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あぁ、ほらまた、

……俺が、弱くなっていく。












※折り畳みに続く...

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爆風に視界が奪われる。
獣のような咆哮と血の匂い。
戦場に臆することなく立つ紅は、未だ晴れぬ視界を睨みながら口を開いた。

「…佐助、そこにいるか、」

途端に顕現する気配。
「居るよ、旦那のすぐ傍に」

チャリ…

六文銭が小さな音を立てる。
「…お館様のご上洛の為、此処は一気に駆け抜ける」
「言われなくとも、」
その存在を示すように音を立てる首もとの銭に、
妙な焦燥感と絶望感を感じるのは否めない。

(…どこまでついて行こうとも、最期まで共にすることはできない)

浅はかで、甘い、子ども。

(きっと、旦那は俺が死ぬことを良しとしない)

自分が朽ち果てても、それを追うことをきっと赦さない。
それがどれだけ残酷なことか、知りもせずに。
「―――…昔、任務失敗で生き残るのは生き恥だと、言ったな」
戦場において、珍しく静かな声。
「俺は、戦場でお館様の為に戦い、それを成し遂げるために戦場で果てたいと、思う」
そっと目を伏せた分だけ鋭くなる、聴覚。
迫る足音に、そう長くこうしてはいられまい。

(…そうして旦那は死に急ぐ…)



「…だからその時は、お前も一緒に来い」



迷いの無い、一言。
「…何、旦那、俺に死ねっていうわけ?」
内の同様を誤魔化すように、自嘲って。
「今、この時と同じように、傍に居ろ」
だってさぁ、旦那。
「六文銭じゃ、足りないっしょ」
一人しか三途の川は渡れない。
「二人なら、渡船でも借りればよい」
至極当然のように言われて、思わず笑みがこぼれる。
「…旦那、それって悪だねぇ」
そう答えたのと同時。
紅の二槍が風を切る。

「行くぞ、佐助っ」

「はいよ、旦那」

この紅には、敵わない。



(あぁ、ほらまた、…旦那に、弱くなっていく)
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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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