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#08 「救出」

一番最初に気づいたのは、やはり奏だった。
「来るよ、」
二人が飛び込んだのは、その声とほぼ同時。篤尋の側にアスカと温梓、馨至の側に奏が立ち塞がる。馨至の姿を捉えた奏は、露骨に不機嫌な表情になった。
「俺は尋と遊びたいんだよ。アンタ、ウザい」
すると大して動じた様子もなく、馨至は肩を竦めた。
「それなら、左を選んだあいつに言えよ」
奏は依然として不機嫌な表情のまま、銃を抜いた。

ガゥンっ…

奏の一撃に観覧席の人間が静まる。執行人さえもその動きを止める。そんな様子を夾夏と真皓は上から見下ろしていた。そのすぐ後ろに控えた男は口元に笑みを浮かべただけ。
「――止めますか?」
口を開いたのは、真皓だ。その視線はまっすぐに指示を待っている。男は応えず、軽く首を振っただけだった。その答えに、真皓はまた天上に視線を落とした。

「…久しいですね、」
篤尋は動じた様子もないアスカに言う。アスカはその手に得物を構えて、社交辞令のように軽く笑う。
「意外です、貴方自身が"此処"へ来るなんて」
篤尋は誤魔化す様に笑う。内心、"本当は来たくなかったのだけど"と思いながら。そして、注意を逸らすことなく後ろに佇む温梓を意識する。情報としては知っている。争いを好まない、盲目の美女。されど、その実力は実際に立っている場所を見れば一目瞭然。実力がないのなら、彼女はGUNSに席を置くことはないのだから。
「彼女が無罪なことはご存知ですね、」
篤尋の言葉に、アスカは答えなかった。だがその沈黙が何よりの証拠。
「彼女を返していただきます」
「彼女は"上(ココ)"の人間、返すというのは適切ではありませんね」
アスカは表情から完全に感情を消した。それは、彼女が「参謀役」といわれる所以でもある。篤尋はそれ以上言葉を紡ぐことなく、銃を構えた。
馨至は奏の緩い一撃をかわして同様に一撃を放つ。奏はそれを容易く見切って、距離を縮める。本来なら、遠距離を得意とする奏。だが、奏が「瞬足」と言われる所以。奇想天外な行動を起こせるのは、その脚によるもの。馨至は近距離から放たれた一撃を寸前でかわし、辛うじて距離をとった。
「―――…おっかねぇ」
馨至は壁を盾にして小さく呟く。かつては自分も「上(ココ)」に居たが、よくGUNSの側で働いていたもんだと思う。自分は奏に勝てるとは思っていない。実力の差は歴然としている。だが、ぼやいたところで始まらない。与えられた役目を全うするだけだ。馨至はそう割り切ってい再び渦中へ出た。

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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