monocube
monoには秘めたイロがある。
見えないだけでそこに在る。
数え切れないそれは、やがて絡まり色彩(イロ)になる。
さぁ、箱をあけてごらん。
箱庭(ナカ)は昏(クラ)く底なしの闇色(モノクロ)。
深い闇に融けたらいいのに。
日々の戯言寄せ集め。
当サイトは作者の気まぐれにより、自由気ままに書きなぐった不親切極まりない戯言の箱庭です。
monochrome
「それすらもう、戯言ってことで」
奴はそう、ケタケタと、笑った。
僕が奴と初めて接触してから、既に一年が経とうとしている。
決まったように夜に活動する奴が、白昼何をしているのか知らない。(どうせ、碌なことはしていないんだろうが)
どこに住んでいるのかも、いくつなのかも。(見た目から察するに、僕と同い年…もしくはいくつか下と言ったところか)
だからといって不自由することはなかったし、そもそも奴の懐に入ろうとも思わない。
誰かの懐に入るということは、少なからずこちらも干渉を許さねばならないと思っているからだ。
誰かに干渉するのも面倒だし、何より干渉されるのは一番嫌い。
だから、奴の距離の取り方に便乗した「この間柄」はなかなか嫌いじゃない。
「お、また来やがったか」
大体遅れて行くのは僕の方だ。(そもそも待ち合わせなどしていないのだから、遅れるというのは変な言い方だ)
そんな僕を、奴はいつも興味深そうに眺めて、ケタケタと、笑う。まるで、今日初めて出会ったと言わんばかりの反応で。
本当は興味なんて持っていないに違いない。そんな奴には見えない。
だけど、気づかないフリをして僕は軽く応える。
「帰り道に、お前が居ただけだ」
会いに来たわけじゃない、と一応意思を示しておく。
だが奴はまた、ケタケタと、笑っただけだった。
奴にとって、そんなことはどうでもいいらしい。かく言う僕も、そんなことはどうでもいいと思う。(意味のない気を遣ってしまった)
「さて今日は、何の話をしてやろうか」
両手をポケットに突っ込んで、足元の小石をける。正直なところ、とても何かを話して聞かせてやろうという姿勢ではない。
だが、あえて沈黙を守っていると勝手に奴は話し始めた。
「お前、この世界どォ思うよ」
答える前に、奴は続ける。どうやら奴は答えを求めて問いているわけではないらしい。(非常に紛らわしい)
「俺は実に嫌いでね、だから俺は世界を殺そうと思うわけだ」
本当に簡単に言うから、できる気がしてくる。奴なら、何なくやりそうだ。
「で、どうする?」
視線が僕を捉える。今度はちゃんと意見を求められている。だが、意味がわからない。
「どうするって、何が?」
僕の答えに、奴は「またまた~」と手を振りながら笑う。ケタケタと、笑う。
正直、どうでもいい。世界が殺されようが、世界に殺されなければいい。(それくらい僕にはどうでもいい)恐らく、奴も本当はどうでもいいのだ。
「お前みたいなウザい顔してる奴、初めてだ」
相変わらずケタケタと、笑いながら奴は距離をつめる。まるで、逃がすまいとするように。(その実奴は何も考えていないに違いない)
「この世界そのものがウザいって表情、」
僕は無意識に挑むような眼差しを向けていたらしい。奴が退く。
「お前、俺にそっくりだ」
奴の言葉に虚を突かれた。まさか、奴からそんな言葉が出るとは。周りなんて気に止めるはずがないと思っていたのに。それに、
「―――冗談だろ、」
奴があまりにも。
あまりにも真剣な声を出すから。動揺しなかったと言えば嘘になる。だから、それを誤魔化すように笑う。奴を真似て、ケタケタと、笑う。
なるほど、よく似ている。
「俺の言ったこと、マジだと思った?」
奴の声がいつもの調子に戻っていた。
「それすらもう、戯言ってことで」
奴はそう、ケタケタと、笑った。
「んじゃ、俺帰るわ」
その時、もう二度と奴に会うことはないだろうと思った。(そもそも意図的に会おうとしてたわけじゃないが)
「あぁ、」
僕は止めない。
奴も止まらない。
距離が離れていく。
それでも構わなかった。
そんなことはどうでもいい。
きっと奴もどうでもいい。奴の姿を追わずに、踵を返す。急に寒さを思い出したからだ。
あぁ、やはりよく似ている。
口元が微かに緩んだのを自覚する。その時、微かに聞こえた気がした。奴がケタケタと、笑う声が。
奴は本当に世界を殺すだろうか。自分を殺そうとする世界を相手に。
『それすらもう、戯言ってことで』
本当に戯言だ。
寒い夜はすべての音を吸い込んで、そして初めから何もなかったかのように世界を塗り替える。
奴もいない。
僕もいない。
じゃあ、僕らは出会わなかった?
いや、それこそが戯言だ。
だから僕は待ち続ける。
いつしか奴が、世界を殺す日を。
end...?
奴はそう、ケタケタと、笑った。
僕が奴と初めて接触してから、既に一年が経とうとしている。
決まったように夜に活動する奴が、白昼何をしているのか知らない。(どうせ、碌なことはしていないんだろうが)
どこに住んでいるのかも、いくつなのかも。(見た目から察するに、僕と同い年…もしくはいくつか下と言ったところか)
だからといって不自由することはなかったし、そもそも奴の懐に入ろうとも思わない。
誰かの懐に入るということは、少なからずこちらも干渉を許さねばならないと思っているからだ。
誰かに干渉するのも面倒だし、何より干渉されるのは一番嫌い。
だから、奴の距離の取り方に便乗した「この間柄」はなかなか嫌いじゃない。
「お、また来やがったか」
大体遅れて行くのは僕の方だ。(そもそも待ち合わせなどしていないのだから、遅れるというのは変な言い方だ)
そんな僕を、奴はいつも興味深そうに眺めて、ケタケタと、笑う。まるで、今日初めて出会ったと言わんばかりの反応で。
本当は興味なんて持っていないに違いない。そんな奴には見えない。
だけど、気づかないフリをして僕は軽く応える。
「帰り道に、お前が居ただけだ」
会いに来たわけじゃない、と一応意思を示しておく。
だが奴はまた、ケタケタと、笑っただけだった。
奴にとって、そんなことはどうでもいいらしい。かく言う僕も、そんなことはどうでもいいと思う。(意味のない気を遣ってしまった)
「さて今日は、何の話をしてやろうか」
両手をポケットに突っ込んで、足元の小石をける。正直なところ、とても何かを話して聞かせてやろうという姿勢ではない。
だが、あえて沈黙を守っていると勝手に奴は話し始めた。
「お前、この世界どォ思うよ」
答える前に、奴は続ける。どうやら奴は答えを求めて問いているわけではないらしい。(非常に紛らわしい)
「俺は実に嫌いでね、だから俺は世界を殺そうと思うわけだ」
本当に簡単に言うから、できる気がしてくる。奴なら、何なくやりそうだ。
「で、どうする?」
視線が僕を捉える。今度はちゃんと意見を求められている。だが、意味がわからない。
「どうするって、何が?」
僕の答えに、奴は「またまた~」と手を振りながら笑う。ケタケタと、笑う。
正直、どうでもいい。世界が殺されようが、世界に殺されなければいい。(それくらい僕にはどうでもいい)恐らく、奴も本当はどうでもいいのだ。
「お前みたいなウザい顔してる奴、初めてだ」
相変わらずケタケタと、笑いながら奴は距離をつめる。まるで、逃がすまいとするように。(その実奴は何も考えていないに違いない)
「この世界そのものがウザいって表情、」
僕は無意識に挑むような眼差しを向けていたらしい。奴が退く。
「お前、俺にそっくりだ」
奴の言葉に虚を突かれた。まさか、奴からそんな言葉が出るとは。周りなんて気に止めるはずがないと思っていたのに。それに、
「―――冗談だろ、」
奴があまりにも。
あまりにも真剣な声を出すから。動揺しなかったと言えば嘘になる。だから、それを誤魔化すように笑う。奴を真似て、ケタケタと、笑う。
なるほど、よく似ている。
「俺の言ったこと、マジだと思った?」
奴の声がいつもの調子に戻っていた。
「それすらもう、戯言ってことで」
奴はそう、ケタケタと、笑った。
「んじゃ、俺帰るわ」
その時、もう二度と奴に会うことはないだろうと思った。(そもそも意図的に会おうとしてたわけじゃないが)
「あぁ、」
僕は止めない。
奴も止まらない。
距離が離れていく。
それでも構わなかった。
そんなことはどうでもいい。
きっと奴もどうでもいい。奴の姿を追わずに、踵を返す。急に寒さを思い出したからだ。
あぁ、やはりよく似ている。
口元が微かに緩んだのを自覚する。その時、微かに聞こえた気がした。奴がケタケタと、笑う声が。
奴は本当に世界を殺すだろうか。自分を殺そうとする世界を相手に。
『それすらもう、戯言ってことで』
本当に戯言だ。
寒い夜はすべての音を吸い込んで、そして初めから何もなかったかのように世界を塗り替える。
奴もいない。
僕もいない。
じゃあ、僕らは出会わなかった?
いや、それこそが戯言だ。
だから僕は待ち続ける。
いつしか奴が、世界を殺す日を。
end...?
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結局これは、
戯言・もしくは零崎一賊を読んだ後だったような気がする。だから、恐らく「僕」と「人識」を無意識に意識しているんだと思う。
- 水城夕楼
- 2007/01/23(Tue)13:32:44
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プロフィール
HN:
瑞季ゆたか
年齢:
41
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。