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#04 「作戦会議」

男はパソコンのキィボードを叩く手を止めた。すぐ脇の携帯が鳴り、手に取る。この携帯にかけてくる人間は限られている。表示された名前に、男は応じた。
「"…今いいか?"」
自分に気遣う相手のお人好しに笑って、男…巽は答えた。
「アンタからの用なら、よくなくたっていいって答えるさ」
巽の台詞に相手…馨至は笑った。
「"頼みがある、連絡を取りたい奴がいるんだ"」
「へぇ、犯罪絡み?」
「"鋭いな。呉崎種、明日の日没に天上で処刑予定だ"」
聞くなり巽の指はキィボードの上を流れるように動きだす。
「"明日の朝までに情報が欲しい"」
巽は携帯を肩で押さえながら答える。その視線は目の前のディスプレイに注がれたまま。
「引き受けた。…今夜中に送るよ」
「"…できるか?"」
「誰に向かって言ってんのさ、」
巽の偉そうな態度はいつものこと。だが今までもしっかりと役目はこなしてくれている。それに馨至は信頼できると認めている。
「"野暮だったな、…頼りにしてる"」
それ聞くと、巽は携帯を切った。
少女を送った帰途、篤尋はあえて避けていた道を選んだ。「天上」の見えるこの場所は、嫌でも自分のしていたことを、してしまったことを思い出すから。

『…此処は、綺麗すぎる』

篤尋はガキっぽいと自覚しつつも、「天上」を避けるように俯いて走り抜けた。そして自宅が見えると歩調を緩め息を整える。格好悪い姿は見せたくないのが、篤尋の本音だ。そんな自分に苦笑しながら家に入った。

「ようやくお戻りか、手間取ったな」

リビングに入るなり、馨至の率直な一言。
「ダダこねられちゃってね」
「帰りたくな~い、とか?色男は面倒だな」
馨至は笑いながら篤尋にお茶ではなく珈琲をリクエストした。分が悪いと悟った篤尋は話の矛先を変える。
「脩二は?」
「3Dを探しに行った、ウサギ連れてな」
馨至の言葉に篤尋は笑う。
「さすがだ、手回しが早い」
白兎の直感は篤尋もよく知っている。
「じゃあ、そっちは心配ないね」
篤尋が珈琲を入れている間に、馨至はテーブルに地図を広げる。
「繋ぐのも巽に任せた、後は」
篤尋が珈琲を置いた。
「僕の役目って話か」
篤尋は地図の侵入・退却不可箇所に珈琲を置き、更に足りない分を蜜柑で塞ぐ。
「何で蜜柑…?」
「脩二が食べたいって言ってたから」
にっこりと笑って篤尋は答えた。
「―――…で、篤尋さん」
馨至は地図から視線をあげて、篤尋を見た。

「どこから侵入(ハイ)るんだ?」

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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