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BORDER LINE プロローグ

 
――――――19 years ago.
 
「駄目です、突破されました」
悲鳴に近い女性の声。
忙しなく動き回る中で、一人立ち尽くした男がその表情に渋さを滲ませる。
「…残っている拠点(ポイント)は、」
「七つです」
大きなモニターと、そこに映し出された逃げ惑う人々。
猶予はない。
「その中でもっとも小さな拠点は、」
「拠点D、です」
その言葉に男は、脳裏に浮かんだ姿を即座に消した。
周りにはそんなことを悟らせぬまま。
オペレートを任された女性は、ひたすら次の指示を待つ。
「――――拠点Dに、カオスをすべて引き付けろ」
重い言葉だった。
「でも、あの規模では持ちません」
「そうしたらすぐに、…拠点Dを隔離しろ」
女性の手が止まる。
その指示の意味。
「…見殺しにしろと、おっしゃるんですか?」
呆然と問うような言葉に、男は沈黙を守る。
「すぐに拠点Dの人間たちを避難させます」
「時間がない」
「しかしっ…」
男は冷静を保ったまま、言い放つ。
女性は、まるで睨まれているような威圧感を感じていた。
無論、その表情は見て取れないが。
「この件の指揮は私が取っている。―――もう一度だけ言う。拠点Dにカオスを引き付けた後、すぐに拠点Dを隔離だ」
そこに居た誰もが、その指示に逆らうことができなかった。
それは、許されていなかったのだ。
 
それは、本当に突然だった。
「カオス」という名称に相応しい、人であり人でないもの。
すべての混沌を抱いたそれは、人々の心と居場所を侵していった。
対抗する術もなく、苦し紛れに取られた策。
それが、“ボーダーライン”の生まれた理由。
拠点Dとしてカオスの脅威に晒された挙げ句、
「尊い犠牲」という冠を与えられ隔離された場所。
 

『政府公認第一級厳戒都市』…通称『BORDER LINE
 
 
鉛色の空。
息苦しい雨の幕。
それはそれはお誂え向きな場所。
 
「…ついに、切り捨てたか…あいつは」
 
不思議な磁場の働くこの場所で、
空を見上げ立っていた女は口許を歪ませて呟いた。
 

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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