monocube
monoには秘めたイロがある。
見えないだけでそこに在る。
数え切れないそれは、やがて絡まり色彩(イロ)になる。
さぁ、箱をあけてごらん。
箱庭(ナカ)は昏(クラ)く底なしの闇色(モノクロ)。
深い闇に融けたらいいのに。
日々の戯言寄せ集め。
当サイトは作者の気まぐれにより、自由気ままに書きなぐった不親切極まりない戯言の箱庭です。
この醜い世界で、
ただ一人。
光りをくれたのは、一番傍にいる存在だった。
※現代版蒼主従話。蒼→高校生、右目→社会人。なので右目は普通に蒼を年下扱い。何となく続きは折りたたみ↓↓
ぼんやりと覚えている最初の光景は、両手で顔を覆い叫んでいる母親の姿。
何を叫んでいるのかはよく分からないが、
その全身全霊が自分を拒絶していたのははっきり分かった。
取り囲む周りの人間がひとり、またひとりと消えて。
それを見るのが辛くなって、「みんな消えてしまえ」と一人残らず遠ざけた。
それを酷いと思う人間と同じくらい、
離れることができて良かったと安堵した人間も居たはずだ。
(…これで、いい…誰も傷つかずに済む…)
膝を抱えてすべてに背を向ける。
「本当に、誰も傷ついてないのか?」
後ろに立っている誰か。
「その割には、随分でかい泣き声だな、」
呆れたような声にムキになって振り返ったら。
自分よりもずっと泣きそうな表情がそこにあった。
………
「…ようやく、見つけた」
耳馴染んだ声に顔を上げると目の前に小十郎が立っていた。
髪を微かに雨に濡らして。
「その年齢でかくれんぼか?飯までには帰ってこいって言ったろ」
そう。
自分はもう高校生で、ひとりだったのはもうずっと昔のこと。
たまにフラッシュバックしては昨日のことのように感じるが。
「…ん、わり…」
苦笑して腰を上げれば、節くれだった指が顎を持ち上げて。
「こじゅ、」
触れるだけの口付け。
「…人前はヤなんじゃねぇの?」
「この雨じゃ人なんていやしないさ」
声は特別優しくなったわけじゃない。
でも何かあったのかと察してくれたのは伝わってきて。
「…冷たい、」
触れた口唇は少しひんやりした。
「お前のお陰でな、」
行くぞ、と促すように頭を叩かれて。
少しずつ勢いを増す雨に、上着を頭から掛けられた。
「走るぞ、」
握ったままの手だけがやたらと熱を持っていた。
………
正式に家を出たのは10歳の時。
小十郎が大学生になって一人暮らしをするのを機についていくことを決めた。
誰も引き止めなかった。
むしろ小十郎に対して同情するような声ばかりが背中に刺さって。
「じゃあ代わってくれますか?」
背に自分を隠して(大人たちの悪意から守るように)、小十郎は言った。
言い淀む大人たちに、
「その程度の覚悟もないのか、アンタ達は」
まるで世界そのものを責めるような声音で。
服を強く掴んだ手に、自分の手を重ねて「大丈夫だよ」と優しい笑みを与えてくれた。
誰よりも実直で優しい人。
………
家に着くなり、タオルを掛けられた。
「風呂、沸かしてあるから入ってこい」
そう背中を押されたが、何だか離れ難くて。
背を向ける小十郎の服の裾を掴んだら、困ったように笑う気配がして。
「なんだ、今日はやけに甘えるな」
「…嫌なこと、思い出した…」
消え入るように呟けば、「そうだろうな、」すんなり言われて手を引かれる。
「とりあえず、風邪は引くな」
あぁ、そうか。
自分とは違い、小十郎は社会人だ。
おいそれと休むわけにもいかなければ、同居人の看病に付きっきりというわけにもいかない。
(甘やかして欲しいのに…)
残念に思う心に目をつぶり、促されるように風呂に入る。
「…何を勘違いしてるか知らないが、病人には手を出すワケにはいかないだろ、」
そう言い置いて、小十郎は風呂場のドアを閉めた。
「…なっ、」
この変態!と姿の消えたドアにタオルを投げつける。
その音を聞きつけた小十郎の笑い声が微かに聞こえた。
自分にとって一番心地よい温度に保たれた湯船に鼻まで浸かりながら、
上がったら仕返しに何をしてやろうかと思い、はたと気がつく。
(あ、)
いつの間にか気分が浮上している。
思い出した昔の出来事を忘れたわけでもないのに。
(…こういとこがズルい、)
ほんのり顔が熱い気がするのは、きっとこの湯船の温度のせいだけではない。
光りをくれたのは、一番傍にいる存在だった。
※現代版蒼主従話。蒼→高校生、右目→社会人。なので右目は普通に蒼を年下扱い。何となく続きは折りたたみ↓↓
ぼんやりと覚えている最初の光景は、両手で顔を覆い叫んでいる母親の姿。
何を叫んでいるのかはよく分からないが、
その全身全霊が自分を拒絶していたのははっきり分かった。
取り囲む周りの人間がひとり、またひとりと消えて。
それを見るのが辛くなって、「みんな消えてしまえ」と一人残らず遠ざけた。
それを酷いと思う人間と同じくらい、
離れることができて良かったと安堵した人間も居たはずだ。
(…これで、いい…誰も傷つかずに済む…)
膝を抱えてすべてに背を向ける。
「本当に、誰も傷ついてないのか?」
後ろに立っている誰か。
「その割には、随分でかい泣き声だな、」
呆れたような声にムキになって振り返ったら。
自分よりもずっと泣きそうな表情がそこにあった。
………
「…ようやく、見つけた」
耳馴染んだ声に顔を上げると目の前に小十郎が立っていた。
髪を微かに雨に濡らして。
「その年齢でかくれんぼか?飯までには帰ってこいって言ったろ」
そう。
自分はもう高校生で、ひとりだったのはもうずっと昔のこと。
たまにフラッシュバックしては昨日のことのように感じるが。
「…ん、わり…」
苦笑して腰を上げれば、節くれだった指が顎を持ち上げて。
「こじゅ、」
触れるだけの口付け。
「…人前はヤなんじゃねぇの?」
「この雨じゃ人なんていやしないさ」
声は特別優しくなったわけじゃない。
でも何かあったのかと察してくれたのは伝わってきて。
「…冷たい、」
触れた口唇は少しひんやりした。
「お前のお陰でな、」
行くぞ、と促すように頭を叩かれて。
少しずつ勢いを増す雨に、上着を頭から掛けられた。
「走るぞ、」
握ったままの手だけがやたらと熱を持っていた。
………
正式に家を出たのは10歳の時。
小十郎が大学生になって一人暮らしをするのを機についていくことを決めた。
誰も引き止めなかった。
むしろ小十郎に対して同情するような声ばかりが背中に刺さって。
「じゃあ代わってくれますか?」
背に自分を隠して(大人たちの悪意から守るように)、小十郎は言った。
言い淀む大人たちに、
「その程度の覚悟もないのか、アンタ達は」
まるで世界そのものを責めるような声音で。
服を強く掴んだ手に、自分の手を重ねて「大丈夫だよ」と優しい笑みを与えてくれた。
誰よりも実直で優しい人。
………
家に着くなり、タオルを掛けられた。
「風呂、沸かしてあるから入ってこい」
そう背中を押されたが、何だか離れ難くて。
背を向ける小十郎の服の裾を掴んだら、困ったように笑う気配がして。
「なんだ、今日はやけに甘えるな」
「…嫌なこと、思い出した…」
消え入るように呟けば、「そうだろうな、」すんなり言われて手を引かれる。
「とりあえず、風邪は引くな」
あぁ、そうか。
自分とは違い、小十郎は社会人だ。
おいそれと休むわけにもいかなければ、同居人の看病に付きっきりというわけにもいかない。
(甘やかして欲しいのに…)
残念に思う心に目をつぶり、促されるように風呂に入る。
「…何を勘違いしてるか知らないが、病人には手を出すワケにはいかないだろ、」
そう言い置いて、小十郎は風呂場のドアを閉めた。
「…なっ、」
この変態!と姿の消えたドアにタオルを投げつける。
その音を聞きつけた小十郎の笑い声が微かに聞こえた。
自分にとって一番心地よい温度に保たれた湯船に鼻まで浸かりながら、
上がったら仕返しに何をしてやろうかと思い、はたと気がつく。
(あ、)
いつの間にか気分が浮上している。
思い出した昔の出来事を忘れたわけでもないのに。
(…こういとこがズルい、)
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プロフィール
HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
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