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それは少し淋しいような、

複雑な心境で。

それがバレるのは癪だったけど、困ったように笑うしかなかった。
崩壊した城と、互いに支えあいながら戻ってきた蒼と紅。
隣に居たはずの右目はその姿を認めるなり駆け寄っていった。

(…なんか、出遅れたって感じだ)

同じように振舞うことも出来ず、腰に手を当てたまま紅が歩いてくるのを待っていた。

「佐助っ!」

蒼を右目に託し駆け寄ってくる紅。
「お疲れさん、旦那」
声をかけると満足そうな笑みが返ってきた。
「佐助、お前もご苦労であったな」
「別に?お仕事ですから」
労いの言葉におどけて応え、そして気がつく。
「あーあ、旦那ハチマキなくしちゃって…」
いつもしているはずのそれがない。
あれがないと気合が入らないなんて以前になくしたときは大騒ぎしていたのに。
「いや…うむ、あれも本望だろう」
清々しい表情に、何故か急に大人びてしまったような気がして、
紅の前髪をくしゃりと掻いた。
「ん?どうした佐助」
そして懐から赤いハチマキを取り出す。
「旦那、動かないで」
その言葉に素直に従う紅の額に手のハチマキをあて、後ろでしっかりと結う。
今だったら、腕の中に収まってしまうくらいなのに。
「スペア、もうないから大事にしてくれないと」
複雑な心境を誤魔化すように笑って言えば、
「そうだな、大事にする」
と素直に笑い返す。

(…愛しい…)

まだ、離したくない。
「…さて、大将に報告しないと」
虎の名を出せば、大人びた表情から途端に幼い表情になって。

(…大好きだもんねぇ、大将)

内心、大将に妬いたらおしまいだと肝に銘じながら、紅を甲斐に戻るよう促して。
その背に。

「真田幸村っ…」

竜の、声。

「…次に会ったときは…覚悟しておけよ」

竜は右目に支えられながらも怪我を感じさせない表情で言う。

「…望むところでござるっ」

それに答えるように紅も声を張り上げて。
ついと竜の右目に視線を向けたら、
右目は少し呆れたように笑うから軽く肩を竦めて見せた。

「さぁ、帰るぞ、佐助」

隣に紅がいる。
空は夜明けを告げるように白んで。

「はいよ」

二人並んで、家路につくのだ。











※アニバサ最終回すごく良かった的な。成長した紅に忍はちょっと淋しく感じていたりいなかったり。

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プロフィール

HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇

好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。

備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。

気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。

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