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#07 「楽譜(ラクフ) の狗」

天上を見下ろす特等席。その左脇にしゃがんで夾夏はぼんやりと中央を眺めていた。
「退屈やなぁ…」
右脇に佇む真皓は横目でちらりと夾夏を見ただけ。
「せやったら、何で出んかったかって?」
真皓が何も言わないのをいいことに、夾夏は続ける。しかし言いたいことを大方理解しているという点ではこのお喋りを評価すべきかもしれない。
「温梓が珍しく名乗り出てん、謙虚な俺が引いとかんとな」
真皓は黙ったまま考える。確かに常に補佐役を望む温梓にしては珍しい。GUNSでありながら、争いを好まない彼女だ。尤も、真皓は面倒が嫌いという点で争いを好まないし、夾夏も面倒は嫌いな性格だ。そんなものを好むとすれば、破天荒なリーダーくらいだろう。だから参謀役であるアスカが苦労するのだが。実際のところ、GUNSがまだまとまっているのはアスカが居るからに他ならない。あの破天荒は彼女以外には手に余る。
「せやけどホンマに来るんかなぁ、あいつら」
夾夏が頬杖をつく。
「…………さぁ、」
真皓はようやくそう一言答えた。
一方の奏は、天上の中央で静かに待っていた。基本的に落ち着かないことが多い奏だ。その珍しい様子に、GUNSの誰もがただ事ではないことを察している。夾夏はあぁ言ったが、奏の様子から奴ら…葬送屋が現れるのは間違いなさそうだ。そこへ両脇を固められた少女・種が現れた。奏と同じく天上にいる、アスカと温梓も場の空気の変化を感じ取る。
「――――…近いな、」
奏が小さく呟いた。

決めていたことがある。

冷たい夜をやり過ごしながら、何度も何度も同じことを考えていた。

信じようと思うしかなかった。それが法から逃れる唯一の方法なら。

中央の壇上に拘束される。種はその時を待っていた。
「可哀想だね、代わりなのに」
種を見上げて奏は呟く。
「…知ってるんだ、」
「知ってても何も変わらない」
奏の言葉は酷く淡々としていた。
「だって法は…裁かれる人間を欲しているから」
生け贄を求める。自分自身が存続するために。裁かれる人間が居なければ、法は必要ないのだから。
「……最低、」
「人間だからね」
奏は種の言葉にまるで堪えた様子もなく軽く笑った。でもそれはどこか自嘲に似ていた。

ゴーン、ゴーン…

つんざくような、鐘の音。それはこれから行われるすべての始まり。奏を始め、面々が夕闇空を仰ぐ。
「…私…私は、」

種は。

「何もしてないのに、死にたくないっ!!」

ありったけの声で叫んだ。ずっと気づかないフリをしていた思いを吐き出すように。

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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