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頬を撫でる手が、

下りて首に掛かった時感じたものは、痛いくらいの愛。

「…旦那の両親はさ、旦那を置いて心中したの」
佐助は特に事も無げに言う。ただ事実を告げたといった感じだった。
「って言っても、旦那の場合は首しめられて死ぬはずだった」
何とか一命を取り留めた結果、両親は心中、というオチになっただけのこと。
「…まさか自分が愛してる母親に殺されかけるなんて、…思わないよねぇ」

「―――…どうだかな、」

頬杖を突いて呟く。
「…あの女は、俺の首に手を掛けた、俺を殺すためにな」
幼少の記憶の中にいるあの女は、いつだって優しく笑いながら全身全霊で拒絶していた。目の前にいる隻眼の子供を。
「一緒に死ぬんじゃねぇ、俺だけを消し去りたかったんだろうな」
見返りを求めない盲目的な程の愛情。でもいつだって心の声が聞こえていた。「呪われた子供」「死んでしまえ」と罵り嫌悪する声が。
だから怖かった。優しく触れる指が、向けられる撫でるような穏やかな声が、あの女のその目に入ることが怖くて仕方がなかったのだ。
「真田幸村には、アンタもあの甲斐の虎もいた…そりゃあ救いになっただろうな」
自分がそうだったように。
「…アンタの右目みたいにって?」
佐助の言葉に笑う。確かに、纏う闇を振り払ってくれたのはいつだって小十郎だった。不思議と小十郎だけは怖くなかった。あの女と関わるすべてを恐れていたはずなのに。でも。
「小十郎は…救い、とは少し違うな」
荒療治もされた。甘やかされるより小言を言われることの方が多かった(小言が多いのは現在進行形だが)。苦しいのはちっとも変わらなくて。
「…あいつは……俺の過去の傷、ってやつだ」
「過去の傷?」
佐助は訝しげな表情で、言葉の含む意味を考えている。そんな反応に気分を良くして笑う。


「あいつがいる限り、俺は昔の俺を、あの女を忘れない」


小十郎の与える暖かい感情は、あの女が向けてきた痛いくらいの愛とは違う。でも、頬の深い傷は自分にちゃんと向かい合ってくれた証で。すべてを知ることは、傷を共有することと同じ。小十郎の存在は過去の忌まわしい闇と繋がっている。
「…真田幸村が過去をどう消化してるのかは知らねぇが、」
けれど、それを思い悩み呑まれる時期は疾うに過ぎた。

「…逃げるくらいなら、喰らってやろうと決めた」

『お言葉ながら、その程度で朽ちるのならば、天下など到底手は届きますまい』

「…ウチの右目は有能だからな」

笑えば真剣な表情で聞いていた佐助は途端にやれやれと頭を振った。
「でたよ、右目自慢…右目の旦那がスゴいのは身に染みてるよ」
呆れたように軽く頭を掻いて。
「でも悪いけど、旦那を見くびってもらっちゃ困る」
見返す佐助の瞳は強い。
「…旦那も、腐ってた時期は疾うに過ぎてるんでね」
今はアンタと本気の手合わせしたくてウズウズしてるさ、そう自信有りげに笑って。
「…っと、長居しちまったな」
そう言いながら立ち上がる。
「オイ、望むところだと伝えとけ」
見上げて言えば、佐助は了解したと頷く。
「…あ、旦那の昔話、俺が話したの秘密ね?」
「…あぁ?何か昔話したか?」
とぼけた返事に、よろしい、と佐助また頷いた。
窓枠に足を掛けながら、佐助は振り返らずに言う。

「…たまーに、似てるなって思うんだよねぇ…旦那とアンタ」

こちらの反応を見ずに佐助は夜の闇に融けるように消えた。
似たような記憶。
似たような傷跡。
似たように乗り越えてきたもの。
佐助の残した言葉が過る。


「…似てる、か…冗談だろ」


そう呟いて苦笑した。









※幸村にこんな過去はないが、どこかで似たような傷を共有してたら面白いなと。

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
33
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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