monocube
monoには秘めたイロがある。
見えないだけでそこに在る。
数え切れないそれは、やがて絡まり色彩(イロ)になる。
さぁ、箱をあけてごらん。
箱庭(ナカ)は昏(クラ)く底なしの闇色(モノクロ)。
深い闇に融けたらいいのに。
日々の戯言寄せ集め。
当サイトは作者の気まぐれにより、自由気ままに書きなぐった不親切極まりない戯言の箱庭です。
その腕に抱き締められた時、
一瞬でも頭を過ったことに少し、後悔した。
馬に揺られながら思っていたこと。
血の滲んだ傷口に触れると、少しの振動で鈍痛がした。
「…っ…」
小さく呻くとしっかりと身体を支える腕に力がこもった。
「痛みますか?」
案じる声に苦笑すれば、
「やはり少し休まれてからの方が、」
と右目は眉間に皺を寄せる。
「奥州以外に休める場所なんてねぇ」
と答えれば、心配性の右目は押し黙った。
繰り返す鈍痛に目を閉じる。
「…政宗様、もうしばしご辛抱を」
右目に寄り掛りながらずっと考えていることを反芻する。
「―――痛みってのは、なかなか慣れねぇもんだな」
幼い頃から慣れていたことなのに。
眼帯に隠れた右目のこともそうだが、
幼少期にいい思い出はほとんどない。
それを不幸だと思ったこともあったが、今はもうどうでもいい。
本当に思い出したくないことには、
きつくきつく蓋をすることにしたから。
だがあの男の執念にまるで惹かれるかのように、
蓋を閉めたものが溢れた。
闇が、
(怖い)
過去の記憶が、
(思い出したくない)
傷の痛みと相まって蘇る。
内側から苛む。
「…はっ、」
呑まれそうになって目を開けると心配そうに覗き込む右目。
虚ろな瞳がしっかりと像を結ぶのを確認した右目は、
汗で額に張りつく髪を除け、頬に優しく触れて。
「熱が上がっているな、」
思案する様子に、気にせず奥州に向かうよう告げまた目を閉じる。
今度はしっかりと右目の服を掴んで、
悪い夢を見ぬよう祈りながら。
「―――魔王に、残った左目も抉ってやろうかと言われた」
ぽつりと呟くように吐き出す。
「悪いものを見ずに済むなら…、それでもいいと、思った」
『やってみやがれ、俺の眼は牙を剥いて噛み付くぜ』
あの時、苦しみと共にあったのは恐怖ではなく、
見たくないものを見なくて済むかもしれない安堵だった。
「だが、今は…この目が無事で良かったと、思う」
意識が少しずつ輪郭を失っていく。
「政宗様、」
傷の痛みに耳鳴りがする。
「もしこの目がなかったら…お前が見えなくなっちまう」
紅に支えられなければまともに立てない身体を、
駆け寄ってきた右目が心底安堵したように笑って抱き締めてくれた時、
一瞬でもこの目を失ってもいいと思ったことをを後悔した。
自分の負った傷の分だけ、
この右目は心を痛めるのだということを思い出したから。
「政宗様、今はお休みください、この小十郎がお傍に居りますから」
優しい声が聞こえる。
右目の温もりを感じながらゆっくりと意識を手放した。
※アニバサ最終回の後的な。負傷の痛みを抱えて戦う蒼は大層お色気だった。
馬に揺られながら思っていたこと。
血の滲んだ傷口に触れると、少しの振動で鈍痛がした。
「…っ…」
小さく呻くとしっかりと身体を支える腕に力がこもった。
「痛みますか?」
案じる声に苦笑すれば、
「やはり少し休まれてからの方が、」
と右目は眉間に皺を寄せる。
「奥州以外に休める場所なんてねぇ」
と答えれば、心配性の右目は押し黙った。
繰り返す鈍痛に目を閉じる。
「…政宗様、もうしばしご辛抱を」
右目に寄り掛りながらずっと考えていることを反芻する。
「―――痛みってのは、なかなか慣れねぇもんだな」
幼い頃から慣れていたことなのに。
眼帯に隠れた右目のこともそうだが、
幼少期にいい思い出はほとんどない。
それを不幸だと思ったこともあったが、今はもうどうでもいい。
本当に思い出したくないことには、
きつくきつく蓋をすることにしたから。
だがあの男の執念にまるで惹かれるかのように、
蓋を閉めたものが溢れた。
闇が、
(怖い)
過去の記憶が、
(思い出したくない)
傷の痛みと相まって蘇る。
内側から苛む。
「…はっ、」
呑まれそうになって目を開けると心配そうに覗き込む右目。
虚ろな瞳がしっかりと像を結ぶのを確認した右目は、
汗で額に張りつく髪を除け、頬に優しく触れて。
「熱が上がっているな、」
思案する様子に、気にせず奥州に向かうよう告げまた目を閉じる。
今度はしっかりと右目の服を掴んで、
悪い夢を見ぬよう祈りながら。
「―――魔王に、残った左目も抉ってやろうかと言われた」
ぽつりと呟くように吐き出す。
「悪いものを見ずに済むなら…、それでもいいと、思った」
『やってみやがれ、俺の眼は牙を剥いて噛み付くぜ』
あの時、苦しみと共にあったのは恐怖ではなく、
見たくないものを見なくて済むかもしれない安堵だった。
「だが、今は…この目が無事で良かったと、思う」
意識が少しずつ輪郭を失っていく。
「政宗様、」
傷の痛みに耳鳴りがする。
「もしこの目がなかったら…お前が見えなくなっちまう」
紅に支えられなければまともに立てない身体を、
駆け寄ってきた右目が心底安堵したように笑って抱き締めてくれた時、
一瞬でもこの目を失ってもいいと思ったことをを後悔した。
自分の負った傷の分だけ、
この右目は心を痛めるのだということを思い出したから。
「政宗様、今はお休みください、この小十郎がお傍に居りますから」
優しい声が聞こえる。
右目の温もりを感じながらゆっくりと意識を手放した。
※アニバサ最終回の後的な。負傷の痛みを抱えて戦う蒼は大層お色気だった。
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無題
激しく同意(爆)
本当にやばかった;そして今日の小話もヤバいですよ水城さん!
ほんと応援してます!
本当にやばかった;そして今日の小話もヤバいですよ水城さん!
ほんと応援してます!
- 永月
- 2009/06/23(Tue)15:39:37
- 編集
無題
蒼主従の時には抜群の反応を示しますね(笑)
お陰で蒼主従の小話が増えてきた…
お陰で蒼主従の小話が増えてきた…
- 水城
- 2009/06/23(Tue)19:22:18
- 編集
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プロフィール
HN:
瑞季ゆたか
年齢:
41
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。