴って。
それが嫌いなのだそうだ。
そりゃヤだな、と笑えば、
笑い事じゃねぇよ、と軽く睨まれた。

「そういや昔、アンタ髪長かったよな?」

その言葉に、良く知ってるなとばかりに蒼は目を丸くした。
「何で切っちまったんだ?綺麗な髪だったのに」
残念そうに髪に触れれば、
その手を嫌がるでもなく。

「…髪は、くれてやった」

と何の感情も滲まない声で蒼は言った。
「奴等は早くこっちに来いって手を伸ばしてきやがるからな」
蹴落としてきた色んなものが、
どす黒く濁った手を伸ばしてくる。
「だから、テメェはテメェの場所に帰れって、くれてやった」
無造作に掴んだ髪に刃を当てた。
「勿体ねぇなぁ…」
幾度も奥州筆頭の顔の蒼に逢ったことがある。
その度に見える髑髏。
辿ってきた道を振り返れば、
ぎっしりと屍が敷き詰められているに違いない。
その白い手は蒼の背に伸びて、
「此方」側に堕ちてくるのを嘲笑って待っているのだ。
「昔の俺なら、何でもくれてやれた」
それほどに大事なものなんて何もなく、
自分すらもどうでも良かった。
蒼は懐かしがるように目を細める。
「だが、今は違う」
「見てりゃ分かるよ、」
蒼は大切なものも、失いたくないものもたくさん抱えている。
両腕で抱えきれないほどたくさん。

(その中に、俺は、入ってんのかな…)

「死して残らねぇ奴等にくれてやるものなんざ、何もねぇ」

蒼の視線の先。
いつしか立ち込める霧を睨む様子に、
手にした杯の酒をまいた。
すぅ、と逃げるように霧は四散して。

「…俺が天下を獲るのが先か、死者に持ってかれるのが先か…」

蒼はそう呟いて嘲笑った。
「…どいつもこいつも、何でこう、戦ばかり好むんだろうな」
「自分の意志があるからだろ」
理想。
野望。
目的。
内に秘めた理由はみんな違う。
「それが出来ると思わなけりゃ戦はしねぇ」
負け戦と分かって手を出す馬鹿はいない。
誰かに天下を治めてほしくて立ち上がるものなど。

「…もし、俺はそうだと言ったら?」

誰かに…この目の前の蒼に、
天下を治めてほしくて戦に加わるのだとしたら。

「Ha!そんなのはただ食われるだけだ」

蒼は面白がるように言って杯の酒を呷った。
そうか、と頭を掻くと真っ直ぐな瞳がこちらを見ていて。
何?と問えば、

「…だが、俺は見捨てねぇ、」

それは心の中も見透かしてしまいそうな程真剣な眼差し。

「俺のために心を砕く奴は、最後まで誰一人として見捨てたりしねぇ」

それがお前でも。

(…そう、こうだから皆この男に心酔する)

憧れる。
付いていこうと思う。
最後まで、共に、戦いたいと望む。


あの、右目のように。


「…じゃあ俺がアンタを連れていこうとする悪夢から救い出すよ、」

頭を引き寄せて髪に柔らかな口付けを。
すると蒼は「そりゃ頼もしいな」と笑った。

どうか散る最期の瞬間まで、
この蒼の傍に。












蒼+風来坊。
今は未だ、恋愛より友愛。

…そもそも何の話だったのかを忘れてしまった。
間を空けるとそれはそれで考えもの。

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
33
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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