monocube
monoには秘めたイロがある。
見えないだけでそこに在る。
数え切れないそれは、やがて絡まり色彩(イロ)になる。
さぁ、箱をあけてごらん。
箱庭(ナカ)は昏(クラ)く底なしの闇色(モノクロ)。
深い闇に融けたらいいのに。
日々の戯言寄せ集め。
当サイトは作者の気まぐれにより、自由気ままに書きなぐった不親切極まりない戯言の箱庭です。
堕ちるように緩やかに、
眠るように口付けを。
「ねぇ、旦那」
何で生き抜くってことはこんなにも難しいことなんだろうね。
「俺は敵を殺せるよ、」
だってそれが俺の仕事だから。
「旦那を守るよ、」
それで命を落とすことになっても後悔しない。
「けどさ、…好きでやったことなんてひとつもないんだ」
好きなことだけじゃない。
個人の何らかの感情でやったことなんて、たった一度しかない。
この、紅の傍にいること。
それが、自分の意思で決めた、人生におけるたった一つの、感情でやったことだった。
「…て、…め…」
「恨まないでくれよ、独眼竜」
うつ伏せで焔に引けをとらないほど鮮やかな鮮血を、
畳の上にぶちまけながら竜は睨む。
(恨まないでくれ、だって何ありえないこと言ってんだろ)
ズっ、と音を立てて足に伸ばされる手を一歩下がってかわす。
竜の眼は、一度だって自分から逸らされることはない。
「俺様だって、好きでやってるんじゃないんだよ」
忍に生まれ、忍として当然のように成長し、忍以外の何物でもない大人になって。
それでも天下なんて馬鹿馬鹿しいと思うし、血なまぐさい戦場は好きじゃない。
そもそも、人を殺すことだって。
「…でも、仕事は、仕事、だからさ」
諦めてよ。
そう肩を竦めたら、足元の独眼竜は口許を歪ませて嘲笑った。
「…HA、」
死に急速に近づいていく中で、それは勝ち誇った様な表情で。
見下ろす自分の方が追い詰められているような錯覚。
「…死ぬこと、は、怖か、ね…だろ」
そうだよ。
「怖くない」
人が死ぬのは自然現象だし、それがこの戦国の世ならば尚のこと。
見下ろした竜の姿は、明日のわが身かもしれない。
「…死なれ、…のが、いや、なんだ…ろ」
その質問には答えなかった。
竜の眼帯の紐が緩んで落ちた。
血塗れた髪の奥にある、見えるはずのない瞳。
それに沈黙の意味を見透かされているような気がした。
気がした、だけ。
「…てめ…は、きょ…も…」
独眼竜は、血を吐いたその口で。
最後に一言、罵った。
ちりちりと響く音が大きくなる。
はっと我に返ると、既に予想より早く建物に火が回っていた。
このままでは自分が脱出することも危うくなる。
踵を返して数歩歩き、息絶えた竜を見る。
それは焔に包まれるというより、焔を纏っていると言った方が正しい光景。
焔は紅によく似た、鮮烈な緋色。
「独眼竜、…アンタには、その緋色は似合わないな」
そう誰に言うでもなく呟いて屋敷を出る。
大気に溶け込み始めた煙が、まるでで盂蘭盆の送り火のように立ち上っていた。
音も立てず重さも感じさせず移動する。
その背を追うように夜明けが近づいてくる。
紅が目を覚ます前に戻って、いつもみたいに笑って「おはよう」とでも声を掛けよう。
屋敷の屋根で一息ついて、縁に降りる。
そこに見つけたのは。
「…旦、那…?」
縁の柱に寄りかかってぼんやりとする紅の姿。
「…佐助、戻ったか」
どこか安堵したような表情。
「…ぇ、あれ?何で、ここ」
頭が混乱する。
手で髪を掻き乱すと、それを見て紅が笑いながら立ち上がる。
そして背に腕を回して抱きしめられた。
「…落ち着け、佐助」
トクン、と安心する心音。
「…旦那に落ち着けって言われるの…なんか微妙だ」
「なに?」
途端に眉間に寄せる皺を指で撫でて。
返すように紅の背中に回した手が、躊躇う。
独眼竜の言葉が反芻して。
「佐助、疲れた顔をしている」
頬に触れる指先。
この紅は、独眼竜のことを知ったら何を思うだろうか。
(怒るかな…俺を、罵るのかな…)
人を殺すことを好きだとは思わない。
でもそれは仕事だから仕方ないと事務的に手が身体が動く。
「佐助?」
ゆっくりと紅の背中を抱き返せば、暖かい体温がじんわりと沁み込んでくる。
この背はこんなにも暖かくて優しい。
『てめぇは今日も、人を殺した穢れた手で抱きしめるんだろ』
誰よりも、何よりも失いたくない愛する人を。
抱き返す手に力を込める。
引き寄せて紅の肩に顔をうずめて。
(そうだよ、…俺は、死なれるのか怖いんだ)
この手がいくら穢れも痛くない。
でも、それの所為で紅に何かあったら。
それを戦国の世だからと、諦めることができるだろうか。
(…きっと、俺は…)
だからこそこの手を穢してまで、
その可能性を秘めたすべてのものを「仕事」だと、殺していくんだ。
※忍は生死を割り切る。でも、数字みたいにうまく割り切れない。やりきれない。でもすべては紅の為。
「ねぇ、旦那」
何で生き抜くってことはこんなにも難しいことなんだろうね。
「俺は敵を殺せるよ、」
だってそれが俺の仕事だから。
「旦那を守るよ、」
それで命を落とすことになっても後悔しない。
「けどさ、…好きでやったことなんてひとつもないんだ」
好きなことだけじゃない。
個人の何らかの感情でやったことなんて、たった一度しかない。
この、紅の傍にいること。
それが、自分の意思で決めた、人生におけるたった一つの、感情でやったことだった。
「…て、…め…」
「恨まないでくれよ、独眼竜」
うつ伏せで焔に引けをとらないほど鮮やかな鮮血を、
畳の上にぶちまけながら竜は睨む。
(恨まないでくれ、だって何ありえないこと言ってんだろ)
ズっ、と音を立てて足に伸ばされる手を一歩下がってかわす。
竜の眼は、一度だって自分から逸らされることはない。
「俺様だって、好きでやってるんじゃないんだよ」
忍に生まれ、忍として当然のように成長し、忍以外の何物でもない大人になって。
それでも天下なんて馬鹿馬鹿しいと思うし、血なまぐさい戦場は好きじゃない。
そもそも、人を殺すことだって。
「…でも、仕事は、仕事、だからさ」
諦めてよ。
そう肩を竦めたら、足元の独眼竜は口許を歪ませて嘲笑った。
「…HA、」
死に急速に近づいていく中で、それは勝ち誇った様な表情で。
見下ろす自分の方が追い詰められているような錯覚。
「…死ぬこと、は、怖か、ね…だろ」
そうだよ。
「怖くない」
人が死ぬのは自然現象だし、それがこの戦国の世ならば尚のこと。
見下ろした竜の姿は、明日のわが身かもしれない。
「…死なれ、…のが、いや、なんだ…ろ」
その質問には答えなかった。
竜の眼帯の紐が緩んで落ちた。
血塗れた髪の奥にある、見えるはずのない瞳。
それに沈黙の意味を見透かされているような気がした。
気がした、だけ。
「…てめ…は、きょ…も…」
独眼竜は、血を吐いたその口で。
最後に一言、罵った。
ちりちりと響く音が大きくなる。
はっと我に返ると、既に予想より早く建物に火が回っていた。
このままでは自分が脱出することも危うくなる。
踵を返して数歩歩き、息絶えた竜を見る。
それは焔に包まれるというより、焔を纏っていると言った方が正しい光景。
焔は紅によく似た、鮮烈な緋色。
「独眼竜、…アンタには、その緋色は似合わないな」
そう誰に言うでもなく呟いて屋敷を出る。
大気に溶け込み始めた煙が、まるでで盂蘭盆の送り火のように立ち上っていた。
音も立てず重さも感じさせず移動する。
その背を追うように夜明けが近づいてくる。
紅が目を覚ます前に戻って、いつもみたいに笑って「おはよう」とでも声を掛けよう。
屋敷の屋根で一息ついて、縁に降りる。
そこに見つけたのは。
「…旦、那…?」
縁の柱に寄りかかってぼんやりとする紅の姿。
「…佐助、戻ったか」
どこか安堵したような表情。
「…ぇ、あれ?何で、ここ」
頭が混乱する。
手で髪を掻き乱すと、それを見て紅が笑いながら立ち上がる。
そして背に腕を回して抱きしめられた。
「…落ち着け、佐助」
トクン、と安心する心音。
「…旦那に落ち着けって言われるの…なんか微妙だ」
「なに?」
途端に眉間に寄せる皺を指で撫でて。
返すように紅の背中に回した手が、躊躇う。
独眼竜の言葉が反芻して。
「佐助、疲れた顔をしている」
頬に触れる指先。
この紅は、独眼竜のことを知ったら何を思うだろうか。
(怒るかな…俺を、罵るのかな…)
人を殺すことを好きだとは思わない。
でもそれは仕事だから仕方ないと事務的に手が身体が動く。
「佐助?」
ゆっくりと紅の背中を抱き返せば、暖かい体温がじんわりと沁み込んでくる。
この背はこんなにも暖かくて優しい。
『てめぇは今日も、人を殺した穢れた手で抱きしめるんだろ』
誰よりも、何よりも失いたくない愛する人を。
抱き返す手に力を込める。
引き寄せて紅の肩に顔をうずめて。
(そうだよ、…俺は、死なれるのか怖いんだ)
この手がいくら穢れも痛くない。
でも、それの所為で紅に何かあったら。
それを戦国の世だからと、諦めることができるだろうか。
(…きっと、俺は…)
だからこそこの手を穢してまで、
その可能性を秘めたすべてのものを「仕事」だと、殺していくんだ。
※忍は生死を割り切る。でも、数字みたいにうまく割り切れない。やりきれない。でもすべては紅の為。
PR
この記事にコメントする
この記事へのトラックバック
- この記事にトラックバックする
カレンダー
カテゴリー
最新記事
(02/10)
(05/06)
(03/21)
(02/23)
(01/13)
プロフィール
HN:
瑞季ゆたか
年齢:
40
性別:
女性
誕生日:
1984/02/10
職業:
引きこもり人嫌いの営業AS見習い
趣味:
読書・音楽鑑賞・字書き
自己紹介:
◇2006.11.16開通◇
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。
好きな音楽:Cocco、GRAPEVINE、スガシカオ、LUNKHEAD、アジカン、ORCA、シュノーケル、ELLEGARDEN、LINKIN PARK、いきものがかり、チャットモンチー、CORE OF SOUL、moumoon…などなど挙げたらキリがない。じん(自然の敵P)さんにドハマり中。もう中毒です。
好きな本:長野まゆみ、西尾維新、乙一、浅井ラボ、谷瑞恵、結城光流(敬称略)、NO.6、包帯クラブ、薬屋シリーズなどなど。コミック込みだと大変なことになります(笑)高尾滋さんには癒され、浅野いにおさんには創作意欲を上げてもらいつつ…あでも、緑川ゆきさんは特別!僕の青春です(笑)夏目友人帳、好評連載中!某戦国ゲームにハマり我が主と共に城攻めを細々とのんびり実行中(笑)サークル活動も嗜む程度。他ジャンルに寄り道も多く叱られながらも細々と更新しています…たぶん。
備考。寒さに激弱、和小物・蝶グッズとリサとガスパールモノ・スヌーピーモノと紅茶と飴と文房具…最近はリボンモノもこよなく愛する。一番困るのは大好物と嫌いな食べ物を聞かれること。
気まぐれ無理なくリハビリのように文章やレポを書き綴る日々…褒められて伸びるタイプです。