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何という名だったか。

ぼんやりと思考を揺らして考える。だが考えていると悲鳴をあげるように痛みだす。
こころが?
あたまが?
まるで真綿で首を絞められるように、緩やかに優しく意識に靄がかかった。


『Are you...? 』


背もたれが高く血濡れたように赤色い、豪奢な椅子。玉座のようなその椅子にまるでそぐわない小柄な少女。少女は膝を抱えて眠っていた。
部屋に入るなりその姿に気がついた三日月ウサギは、口元にのみ笑みを浮かべて椅子に近づいた。それを知ってか知らずか、少女に目覚める気配はなく。
「疲れているんだね、」
三日月ウサギは優しい声音でそう囁くと、血色の玉座の肘掛けに手をおいた。それはまるで逃がしたくないとでも言うように、緩やかに少女を拘束する。
「君の努力は理解っているよ、」
自分が何者なのか、それを必死で思いだそうとする。だが、それが叶わないことを三日月ウサギは知っている。「そう」したのは他でもない、三日月ウサギ本人だから。
「でも、まだだ」
三日月ウサギは誰に聞かせるでもなく続ける。

「まだ君は、」

言いかけて三日月ウサギは口を閉ざす。
「…早いお戻りですね、」
口調を変え、参謀の表情になる。振り返った先にJとQが居た。
「…これはまた、」
三日月ウサギはJが右手で弄んでいる「モノ」に気づいて笑う。
「綺麗ですね、鉱石の肌って」
いつもの笑みを貼り付けた顔でJは言う。
「アンタが言うと犯罪臭いからやめてくれる?」
それにQは顔をしかめて毒つく。「酷いなぁ、」とJが困ったようにまた笑った。
「これは…善戦ととっていいんですね?」
二人が肯定の意を含んだ笑みを浮かべる。そこでJは思い出したことを付け加える。
「あー…、"彼"は居ませんでしたよ」
その言葉に一瞬露わになる殺気。だがすぐに表情を戻した三日月ウサギは実に素っ気なく「そうですか、」と応えただけだった。
「でも、ローズクォーツも馬鹿じゃないんでしょう?12の主を束ねてるんだもの、出してこないわよ」
Qがさも当然のように答える。
それを耳にしながら、三日月ウサギは玉座に座る少女を見下ろす。
「三日月ウサギ、話は終わりですか?」
Jの言葉に。
「えぇ、」
三日月ウサギは答えた。

二人が部屋から消えると三日月ウサギは少女の白い頬に触れる。すると微かに睫が震えて、少女はゆっくりと瞬いた。

「…ラビ?」

少女は、三日月ウサギのことを「ラビ」と呼ぶ。そう教えたのは三日月ウサギだ。
「…どうしたの?」
少女は肘掛けに置かれた三日月ウサギの手を握る。
「夢を見たの」
少女の手を握り返すと、少女は安堵したように緊張を解く。その様子に小さく笑って、先を促す。
「どんな夢?」
「暗い部屋の中にいる私の手を、ラビが引いてくれるの」
「…僕が?」
少女はこくりと頷く。
「そしてね、名前を呼んでくれるの」
思い出すことのできない名前?
それとも、
「…ねぇ、ラビ」
少女は甘えるように三日月ウサギを見上げる。
「何?」
「名前、呼んで?…私の名前、呼んで?」
三日月ウサギは目を伏せて笑う。
「何も怖くないよ、僕がついてる。だから安心しておやすみ、」
そして優しく、少女の頭を撫でた。

「――――僕の、アリス」

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ささやかな抵抗

タイトルについて。
鉱石たちメインの話は、『no ~』。アリスサイドとか外野の話は『本文の始まり』。
見て分かる、ささやかな抵抗…
  • 水城夕楼
  • 2007/08/07(Tue)08:48:33
  • 編集

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
33
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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