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雨が止むまで ( 前編)

その男は「灰猫(ハイネコ)」という偽名の、不思議な男だった。

あの夜は、夕方から降り始めた雨が本降りになり、かなり冷え込んでいたのを覚えている。
冷蔵庫を開けて昼買い物に行かなかったことを後悔し、雨の中閉店間近のスーパーに向かう。適当に朝の分まで買い物をして家に戻った。自宅のドアの前。手がかじかんで鍵を開けるのに苦戦していると、人の気配と共に腰に硬質な感触がする。振り返ろうとした時、擦れたような声がした。

「……俺を匿え、」

その声は力なく、酷く衰弱しているような気さえした。
月島は部屋に入るなり倒れこんだ男を見て、簡単なものを拵えた。何となく気分は捨て猫を拾ったようだ。男に拵えたものを差し出すと、やけに礼儀正しく綺麗に平らげた。そんな男の傍ら。月島は床に落ちた銃に気付いて拾う。
「―――…水鉄砲かよ、」
呆れて呟くと、男は寛いだ態勢で笑う。
「まさか本トに匿ってもらえるとは思わなかった」
「雨は冷たいからね、」
昔、かくれんぼをしていて置いていかれたことがあった。途中で雨が降りだして、本当に寒かった。雨が冷たくて。心まで染み込んで冷やしていく様で。
「…アンタ名前は?」
「月島、」
床を濡らされるのも、勝手に風邪を引かれるのも困る。月島は、濡れた上着を寄越せと手を伸ばす。男はその要求の通り上着を渡した。そして上着を干す月島の背中をじっと見ていた。
「…穴が開く、」
月島は素っ気なく一言。益々男の視線は興味深そうに月島を追い掛ける。
「随分親切なことで。もしかしたら本物持ってるかもよ?」
男は銃の形にした手を月島に向ける。月島は特に何ということもなく控えめに笑う。

「別に、死ぬことは、怖くないんだ」

男は向けていた手で頭を掻いた。
「…じゃなきゃ、不審者をホイホイ家にあげるわけないわな」
「君は誰?」
本来なら出会い頭で聞くべき言葉を月島が口にする。するとさして違和感もなく男は答えた。

「灰猫」

"…偽名だけど。"と付け足して。

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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